「本当の優しさへの憧れ」 香川愛生女流四段インタビュー(上)

スポーツ報知
昼間とは異なった表情を見せた香川愛生女流四段(カメラ・矢口 亨)

 インターネット中継、棋士によるSNSでの発信などマルチメディア化が進む将棋界において、香川愛生女流四段(28)は特別な存在感を放ち続けている。女流王将2期の強豪でありながら、タレント、社長としても活動し、ユーチューブチャンネルの登録数は棋界最多の約17万人を誇る。「番長」の異名を持つ女流棋士は今、何を思いながら戦っているのか。(聞き手・北野 新太、カメラ・矢口 亨)

 「バカでした…」「失礼しました…」「こんなアクロバティックなことばかり考えてるからダメなんですよね…」。5月19日、香川は女流名人リーグ2回戦で中井広恵女流六段(51)を相手に力強い指し回しを見せて勝勢を築いたが、終盤の寄せに失着があり、逆転負けを喫した。反省と悔恨の声を漏らす感想戦での表情は、ユーチューブチャンネルで見せる笑顔とは当然ながら対極にあった。

 ―悔しい一局に。

 「ひどかったです…。良い内容で指せていたんですけど…ふがいないです」

 ―強烈な「負けず嫌い」と以前から語っています。香川さんの全ての活動の原動力になっているようにも感じる。

 「思い通りにできなかった時、自分への怒りの感情が込み上げる性格は昔も今も変わらないです。『どうして負けなくちゃいけなかったのか』って。もちろん今はプロに成り立てでもないので、感情をそのまま表すほど若くはありませんけど、ふがいない思いをどこか隠し切れないような時もあるのかもしれません」

 ―小学校3年生で将棋を始めて、6年生の時には女流アマ名人戦で優勝してアマチュア日本一になるという途轍もない棋歴を持っている。才能はもちろんですけど、原点には強烈な「負けず嫌い」があったはず。

 「物心ついた時には負けず嫌いの自覚があって、負ける度にケンカしてました。団体競技、偶発性のあること、自分ではどうにもならないこと、そういうものが苦手でした。将棋と出会っていなければ私のエネルギーはどこへ向かっていたのだろうと考えると怖くなることがあります。リアル番長に…? 否定できません(笑)。でも、本当に将棋があったから今の自分があると思います。当たり前のことかもしれないですけど」

 ―なぜ、将棋はそのような存在たり得たのでしょうか。

 「将棋には、混沌とした感情や衝動の受け皿になってくれる深さがあったからだと思います。学童クラブで将棋を始めた最初の頃、公平なゲームなのに同学年の子に負けてしまうのはどうしてなんだろう、とずっと考えていました。どうして、どうして、どうしてって。どうしてそうなるのか、という好奇心…というか物事の謎のようなものを解き明かしたくなる性格なんです。だから、覚えてから女流アマ名人になるまでの3年間は本当に貪欲だったと思います」

 ―他に視線は向かなかった?

 「ミニホッケーも水泳も習いましたけど、スポーツは男の子に勝てないと。あと、囲碁も習っていたんですよ。もっとうまくいくはずなんだから、という思いを解消していくことが自分のやろうとしていたことでしたけど、うまくいかないことばかりでした。私は何でもやるようなタイプに見えるかもしれないですけど、実はいろんなことを辞めてきたんです。なぜか将棋だけは続けられました」

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