「あの屈辱は早慶戦でしか返せない」 慶大・生井の決意の投球を見た

救援で2回無失点と好投した慶大・生井惇己
救援で2回無失点と好投した慶大・生井惇己
2020年11月8日の早慶戦9回2死一塁、早大・蛭間(左)に中越えの勝ち越し2ラン本塁打を打たれ、膝から崩れ落ちる慶大・生井惇己
2020年11月8日の早慶戦9回2死一塁、早大・蛭間(左)に中越えの勝ち越し2ラン本塁打を打たれ、膝から崩れ落ちる慶大・生井惇己

◆東京六大学野球春季リーグ戦最終週第1日▽慶大3―2早大(29日・神宮)

 待ち望んでいたリベンジのマウンドで、慶大の生井惇己投手(3年=慶応)は力の限り左腕を振った。

 「あの屈辱は、早慶戦でしか返せないんです」

 昨秋の早慶戦。1勝すれば優勝という有利な立場にありながら連敗を喫した。最大の悲劇が起きたのは、2回戦の9回表だった。1点リードの2死一塁という場面で登板した生井は、早大・蛭間拓也外野手(当時2年=浦和学院)に投じた初球のスライダーをバックスクリーンに運ばれ、悔し涙を流した。

 「ひとつのアウトを取れずに、先輩たちの代を終わらせてしまった。今度の早慶戦は、責任と覚悟を持って臨まなければいけないんです」

 1点リードの7回表に出番が来ると、持ち味のストレートで押した。三者凡退。8回の先頭打者を148キロの直球で見逃し三振に切って取り、蛭間との因縁の対戦を迎えた。

 注目の初球は、145キロのストレートでストライク。続く2球はボールとなり、カウント2―1からの真ん中高めに抜けたスライダーを右前にはじき返された。その後も安打と四球で2死満塁のピンチに。それでも浮き足立つことなく、7番・熊田任洋遊撃手(2年=東邦)をスライダーで二ゴロに打ち取った。

 「まだ蛭間選手には実力が及ばないと痛感しました。いつかリベンジ出来るよう、しっかり頑張らないと…」

 昨秋、蛭間に逆転アーチを浴びた直後、生井は膝から崩れ落ち、グラウンドにはいつくばった。1週間ほど過ぎ、堀井哲也監督(59)から厳しい指摘を受けたという。

 「ピッチャーが膝をつく姿はない。打たれても平然としていなければ。裏の攻撃があるのだから、仲間を信じるべきだった」

 投手として、技術も心も未熟だったと悟った。あの経験を無駄にしたくないという一念で臨んだ今春のリーグ戦。しかし、結果が伴わず、早慶戦の前まで3試合の登板にとどまり、防御率は7・36だった。

 2回無失点。苦しみはしたが、中継ぎとしての責務を果たした。

 「満塁にしたのは実力不足。それでも、ゼロに抑えて意地を見せることができました」

 8回に3つ目のアウトを取ってベンチに戻る時、生井は左手でガッツポーズを作ると、苦しい時期に支えてくれた仲間との絆を確かめるように両手でハイタッチをかわした。慶大3―2早大。試合終了後のスコアボードには、昨秋の早慶2回戦とは逆の数字が刻まれていた。

(記者コラム・浜木 俊介)

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2020年11月8日の早慶戦9回2死一塁、早大・蛭間(左)に中越えの勝ち越し2ラン本塁打を打たれ、膝から崩れ落ちる慶大・生井惇己
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