ソフトボール・上野由岐子のグラブに緩みなし…イチローら担当の職人「投手だがこだわり強い」

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上野由岐子

 2008年北京五輪以来、3大会ぶりに五輪種目に復帰したソフトボールで日本代表のエース・上野由岐子(38)=ビックカメラ高崎=の投球を支えるグラブに迫った。上野が09年からアドバイザリースタッフ(現在はブランドアンバサダー)契約を結ぶミズノ社のグラブマイスター・岸本耕作さん(63)に、上野のグラブへの強いこだわりを聞いた。(取材・構成=宮下 京香)

 グラブ職人として45年になる岸本さんは、上野の担当になった3年前の印象をこう語った。「グラブに対するこだわりが強い人」。大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチロー氏、元ヤクルトの宮本慎也氏ら名手のグラブを手がけてきた。「プロ野球でも、特に内野手はグラブにこだわる選手が多い。上野選手は投手だが、強いこだわりを持つ選手の一人」と明かした。

 新しいグラブを作る時、上野と約半年前から打ち合わせを行う。求めるものは、同社と契約する巨人・菅野智之、楽天・田中将大らと同じで「手入れ感」と「フィット感」。上野は特に「遊びがあるのが嫌」と、グラブをはめた時に緩みのないものを求め、内側の親指かけに工夫を凝らす。通常のひもで締めるタイプでなく、親指のサイズに合わせた筒状の革を後から縫い付け、指にフィットさせる。「ここまでの要望は野球を含めて初めて」と職人を驚かせたという。

 上野は実業団21年目のキャリアを重ねた今も、探究心を持ち続ける。投球フォームは年々変化し、そのたびに「グラブと手が密着する部分が変わる」とグラブの形状も変える。指を固定するリングの数を1~3つで増減させることはよくあり、「シーズン中の変更もある」と岸本さん。東京五輪で使用するグラブには「(投球時に)小指の第1関節を突起にかけることで力が入りやすい」と要望があり、手を入れた時、小指の先端が当たる部分に横1センチ、縦3ミリの薄い革を取り付けた。

 グラブへのこだわりは内部だけではない。ウェブには「遊び心」をちりばめる。毎年新しいものを使用するが、日本代表で使うグラブには必ず日本の象徴、桜の柄を入れており、所属チームで使うものには、その年の干支(えと)や好きな動物の柄にしている。「桜は花びらの色も『基本、白だけど1つだけピンクで』という要望もある」と明かす。

 岸本さんは「選手の要望の全てに応えられるようにしたい」という思いを常に持っている。生粋の職人と二人三脚で完成させたシルバーを基調とした五輪用グラブが、13年ぶりの金メダルへの挑戦を支える。

◆グラブのパーツの名称

▼指かけ 親指と小指を固定させる。通常は外側に通したひもで調節する。

 ▼リング 人さし指や中指、薬指を固定させる輪状のパーツ。一般的には付いておらず、主にプロ野球の内野手が追加で付けることが多い。

 ▼ウェブ 親指と人さし指の間の「網」。種類はさまざまだが、投手は球種を読み取られないように完全に覆われているものを使用することがほとんど。外野手はフライの捕球時に球が見やすいように編み込みタイプが多い。

 ▼ポケット 捕球時にボールが入る空間。

 ▼色 02年から国際大会では革製のイエローボールを採用。投手は原則ボールと同色以外のグラブを使用。

 ◆野球用とソフトボール用のグラブの違い ミズノ社によると、野球よりボールが大きいソフトボール用はポケットの範囲が広いという。また、ソフトボールは手が小さい女子選手も多いため、手を入れた際に緩みのないものも多い。

 ◆岸本 耕作(きしもと・こうさく)1957年8月12日、兵庫・波賀町(現・宍粟市)生まれ。63歳。中学、高校で野球部に所属。高校卒業後の76年にミズノに入社。すぐにグラブ職人になる。イチロー氏や宮本氏、中日・福留孝介、巨人・坂本勇人、阪神・糸原健斗らのグラブを手がけてきた。

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