「本当の優しさへの憧れ」 香川愛生女流四段インタビュー(下)

スポーツ報知

 インターネット中継、棋士によるSNSでの発信などマルチメディア化が進む将棋界において、香川愛生女流四段(28)は特別な存在感を放ち続けている。女流王将2期の強豪でありながら、タレント、社長としても活動し、ユーチューブチャンネルの登録数は棋界最多の約17万人を誇る。「番長」の異名を持つ女流棋士は今、何を思いながら戦っているのか。(聞き手・北野 新太、カメラ・矢口 亨)

 ―女流棋士として対局に臨むだけでなく、ユーチューブ、社長業、コスプレ、ゲーム、執筆…。いわゆる普通のタレントよりも幅広い活動をしているのでは、と思う時があります。

 「タレントという言葉は、本来は『才能』という意味ですよね。私には人から憧れられるような才能はありません。備わっていないのならどうするか、他の皆さんがやっていないことはどんなことがあるか、自分ならどうお見せできるだろうか、といったようなことをいつも考えています。もちろん、対局で負ければ厳しい声を頂くこともありますが、自分を追い込みながら頑張っていきたいです。新しいことをやろうとすると常に期待と不安がありますけど、不安が期待に負けないようにしたいです」

 ―尋常ではない量の活動を続けているように見えるので、体調を心配するファンの声もありますけど大丈夫なのでしょうか。以前、ショートスリーパーだと仰っていた記憶がありますけど…。

 「短期的な休息を取るくらいなら、何かできることはないかと考えてしまうようなところがあって、自分を追い詰めながら頑張っていると、ちょっと危ういな…と思う時もありますけど、うまくいったことが栄養価になっています。でも、睡眠時間などは気を付けています」

 ―どんな自分を発信したいと考えて活動しているのでしょうか。

 「人に対しても自分に対しても優しくある自分、ということかもしれません。私には優しさへの憧れがあるんです。厳しい勝負の世界である将棋界でも、トップ棋士の先生方は本当に優しいですよね。どうしたら私も本当の優しさを身に付けられるかを、ずっと考えています」

 ―女流棋界の中心を担わなくてはならない世代でもあります。

 「今は10代の頃のような若さもありませんし、30代以降に備えるべき円熟ももちろんありません。でも、30歳が近づいてきて、周りから見られる目も変わってきていると感じますし、期待されるものも今後は変わってくると思います。取り残されてしまわないように、でも、何事も決めすぎず、ずっと楽しみな気持ちでいられるよう自分をアップデートしていたいです」

 ―女流名人戦(報知新聞社主催)では今期まで8期連続でリーグに残留しながら、まだタイトル挑戦経験がありません。多くのファンが五番勝負への登場を期待しています。

 「女流棋士に復帰した直後から参加させていただいている女流名人リーグは、私にとって年間の指標です。それは、新しいことに挑戦し続ける中でもずっと変わりません。長丁場ですから、年間の自己分析が出来る場所、というような感覚があります。あの頃、関西から夜行バスを駆使して対局に向かったなあ、とか思い出したりします。(2014年度に)清水さん(清水市代女流七段)との挑戦者決定戦に負けてしまった時の棋譜を並べると、当時の感情をありありと思い出します。女流名人リーグはずっと戦ってきて、自分と見つめ合う時間をもらっていると思います」

 ―もう一度、里見さんからタイトルを奪う気持ちについて。

 「もちろん思いは常にあります。あの頃とは将棋界の環境も変わりましたし、里見さんも変わっておられるだろうな、と思いますし。もし、もう一度、そのような舞台に上がれたら、自分はどんな将棋を指せるのだろう、と今は爽やかに想っています」

 ◆香川 愛生(かがわ・まなお)1993年4月16日、東京都狛江市生まれ。28歳。中村修九段門下。小3で将棋を始める。小6で女流アマ名人に。2008年、女流棋士に。09~11年は奨励会在籍。13年に里見香奈から女流王将を奪取。翌年防衛して2連覇。通算282戦175勝107敗、勝率・621。立命館大文学部卒。ユーチューバー、タレント、コスプレイヤー、(株)AKALI社長としても活動。居飛車もさしこなす振り飛車党。好きな言葉は「迷った時は勇気の要る方を選ぶ」。専門誌「将棋世界」7月号に名人戦レポートが掲載中。

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