◆報知新聞社後援 第70回全日本大学野球選手権記念大会第1日 ▽1回戦 上武大1―0西日本工大(7日・神宮)
大学日本一を争う大会が2年ぶりに開幕。九州の無名左腕が今秋ドラフト1位候補に急浮上した。西日本工大(九州地区大学北部)の150キロ左腕・隅田知一郎(ちひろ、4年)は毎回の14奪三振で8回4安打1失点完投。上武大(関甲新学生)の4番・ブライト健太外野手(4年)のソロ1発に沈んで0―1で敗れたが、視察した各球団のスカウト幹部から絶賛の声が相次いだ。
隅田は余力を感じさせたまま投げきったが、たった1球の失投が命取りになった。2回先頭のブライトに対し、2ストライクからの3球目。143キロ直球を左中間席に運ばれた。「一球一球が勝負球だと思って投げていた。あの1球だったんじゃないかと思います」。これが決勝点となり、大会NO1投手候補は初戦で姿を消した。
それでも、初めて立った神宮のマウンドでのパフォーマンスは圧巻だった。力みのないフォームから投げ込む直球は、最速148キロを計測した球速表示以上の速さを感じさせ、多彩な変化球は自在に操った。「ツーシーム、チェンジアップ、スライダー、カットボール。全球種を勝負球にしてイメージ通りに投げられました」と胸を張った。
意識の高さも一流だ。所属する九州地区大学連盟北部ブロックは、全国的に見たら決してレベルが高いとは言えないが「自分はプロで活躍することが目標。大学生を相手に打たれてはいけないと考え、リーグ戦ではスライダーとスプリットとカーブは使いませんでした」。限られた球種に磨きをかけて、全国の舞台に足を踏み入れた。
完成度の高い投球に、ネット裏に陣取った全12球団のスカウトから称賛の声が相次いだ。地元・ソフトバンクの永井スカウト部長が「直球にスピードとキレがあって、スプリットはプロでも三振が取れるボールになる」と言えば、楽天・後関スカウト部長は「左に限らず大学生ではトップクラスの投手。1位候補に入ってくる可能性は十分にある」と評価を上方修正した。
「まだまだ自分は成長できると思ってる。夏場にしっかり練習して、もっとストレートの球威を上げたい」と隅田。神宮で得た自信を胸に、秋のドラフトへ向け、さらなる成長曲線を描いていく。(片岡 泰彦)
◆上武大・ブライト健太、打ち直し決勝弾
ガーナ人の父を持つプロ注目のスラッガー、ブライトが隅田打ちでプロ入りを猛アピールした。2回先頭、左翼ポール際への大きなファウルからの打ち直しで左中間席に決勝ソロ。「入るとは思わなかったんですけど、開きの早さを修正した結果だと思います」と自慢のパンチ力を披露した。都立の葛飾野出身で無名ながら50メートル5秒8と身体能力は抜群。ヤクルト・度会スカウトは「思い切り振れるという彼の持ち味が出せていた」と評価した。