【有森裕子の本音】アスリートとメディア尊重し合う関係に

有森裕子
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 プロテニスの大坂なおみ選手が、全仏オープン開幕前に発した「会見拒否宣言」は、テニス界だけでなく一般の人たちも巻き込んで話題となりました。議論が交わされる中、大坂選手は2回戦を棄権。その際、うつの症状を告白したことで、さらに世界中で大きな注目を集めました。

 この問題は彼女だけのものではなく、まだまだ世界のスポーツ現場ではアスリートのメンタルケアへの関心が低く、関わっている方が非常に少ないのが現状です。それゆえ、頼りたいと思っても言い出せずに、専門家にたどり着くのが世界トップレベルのアスリートでも難しいことに、驚いた人は多いのではないでしょうか。

 現在は新型コロナの影響で、将来への不安を持つ人たちが世の中に増えています。アスリートも例外ではなく、思うような競技生活ができないことで心を乱されている人は多いでしょう。体の健康だけでなく心の健康を維持することで、プレーで全力を出し結果につなげるだけに、どのようにケアをしていくかを自らも、そして支える周囲も考えていかないといけません。

 今回の件では、会見という発信の場を自ら手放すことで是非について考え、問題を提起することになりました。もちろん、プロとしての発信の仕方として、「その問題に関しては答えるのが苦痛だ」と伝えるなど、社会に向けて疑問の提示をする機会として、会見を利用するという考えで臨めば…という意見もあるでしょう。

 であっても、基本的には一人ひとり感情を持つ“人間”であるということを“アスリート”と“メディア”の双方が互いに大切にし、それぞれの役割、立場で現場を前向きに、共にはぐくむことは大切ではないかと思います。今回のことが、次世代のアスリートたちが未来あふれる現場で心身共に健全に発信するきっかけになることを期待しています。(女子マラソン五輪メダリスト・有森裕子)

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