「22歳の時、将棋と出会って」 加藤圭女流二段インタビュー〈2〉

スポーツ報知
加藤圭女流二段(カメラ・矢口 亨)

 18歳の青年が再び輝きを放った夏。全く異なる種類の光が将棋界を照らすかもしれない。加藤圭女流二段(29)は22歳当時の2014年に本格的に将棋を始め、18年に女流棋士になった超晩学の新鋭だが、強豪勢を連破する快進撃を続けている。新設された第1期白玲戦・女流順位戦で64人中4位内に入ることを確定させ、タイトル戦出場にも王手を掛けている。ベールに包まれた素顔に迫った。(聞き手・北野 新太、カメラ・矢口 亨)

 ―将棋の道を歩き始めた運命の一日のことを教えて下さい。日付は2014年5月21日だと思います。羽生善治三冠が森内俊之名人(いずれも当時)から名人位を奪還する第72期名人戦七番勝負第4局2日目のことですよね?

 「たまたまニコニコ生放送を見ていたら、放送中の番組のひとつとして名人戦第4局がトップページに紹介されていたんです。『へ~、将棋の名人戦かあ』なんて思って、全然分かりもしないのに、なんとなく見ていたんです。将棋は中学生の頃にゲームでちょっとやっていたくらいですからね。…でも、羽生先生が終盤に▲4一金という手を指して、解説の方が盛り上がっていて、なんだか面白いなあと」

 ―あの将棋の終盤は激戦でした。▲4一金は後手陣最奥部に金を打ち込む王手で、後手玉を上部に逃してしまいそうな手でした。私は対局場の成田山新勝寺の控室にいて棋士たちの検討を聞いていましたが、一見では筋が悪いと見られていた一手が局面が進んでみると妙手であることが分かった。いわゆる「羽生マジック」でした。とても突然見た一般の方が何かを感じ取れるようなものでは…。

 「本当に何も分からなかったのですが、何か面白いなあと思ったんです。棋士も羽生先生と森内先生のお名前しか知らないくらいでしたけど…。番組解説の三浦弘行先生(九段)と聞き手の中村桃子さん(女流初段)の掛け合いが面白かったこともあって、興味が湧いたんです」

 ―それまで将棋を指したことはあったのですか?

 「ルールは物心ついた頃に知っていましたし、小学校の時に将棋入門のような漫画を読んだりもしました。なぜか『カニ囲い』と『ダンスの歩』だけ覚えたという(笑)。で、中学生の時にプレイステーションの将棋ゲームをやって、少し勝てるようになったらすぐやめて。そのくらいです」

 ―なぜ22歳になって本格的に取り組もうと思ったのでしょう。

 「うーん…。自分は普通に生きてきて、人に語れるような人生ではなくて、大学院に行って心理学を学んだのも、ただ猶予が欲しかったからでした。やらなきゃいけないことではあったけど、やりたいことではなかった。最初は将棋も逃げ続けた人生のさらなる逃避でした。でも『将棋倶楽部24』(対局サイト)で指し続けているうちに夢中になったんです。あの時、大学院の1年でしたけど、気が付くと行き帰りの電車でずっと詰将棋を解くようになって。講義の合間に隠れて将棋を指して、プリントに棋譜を書いて勉強したりしていました。ずっと、何かをやりたいと思えずに生きてきた自分でしたけど、将棋をやっているうちにだんだんと、初めてやりたいことと出会えたんだと気がついたんです」

 ―そして、人生を変えて女流棋士になろうと。

 「いえ、プロになろうだなんて思わなかった…どころか女流棋士という制度があることも最初は知らないくらいだったんです」

 ―そこから、なぜ、どのように変わっていったのでしょうか。

 「ずっとネット将棋しか指していなかったのですが、大会に出て人と指したら面白くて、(後の師匠となる)加瀬(純一七段)先生の教室に通うようになりました。まだ5級の時に、教えていただいた大庭美夏先生(女流初段)に褒めていただいて『頑張れば女流棋士になれるんじゃない?』って勧められて。五段だったならともかく、5級ですからね…。でも、ある時、加瀬先生の奥様に『ウチの人、加藤さんは女流棋士になれるよって言ってましたよ』と耳打ちされて…。本気で女流棋士を目指してみようと思ったんです。もう自分は24歳になっていて、研修会(女流棋士育成機関)に入る年齢制限まで1年しかなかったですし…」

◆加藤 圭(かとう・けい)1991年8月18日、茨城県日立市生まれ。29歳。加瀬純一七段門下。14年、22歳で本格的に将棋を始める。18年、女流2級(女流棋士正資格)に。中飛車を中心とした振り飛車党。通算82戦46勝36敗、勝率・561。趣味はゲームで「ファイナルファンタジー9」が人生最高ソフト。「ポケットモンスターブラック・ホワイト」にも「総プレー時間を見ると恐怖を覚えるほど」ハマッた。

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