「本当の優しさへの憧れ」 香川愛生女流四段インタビュー(中)

スポーツ報知

 インターネット中継、棋士によるSNSでの発信などマルチメディア化が進む将棋界において、香川愛生女流四段(28)は特別な存在感を放ち続けている。女流王将2期の強豪でありながら、タレント、社長としても活動し、ユーチューブチャンネルの登録数は棋界最多の約17万人を誇る。「番長」の異名を持つ女流棋士は今、何を思いながら戦っているのか。(聞き手・北野 新太、カメラ・矢口 亨)

 ―女流棋士になった後、一度は棋士養成機関「奨励会」で修業する時期もありました。

 「女流棋士になってもあまりに棋力が低かったので、自分はふさわしくない存在なのでは、という自己否定がありました。実際、デビュー直後は成績も中身も良くなかったので、甘い自分が許せなくなり、修業し直そうと思ったんです。でも、奨励会に入っても努力も才能も足りず、精神的にも未熟だったので…。退会した時は何も未来を考えることができず、将棋から離れることも考えました」

 ―でも、女流棋界に復帰することを決め、飛躍していきました。

 「全てを諦めて、何も目指すものが無くなった自分が初めて誰かに受け入れられ、支えられていると実感できたからかもしれません。情けなさやもどかしさに支配されている自分は、寂しい自分なんだなと思えたことで、変われたのだと思います」

 ―何も目指すものが無くなったはずの自分が目指すものを持ち、13年からの女流王将の連覇となって結実します。

 「夢のような時間ではありましたけど、私は立派だなんて思えたことは一秒もなかったです。防衛できた瞬間だけ『頑張ったな』と一瞬だけ思いましたけど…。他のタイトルホルダーの方と比べると、自分は実力も人としても足りていないと思っていたので、苦しさもありました。思い悩むような将棋ばかり指していましたし。タイトルを一時的に預かったような感覚で、そういう自分を自分が受け入れてあげることができなかったんです」

 ―第一人者の里見香奈さんから奪取したタイトルなのだから、誇りに思っていいことだったと思いますけど…。

 「語弊と言うか、失礼な言い方になってしまうかもしれませんけど、当時の女流王将戦のタイトル戦は早指しでした(注・当時は各25分だった持ち時間が現在は各3時間に変更されている)ので、勢いの部分もありました。五番勝負ではなく三番勝負ですから、なおのこと勢いが大きいんです。だから、私はまだタイトル戦でおやつを頂いたことがないんだよな…なんてことを今でも思ったりしているんです。卑屈は自分の将来性を低めることだと今は分かっていますので、これからはもっと自信が持てることを積み重ねたいな、と思っていますけど…」

 ―再びのタイトル戦登場をファンは待望しています。

 「『ユーチューバーがタイトル挑戦』となれば将棋界の幅広さが伝わるかも、という気持ちはあります。藤井(聡太)二冠のような正統なスーパースターがいらっしゃって、一方ではユーチューバーも…となれば(笑)。ファンの皆さんが『香川の方が分は悪いけど、一発くらいは入るかもね』ぐらいに思ってもらえるようにはしたいです」

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