月組トップ娘役・美園さくら“散り際の美学”「最後まで努力する姿見せる」

 宝塚歌劇月組トップ娘役・美園さくらが、トップスター・珠城りょうとの同時退団作「桜嵐記(おうらんき)」「Dream Chaser」で、芸名らしい“散り際の美学”を体現している。入団9年目、娘1就任約2年半での卒業。月組一筋の歩みを「ずっとポジティブに前を向いてやってきた。後ろ向きは一度もなかった。最後まで頑張ることが私の仕事なのかな」と振り返りつつ、ラストステージで心・技・体をフル回転している。(筒井政也)

 タカラジェンヌとして迎える最後の夏。気温の上昇とともに、舞台は日増しに磨きがかかっている。

 退団発表会見を開いたのは昨年3月。本来なら冬の今年2月に卒業予定だったが、半年延期に。「延びたことで若干“退団する感”が薄れたかもしれませんが(苦笑)。その分、変に意識することもなく集中力を持っていくことができ、ありがたかった」と予定変更も味方に取り組んでいる。

 「桜嵐記」では、負け戦と知りながら北朝に立ち向かう南朝の楠木正行(まさつら=珠城)に心を寄せる弁内侍(べんのないし)を演じる。彼女は家族を滅ぼした武士に恨みを抱いている。「陰のある役を演じてこなかったので、すごくうれしい。台本を初めて読んだ時、人形っぽいというか、心が壊れているように思えたのですが、正行ら旅の道中での出会いで柔らかくなっていく」と説明した。

 作・演出の上田久美子氏が美園の魅力に挙げた「硬質な部分」が変化していく瞬間だ。「私はパキッとハッキリしたものが好き。お客様に、ちょっと硬い印象を与えるのが理想でもありましたが、新しい美園さくらとして、柔軟で自由な部分も表現できたら」。トップ大劇場デビュー作「夢現無双」(2019年)と同じ和物だが、トップの経験で得たものを上積み。「伝統的な和物の目線の使い方、間の取り方、話し方…それをクリアできたら、退団公演でもステップアップできるのかな」。観客から誘う涙の数が成長の証しだ。

 ショーも「すべてが新鮮な感じ」。珠城との有終デュエットダンスは「悲しみのワルツがテーマで、幸せいっぱいという感じではないのかもしれませんが、とても素敵で印象的」。階段下りではエトワールも務める。「『エリザベート』(18年)の時はすごく緊張していた思い出がありますので、今回は少し肩の力を抜いて、きちんと役割を果たしたい」。トップ娘役の卒業では異例の起用は、記録にも記憶にも残す劇団からのご褒美かもしれない。

 13年首席入団。「与えられていただいたことがすべて、と思ってやってきました。正直言って、やりたい役も特になくて。『運命だな』と受け入れつつ、成長できたら、と」。だが、バウホール初ヒロイン作「FALSTAFF」(16年)での学びが転機になった。

 「振り付けの先生に大変怒られたんです。不真面目で劇団レッスンにまったく出なかったので『努力するのも才能のうち』だと。とあるタイミングから一生懸命出るようになり、今に至るのですが、この間、先生が下級生の前で『美園を見ろ。苦労があったはずだ』と褒めてくださった。がむしゃらにやってきたことは間違いではなかったと自分を肯定できた。最後の最後まで、努力する姿を後輩に見せることができたらいいのかなと思ったんです」。季節外れの桜の花を懸命に咲かせ、舞い散るつもりだ。

 宝塚大劇場で今月21日まで。東京宝塚劇場で7月10日~8月15日の上演を予定。

 ◆美園 さくら(みその・さくら)6月17日生まれ。東京都江戸川区出身。2013年4月「ベルサイユのばら―フェルゼン編―」で初舞台。第99期生。月組配属。新人公演3度、バウホール公演2度、外部劇場公演1度のヒロイン役を経て、18年11月、愛希(まなき)れいかの後を継ぎ、珠城りょうの2代目相手役として月組トップ娘役に就任。身長164センチ。愛称「さくら」「さくちゃん」。

「大好き」な海乃美月にいい形でバトンタッチ

〇…月組の次期トップコンビは月城かなと&海乃美月(うみの・みつき)。第97期生の海乃は美園と同じく月組一筋で2年先輩だ。「下級生時代からお世話になり、プライベートでも一緒に出掛けたり。私が一方的に大好きで仲良くさせていただいています」と笑顔。新人公演では2度、海乃の本役を手本に。「私の個性を尊重していただき、的確なアドバイスをくださった。娘役のプライドを持たれて、なるべくしてなられるトップ娘役さん。海乃さんが就任される前に、月組の娘役を盛り上げていけたら」と感謝の気持ちを込めた。

「月組の一員として最後まで成長を」と誓う宝塚歌劇月組トップ娘役・美園さくら
「月組の一員として最後まで成長を」と誓う宝塚歌劇月組トップ娘役・美園さくら

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