雑草レスラー・鷹木信悟、IWGP世界ヘビー初戴冠…コロナ直撃の新日を救う「ザ・ドラゴン」の魅力

スポーツ報知
7日の大阪城ホール大会でオカダ・カズチカを下しIWGP世界ヘビー級王座初戴冠を果たした鷹木信悟(新日本プロレス提供)

 緊急事態宣言の延長による大規模大会の延期にオカダ・カズチカ(33)ら主力選手9人の新型コロナウイルス感染による大量離脱。最大の危機に陥った新日本プロレスを救ったのは、38歳の「ハツラツおじさん」鷹木信悟だった。

 7日、フルキャパ1万6000人の大阪城ホールに20%弱の3045人の観客を入れて行われた「DOMINION 6・7 in OSAKA―JO HALL」大会。当初、6日の開催予定だったが、大阪府の土、日曜の大規模イベント回避要請を受け、月曜開催に。直前まで揺れた大会のメインイベントとして行われたのが、鷹木とオカダによる第3代IWGP世界ヘビー級王座決定戦だった。

 3月のニュージャパンカップ1回戦でも破っているオカダ相手に序盤から攻勢に出た鷹木。5・4福岡どんたく大会に続く連続の王座挑戦となった「ザ・ドラゴン」は序盤から闘志満々の攻めを展開。パンピングボンバーでオカダを場外にたたき落とすと、弱点の腰を徹底的に痛めつけた。

 しかし、声援自粛で声を出しての応援を禁じられた観客に足踏みでの後押しを要求したオカダも逆襲。コロナ回復明けとは思えない高さ抜群のドロップキックで鷹木を場外に蹴り落とすと、昨年のG1クライマックスで鷹木からギブアップを奪ったマネークリップで絞め上げた。

 しかし、ここで「来た、来た、来たー!」と叫んだ鷹木は龍魂ラリアットを叩き込むと、場外でのメイド・イン・ジャパンという荒技でオカダを場外カウント19秒の窮地に追い込む。さらにオカダの必殺技・レインメーカーをかわすと、レインメーカー式パンピングボンバーを一振り。さらに投げっ放しのドラゴンスープレックス、ラスト・オブ・ザ・ドラゴンと畳みかけ、3カウントを奪った。

 36分間の激闘にリング上で起き上がれない両雄。ベルトを巻いて右こぶしを突き上げた鷹木はマイクを持つと、「ここにIWGPのベルトがある。これは夢なんかじゃねえな。間違いなく現実だろう。改めまして、俺が第3代世界IWGP世界ヘビー級チャンピオンの鷹木信悟だ!」と絶叫した。

 1か月前の5・4福岡どんたく大会で敗れた前IWGP世界ヘビー王者・ウィル・オスプレイ(28)が自身との44分53秒の激闘で首を痛め、英国に緊急帰国。王座を返上したため巡ってきた2か月連続の王座挑戦のチャンスをものにした38歳は「ちょうど1か月前、オスプレイに負けて奈落の底に落ちたが、俺はぎりぎり生き残った。いろいろあったけど、今日の一戦で完全に這い上がったぞ。今、こうして手元にベルトがあるが、これがゴールじゃない。これがスタートだ。まだまだやらなきゃいけないことが山ほどあるんだ。まずはこのベルトを通行手形に新日本プロレスの、いや、プロレス界のてっぺん目指して龍の如く駆け上ってやろうじゃねえか」と絶叫。

 「世間はコロナ禍の真っただ中だ。こんなご時世だからこそ、俺みたいな元気ハツラツが活躍しなきゃいけねえだろ、おい! と言うことで俺の言いたいことは…。まだ一つ残っているんだ。今日、先代のIWGPの象徴と言っていいオカダを倒した。初防衛の相手は決まっている。偶然にも今日、そいつが試合していたな。せっかくだから呼び出そうか。おい、飯伏、出てこい!」と呼びかけた。

 すると、セミファイナルでジェフ・コブ(38)を下したばかりのIWGP世界ヘビー初代王者の飯伏幸太(39)が登場。鷹木が「飯伏、人生って面白いよな。2か月前はおまえがこのベルトを持っていて俺が散々挑発してもウンともスンとも言わなかったが、俺がベルトを持ったとたん、名前を出したら来てくれたな。このベルトを賭けて俺とやるのか。イエスかハイか、ここで答えてみろ!」とベルトを見せつけると、飯伏は「イエスでもハイでもどっちでもいいんだよ。やってやるよ!」と受諾。鷹木は最後に「これで誰も文句はねえな。俺たちにしかできないつぶし合いをやろうぜ」とマイクを投げ捨てた。

 2018年10月、ドラゴンゲートからフリーとなり、新日に参戦。ジュニアからヘビー級に転向して2年でついに最強団体最高峰の王座に登り詰めた“雑草レスラー”はバックステージでも「ひとまずホッとしているよ。オカダはやっぱりすげえよ。でも、逆にあいつの一言が俺に火をつけたな。『対等にものを言うな。住んでいる世界が違う』と。なにくそと思ったけど、あながち間違いじゃねえんだよ。あいつのやってきた実績に比べたら、俺の実績なんて足元にも及ばねえ。だからこそ今日、負けるわけにはいかなかった」と続けると、「今日、俺が負けていたら、オカダ、棚橋(弘至)、内藤(哲也)や飯伏、あいつらのいるトップ中のトップに永遠に昇ることができないと思ったんだ。首の皮一枚つながったんじゃねえか、おい」と話した。

 さらにベルトをさすると、「これを獲ったからって別にあいつらと対等だとは思ってねえよ。だが、片足ぐらいは突っ込んだと思っているぜ。全身、そこに入り込むか、また追い出されるかは俺次第だ」とニヤリ。

 次期挑戦者に指名した飯伏について「オカダに勝った暁には(次は)飯伏しかないと思っていた。俺が新日に来た時、誰が一番興味あるか言ったよ。オカダでも、内藤でも、棚橋でもない。俺は飯伏と言った。同世代の人間、同級生として、あいつは常にトップを走っていると思っていた。やっと対等に渡り合う時が来たな」ときっぱり。

 さらにオスプレイについても「全治未定の欠場か…。誰か、オスプレイに言っといてくれよ。おまえに負けた鷹木信悟が1か月後、IWGPの世界ヘビー持っているんだよ。ふざけんなって気持ちがあるんだったら早く戻ってこい。いつでも相手してやるぞ。本当の意味で俺がチャンピオンを名乗るのは、やっぱり最終的にはオスプレイを乗り越えてからだ」と訴えた。

 8日、オンラインで行われた一夜明け会見でも目の前に置いたベルトを大切そうに眺めると「夢じゃなくて現実なんだと、ホッとしているのが一番の気持ちだよ」と正直にポツリ。

 新日参戦後の日々を「俺の対戦したい相手が新日本にはたくさんいたから、ここを選んだ。2018年10月8日に初参戦して2年と8か月か…。早いとも思ってないし、俺は今年39になるんで時間はないんでね」と本音を漏らした後、「俺はこれからも何も変わらないよ。鷹木信悟らしく、元気ハツラツ暴れ狂うんで」と堂々、言い切った。

 昨年から頻発したセコンドのレスラーが乱入しての不透明決着、一部レフェリーの不可解な判定にファンの不満が溜まっていたところに襲ったコロナ禍。5月に予定されていた横浜スタジアム大会も東京ドーム大会も延期となり、あらゆる面で追い込まれていた日本最大、最強の団体を救ったのが、エリート軍団・新日に“遅れてきた男”鷹木の全力ファイトだったことだけは間違いない。

 筋骨隆々の体ながらスピード、テクニックも抜群。決して力任せではない万能ファイトを常に披露し続ける“ベストバウト製造マシーン”は自分の言葉を持ったマイクパフォーマンスも最大の魅力。実際、飯伏への「イエスかハイか、ここで答えて見ろ!」という呼びかけに私も3045人の観客同様、マスクの奥で爆笑してしまった。

 窮地の名門・新日を救い、コロナ禍で元気をなくしているファンに勇気を与え続けているのが、決してエリートではないインディー団体出身の雑草レスラーという皮肉。「ハツラツおじさん」鷹木の全力ファイトにはプロレスの、いや、人生の不思議さと夢が詰まっている。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆鷹木 信悟(たかぎ・しんご) 1982年11月21日、山梨・中央市生まれ。38歳。県立市川高では柔道部で関東大会出場。卒業後、プロレスラーを志し、アニマル浜口ジムに入門。04年、ドラゴンゲート(当時は闘龍門)入りし、同年10月、福岡・博多スターレーン大会での6人タッグマッチでデビュー。団体トップレスターに登り詰めるも18年に退団しフリーに。同年10月、新日本プロレスの東京・両国大会に登場。「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の新メンバーとして紹介され新日参戦。19年、ベスト・オブ・スーパージュニア決勝に進出もウィル・オスプレイに敗れ準優勝。同年10月、ヘビー級に転向し、NEVER無差別級王者などに輝く。21年6月7日の大阪城ホール大会でオカダ・カズチカを破り、第3代IWGP世界ヘビー級王座を獲得。178センチ、100キロ。血液型O。

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