鶴瓶のドキュメンタリー映画「バケモン」の収益を全額映画館へ 仕掛け人に狙いを聞いた

スポーツ報知
ドキュメンタリー映画「バケモン」の一場面。楽屋でリラックスした様子の笑福亭鶴瓶

 落語家・笑福亭鶴瓶(69)のドキュメンタリー映画「バケモン」が2日に公開される。コロナ禍で苦境に立たされた全国の小規模映画館を救うため、17年間にわたり記録した映像を1時間59分59秒に編集して映画化。入場料を全て上映館に提供するという極めて異例の試みだ。2004年からカメラを回し続ける山根真吾監督(62)と松竹芸能の新入社員時代から33年間にわたり鶴瓶をマネジメントする千佐隆智氏(55)に狙いや経緯を聞いた。(有野 博幸)

 千佐氏の一言で全ては始まった。「(コロナ禍で)役に立ててないエンターテインメントで、鶴瓶という芸人で、何かできへんか?」。これをきっかけに17年間にわたり、山根監督が撮り続けた密着映像がドキュメンタリー映画になった。

 千佐氏は鶴瓶の初主演映画「ディア・ドクター」(西川美和監督、09年)を上映した映画館にいつか恩返しをしたいと思っていた。「あの映画は鶴瓶にとって転機になった作品。映像配信もない時代だから、個人経営の映画館、全国のミニシアターが本当に協力してくれた」。その劇場が休業要請などで経営に苦しむ様子を聞き、入場料を全て上映館に提供することを思い立った。

 山根監督は04年、鶴瓶の「らくだ」を見て衝撃を受けた。「初めて落語で腹を抱えて笑いました。魂を打ち抜かれました」。それ以来、いつどこで映像を公開するのか決めないまま自主制作で鶴瓶に密着した。千佐氏から映画化を打診され「2021年に公開するなら、鶴瓶さんがコロナ禍で何を考え、どんな芸をしたのか、そういう内容が求められる」と意識。5か月間、熟考して完成させた。

 鶴瓶はコロナにどう立ち向かったのか。「2020年の鶴瓶さんは、それまでと別人でした。舞台に立ったら鬼気迫る勢いで、凍り付いた客席をほぐしていった」と山根監督。千佐氏も「元来、負けん気が強い人だから。『コロナに負けてたまるか』という思いは強いですね」と心意気を明かした。

 タイトルは当初、「鶴瓶とコロナと日本人」などの案もあったが、「某テレビ局のドキュメンタリー番組みたい」という指摘を受け、最終的に山根監督が「バケモン」に決めた。「鶴瓶さんもそうだし、らくだもそう、芸人そのものもそう、コロナに立ち向かう人たちも。そういう人たちを『バケモン』と表現した」

 17年間、鶴瓶を間近で見てきた山根監督は語る。「ただ単に裏表がない、というのは違う。誰の前でも、いつでも、どこでも、同じ振る舞いだけど、それが複雑な人」。印象的なエピソードがある。「若い芸人さんが楽屋を訪ねて来て、悩みを打ち明けた時、鶴瓶さんが言いました。『そんなん簡単や。その人が喜ぶことをしてあげればええやん』と。常に誰かの喜ぶことをする。それが鶴瓶さんの信条なんじゃないかな」

 NHKの人気番組「鶴瓶の家族に乾杯」(月曜・後7時30分)などでおなじみだが、鶴瓶は人並外れた社交性の持ち主だ。山根監督が「ビートたけしさん、明石家さんまさん。松本人志さんみたいに『孤高の表現者』という印象はない」。33年間、鶴瓶のマネジメントを担ってきた千佐氏は「鶴瓶は多幸感にあふれている。カリスマ性はないよね。決して卑下しているわけじゃない。スターというより、近所のおっちゃん。それでテレビに出続けているのは奇跡的」と評する。

 「大阪のラジオの小さいコミュニティーからファンを獲得して、少しずつ好いてくれる人を増やしてきた。人に丁寧に接する。芸能人以前に人として当たり前のことを当たり前にしてきた。それを積み重ねて、繰り返してきた人。『好いてくれた人の期待を裏切りたくない』というのが根底にあるのは間違いないね」と千佐氏。鶴瓶の一貫した優しさが今度は映画館を救う。

 ◆バケモン 2004年から20年まで上方落語の名作「らくだ」を披露する鶴瓶を追った17年間の記録。当初は映画化を全く意識せず撮り始め、山根監督による取材ノートは34冊、記録映像は1600時間を超えた。ナレーションは香川照之(55)が担当。映画館に無償提供する目的で製作され、入場料はすべて映画館の収益となる。1時間59分59秒。

 ◆山根 真吾(やまね・しんご)1959年4月5日、岡山県生まれ。62歳。大学卒業後の81年に日本テレビの関連会社に就職。「24時間テレビ 愛は地球を救う」などを担当後、構成・演出家として独立。手掛けた番組は「ぶらり途中下車の旅」など。

 ◆千佐 隆智(ちさ・たかとも)1966年1月23日、大阪府生まれ。55歳。大学卒業後の88年4月に松竹芸能に入社。同年9月に鶴瓶の担当マネジャーとなり、33年にわたりマネジメントを手掛ける。99年6月に鶴瓶をマネジメントするデンナーシステムズを設立し、代表取締役に就任。

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