記録更新は確実!?「ノーノ―」ラッシュ、その代償

スポーツ報知
ヤンキースのコリー・クルーバー(ロイター)

 開幕7週間で何と6度。このペースでいけば、シーズンで19度達成されることになる。

 ノーヒットノーラン(以下ノーノ―)のことだ。今季第1号は4月9日対レンジャーズ戦のジョー・マスグローブだ。パドレス球団史上初のノーヒッター。開幕直後に相応しい華々しい記録。ところが、その5日後にカルロス・ロドン(ホワイトソックス)が続くと、5月19日のコリー・クルーバー(ヤンキース)まで6度、その間マディソン・バンガーナー(ダイヤモンドバックス)が7イニングスのダブルヘッダー試合で参考記録のノーヒッターをやってのけている。

 シーズン記録はさかのぼれば1884年の8度とあるが、ペースだけでなく、状況的にも記録更新の可能性は濃厚だ。

 この異常ともいえる「ノーノ―」ラッシュ現象に、「いかがなものか」と声を上げた投手がいる。それが、自らも2014年にノーノ―を記録している、あのクレイトン・カーショー(ドジャース)だ。

「ノーヒッターを達成した投手には敬意を払うけれど、こうも頻繁に起こると野球にとってよくないことかも知れない」

 そして、4月がメジャー全体で平均打率が史上最低(2割3分6厘)であったことにふれ、「ファンがみたいのはさまざまなプレー。打者の多くが三振するさまではない」と、続けた。

 的確な指摘だと思う。記録に挑戦する姿、そこから伝わる緊張感は観戦の醍醐味だ。しかし、メジャー全体の打撃が低迷する中での記録ラッシュは残念ながら輝きに乏しい。

 データをチェックしてみると、5月になっても低迷は続き、チームあたりの1試合の安打数が史上ワースト2位の7・8本。全体の平均打率は2割3分4厘まで低下している。

 その要因になっているといわれているのが

投手の球速アップ。今やメジャー投手の平均スピードは93マイル(約150キロ)を超える。もちろん、史上最速の記録。しかも、豊富なデータが活用できる環境の整備も投手を有利にしているという見方もある。加えて、一段と精度が上がった守備シフトで、安打になるべき打球を凡ゴロに変えてしまうテクノロジーの高度化。打者の側からみれば、フライボール革命の浸透によって、ますます三振を恐れなくなった。そして、今季から導入された低反発球。

 このような複合的要因が「ノーノ―」ラッシュに結びついていると考えられる。と、すれば、記録更新は確実になる。

 しかし、試合展開はますますパターン化していく。三振、四球の数が増えることはあっても減ることはない。従って、ボール・イン・プレーの少ない、単調な試合になりがちになる。その結果、野球というスポーツが退屈なものになり、ファン離れが起こる。カーショーが指摘しているのは、この点なのだ。つまり、「ノーノー」の代償だ。

 それは達成した投手の肉体的負担についてもいえる。今季6人目の男となったクルーバーは次の試合で右肩を痛めて途中降板、完治まで最低2か月の診断が下された。クルーバーはインディアンス時代の2014年から18年まで平均218投球回を誇るタフネスで、その間サイ・ヤング賞に2回も輝いているトップクラスの投手だった。が、この2年間は右肩の故障で、昨年は1イニングしか投げていない。それだけに、シーズン前は不安視されていた。開幕からは順調にカムバックの道を歩んでいたが、「ノーノ―」達成の日は今季最多の101球を投げている。「投げ過ぎではないか」、と疑問を呈する地元メディアもあった。

 これで思い出すのが、やはりサイ・ヤング賞2回に輝いたヨハン・サンタナだ。ツインズからメッツに移籍したサンタナはピークを過ぎていた。しかし、2012年、ノーヒッターのチャンスを掴み、134球の熱投をみせてメッツ球団史上初の快記録を達成した。ところが、これが事実上最後のサンタナらしい登板になってしまった。現役引退宣言もなく姿を消したサンタナ。「あの無理がなければ、まだ投げられたのに」という惜しむ声も聞いた。

「名誉と代償」そんなことも考えさせられる「ノーノ―」ラッシュである。

 出村義和(スポーツジャーナリスト)

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