文田健一郎、親子の夢 東京の美しい栄光の架け橋 豪快そり投げ ブリッジが力の源

2020年12月の全日本レスリングで鈴木絢大(上)を攻める文田健一郎
2020年12月の全日本レスリングで鈴木絢大(上)を攻める文田健一郎
父・敏郎さん(左)と肩を組む文田
父・敏郎さん(左)と肩を組む文田

 レスリングのグレコローマンスタイル60キロ級代表の文田健一郎(25)=ミキハウス=の代名詞が「そり投げ」。背中から腰にかけての柔軟性を生かした大技は、自らが愛してやまない猫のようにしなやかなこともあり「猫レスラー」の異名を持つ。母校の山梨・韮崎工監督で父の敏郎さん(59)と二人三脚で作り上げた伝家の宝刀で、1984年ロサンゼルス大会52キロ級の宮原厚次以来37年ぶりとなるグレコ金メダルへ突き進む。

 体を大きくそった文田の上で、相手選手はなすすべもなく宙を1回転し、マットに叩きつけられる。豪快なそり投げは、レスリングを知らない者をも引きつける。父直伝の技を磨き、2度の世界王者に上り詰めた。「投げてなんぼ」が文田家のモットーだ。

 父・敏郎さんは韮崎工で監督を務め、12年ロンドン五輪王者の米満達弘を育てた名伯楽。本格的にレスリングを始めた中学時代に父の指導の下、ひたすら投げ続けた。敏郎さんがそり投げにこだわった理由は「見栄えがするのと、私も背骨が柔らかくて得意だったから」。文田は最初から、後ろにそり返ることを全く怖がらなかったという。

 脇に差し入れた腕と、その反対の腕でクラッチし相手の体をホールド。ブリッジをするように抱え上げ、そのまま後ろへ放り投げる。天性の柔軟性から「猫レスラー」と呼ばれる文田は、抱え上げたときの角度が深いため、逃れることは容易ではない。「きれいなブリッジをすれば相手は自然と落ちていく」と敏郎さん。美しい“ブリッジ力”が文田の武器の原点だ。

 腰から下を攻めることが禁じられているグレコは、力と力のぶつかり合い。単調な試合展開に持ち込まれることも少なくない。敏郎さんは「グレコは筋肉マン2人が押しくらまんじゅうをして試合が終わることがある。それじゃあ素人が見ていて、つまらん。息子には『リスクを恐れずに投げろ』って、それはずっと言ってきた」。

 その教えは文田の根本に今も変わらず生き続けている。「自分が理想としているのは、投げて、誰が見ても『文田が勝ったな』と思う試合。グレコの醍醐(だいご)味は大きな技。それを僕は追求したい」。グレコ37年ぶりの五輪頂点で、親子の夢を結実させる。(高木 恵)

 ◆文田 健一郎(ふみた・けんいちろう)1995年12月18日、山梨・韮崎市生まれ。25歳。韮崎西中で本格的にレスリングを始めた。父・敏郎さんが監督を務める韮崎工で史上初の高校8冠を達成し、グレコ無敗のまま卒業。2017年世界選手権でグレコ日本人最年少の21歳8か月で金メダル。19年世界選手権も制し五輪代表を決めた。無類の猫好きで知られ、愛称は「猫レスラー」。168センチ。

2020年12月の全日本レスリングで鈴木絢大(上)を攻める文田健一郎
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