【社会人野球】プロは「ほぼない」かつて甲子園を沸かせた男・峯本匠が目指す場所とは

JFE東日本・峯本匠
JFE東日本・峯本匠

 中学3年の夏、たまたま甲子園のテレビ中継で大阪桐蔭・森友哉(現西武)の2打席連続アーチを見たことで、野球に魅せられ、野球記者を志した。あれから8年。私は夢が現実となり、新人記者として野球の現場を駆け回っている。そこで、懐かしい選手に出会った。JFE東日本・峯本匠(25)だ。

 大阪桐蔭時代には、走攻守そろった高校トップクラスの二塁手としてその名をとどろかせた。「結果を残すのが遅かった」高校時代、「やる気がなかった」大学時代、そして社会人野球での復活に、昨年のドラフト指名漏れ―。波乱万丈の野球人生を歩んできた男が今、目指す場所とは。

 峯本は高校時代、二塁のレギュラーとして甲子園に3度出場。3年生だった14年夏には全国制覇を果たすなど、走攻守3拍子そろったプレースタイルで甲子園を大きく沸かせた。3年時には智弁学園・岡本和真(現巨人)らとともに高校日本代表に選出され、U18アジア選手権にも出場。高卒でのプロ入りもうわさされたが、そのつもりは一切なかったという。

 「試合には出ていたものの、結果を残せたのが本当に最後の夏だけだったので、単純に遅かった。自分の中では高校からは(プロに)行かないって決めてました」

 そして2015年4月に立大に入学。しかし、監督と考えが合わず、すれ違いが起こり「全然野球をやる気がなかった」。在籍した4年間で、東京六大学リーグでの通算安打はわずか11本。「もう野球をやめよう」。自ら野球人生に終止符を打とうと考えていた3年の冬、声をかけてきてくれたのがJFE東日本・落合成紀監督(38)だった。

 「『もう一度花咲かせよう』って言われたのが印象に残ってます。あんな状況の自分を取ろうと思ってくれたのがすごいなと思って。取ってくれるんやったら、もう1回頑張ろうかなって」

 そして峯本は2019年4月、JFE東日本に入社した。

 社会人野球での活躍はめざましいものがあった。初めて出場した都市対抗野球大会で優勝し、新人賞にあたる「若獅子賞」も受賞した。入社1年目で、二塁手部門で社会人ベストナインを獲得。誰もが峯本の復活を確信し、迎えた2020年のドラフトイヤー。再び周囲からは「プロに行けるんじゃないか」と声が上がったが、峯本だけがそうではないことを知っていた。

 「調査書が1球団からも来なかったんです。『ああ、必要とされてないんだな』って。ドラフトの前日にはいろんなやつから『あした楽しみやな』って連絡が来たんですけど、うまいことごまかしてました」

 前年の都市対抗を制したことで、チームは予選を免除されていた。そして、コロナ禍で多くの公式戦が中止となり、ドラフト前に公式戦を1試合も戦えなかったという不運もあった。だが、調査書が来なかった理由は、自分自身が一番よく分かっていた。

 「僕はそこまで特徴がない選手。インコースが弱いというのが数字に顕著に出ているし、足も遅い。逆にスカウトの人は、本当に見る目があるなと思います。僕は選ばれなくて当然。周りが騒いでただけで、そんなに甘くないって話ですよね」

 かつての戦友たちの存在も大きすぎた。峯本が「神様みたいな存在」と称した、大阪桐蔭の1年先輩の森友哉、3年夏にともに甲子園優勝を果たした同級生の香月一也(現巨人)、正随優弥(現広島)、明徳義塾(高知)のエースで、甲子園で名勝負を演じた岸潤一郎(現西武)―。「プロに行ってる人が周りに多すぎて、自分と比べてしまうんですよね」。上の世界で戦う人たちを間近で見てきたからこそ、自分がプロにいけるレベルでないことを痛感していた。

 「岸にはドラフトで指名されたときに『やったやん』ってLINEしたら『待ってるよ』って言われました。香月にもオープン戦で会って『それだけの打力があればいけるよ』って言われたんですけどね。結局選ばれずで…」

 期待し続ける周囲とは異なり、現実を受け入れ、自分を客観視し続けてきた。25歳となり、年齢的にも今年が「ラストチャンス」となる。意思は固まりつつあった。

 「(プロに行きたい気持ちは)ほぼないですね。去年までは目指してましたけど、ここからはもう気持ち切り替えて、社会人で10年やれたらなと思いますね」

 都市対抗野球大会では、10年連続出場を果たした選手を表彰する制度がある。各地区に強豪チームがひしめき合っているため、自チームが毎年出場できるとは限らない。出場できなかった場合は補強選手に選ばれるほどの実力と、選手としての息の長さが必要になってくるため、10年連続出場は非常に難しいものであるといえる。峯本は、次なる目標を「社会人野球の頂点」に定めていた。

 入社3年目の峯本にとって、10度目の都市対抗野球大会まではあと8度。「監督と社員、JFEのためにやりたいですね」。腐りかけていた自分を受け入れ、野球への道に連れ戻してくれたチームに恩返しを―。峯本の社会人野球人生は、まだ始まったばかりだ。

(記者コラム・北川 栞)

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