◆JERAセ・リーグ ヤクルト3―10巨人(26日・神宮)
北村の3ランでヤクルトを突き放した3回、先頭・丸のセーフティーバント、岡本和の四球で一、二塁とすると巨人ベンチは坂本にバント、バスターとサインを変えながら最終的にヒッティングで勝ち越し点を奪った。クリーンアップが小技を駆使しながらもぎ取った決勝点の持つ意味を巨人担当・西村茂展キャップが「見た」―。
してやったりの笑みを浮かべた。丸が“秘策”を繰り出した。同点の3回無死、三塁線にセーフティーバント。「常にどうやったら勝てるか、塁に出られるかを考えながら打席に入っています」。投手の小川が懸命に処理したが、送球より一瞬早く一塁を駆け抜けた。
この打席でヤクルトは、野手を右方向に極端に寄せ、一、二塁間に3人を、三遊間にはど真ん中に三塁手・村上1人を配置する“丸シフト”を敷いてきた。だが、それを逆手に取って、誰もいない三塁側へバントで転がしチャンスメイク。おそらく1打席目でも同様のシフトを敷いてきたことから、着想を得たのだろう。
「もう大丈夫」を自ら証明するワンプレーだったと見る。2回に2点のビハインドを追いつき、先頭で迎えた打席。試合の流れとしても、出塁が最も重要になる場面で、冒頭のコメント通りに確率が最も高い方法を選択した。1ボールからの1度目はファウルとなったが、2度目にきっちりと決める技術もさることながら、周囲を見る余裕が持てていた。不振時だったら「打ちたい、きっかけをつかみたい」という気持ちが先走りすぎて、打席でチャレンジする余裕が持てていたとは思えない。
そしてこのチャンスを仕留めたのが坂本だった。岡本和の四球を挟み、無死一、二塁から中前へ決勝適時打を放った。この打席、ベンチは坂本に次々とサインを送った。初球は犠打を命じ、見逃しストライク。相手の反応を見た上で2球目はバスターを指示し、空振り。追い込まれてからヒッティングに切り替え、1ボールを挟んだ4球目を中前にはじき返した。
原監督は「勇人はなんでもできる人だから。そういう点では監督としてはありがたい選手だよ」と絶大な信頼を寄せる坂本だからこそ、次々にサインを変えた。指揮官はこの好機を逃しては相手に流れが行くと見たか、坂本であっても好機を広げる役割を課し、策は不発に終わってもベンチの意図を理解して中堅やや右を狙い打った主将の技術。意味のある1点に思えた。
それぞれが一撃で仕留める力を持つクリーンアップが、小技やつなぎで点を奪う。今の勢いも必然と言える。(西村 茂展)