1か月前に祖父がコロナで急逝…朝倉未来に一本勝ちしたクレベル・コイケを支えた“ファミリー”の絆

朝倉を破ったクレベル(後列左から2人目)とボンサイ柔術で練習する子どもたち
朝倉を破ったクレベル(後列左から2人目)とボンサイ柔術で練習する子どもたち

 5月下旬、クレベル・コイケ(31)が練習する磐田市のボンサイ柔術を訪れた。3週間後に朝倉未来(28、トライフォース赤坂)を破り、東京ドームの主役となる男は年下の私を「僕の仕事を伝えに来てくれて、ありがとうございます」と深いお辞儀で出迎えてくれた。

 決戦の約1か月前。祖国のブラジルで、クレベルの祖父が亡くなった。コロナウイルスによる急逝だった。クレベルが来日してからも連絡を取り合い、異国での挑戦を支えていた大切な存在。関係者も「クレベルさんはファミリーをすごく大切にする方。大事な試合の前に落ち込んでしまったのではないか」と心配したというが、翌日もクレベルは道場に姿を現した。

 「道場と、ここにいる仲間たちが僕にエナジーを与えてくれるんだ」

 日系ブラジル人のクレベルは「出稼ぎ労働者」として14歳で来日。浜松で職を転々とし「やんちゃしていた」男を変えたのが、ボンサイ道場での日々だった。アパートの一室で日系ブラジル人の仲間と寝食をともにしながら毎晩、柔術の練習に励んだ。「柔術の“礼”の精神が僕を変えてくれた。仲間と夢を追いかけた日々を忘れたことはない」。

 圧倒的な寝技でのKO率から“柔術界の鬼神”と称されるようになり、17年に世界王者を獲得。名声を得た今でも、試合直前まで道場生に柔術指導を行う。生徒の親は「クレベル先生は畳に上がる前に、必ず礼をするんです。その背中で、子どもたちに格闘家として有るべき姿を教えてくれる」。クレベルが大試合に出発する前には、子どもたちは全員集まってエールを送る。

 「クレベル先生」は昨晩、東京ドームの中央で無数のフラッシュを浴びた。「トロフィーはいつかホコリをかぶってしまうけど、『僕』という存在はここにいる限り、無くならない」と練習に励む子どもたちに優しいまなざしを向け、「アルコール依存の方や『自分は居場所がない』と思っている方に、道場へ足を運んでほしい。今度は僕が居場所を作ってあげたいんだ」。クレベルと“ファミリー”の物語は、これからも続いていく。(静岡支局・内田 拓希)

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