57歳・境鶴丸さん「いい時も悪い時も会社は人生そのもの」…フジテレビ元アナウンサー第二の人生(10)

スポーツ報知
内部監査部勤務も6年目に入る境鶴丸さんはフジテレビを「いい時も悪い時も会社は人生そのもの」と言う(カメラ・中村 健吾)

 会社員にとって避けられない人事異動の瞬間は華やかにテレビ画面を彩るアナウンサーたちにもやってくる。高倍率を勝ち抜き、フジテレビに入社。カメラの前で活躍後、他部署に移り奮闘中の元「ニュースの顔」たちを追う今回の連載。5人目として登場するのは、「FNNスーパーニュース」など看板ニュース番組のキャスターとして活躍後、2016年、52歳の時に自ら希望して初めての異動の道を選んだ境鶴丸さん(57)。現在、適正業務推進室内部監査部という“お堅い”部署に勤務する境さんは「今、社の全体をすごく客観的に見ることができています」と話す。(構成・中村 健吾)

 (前編から続く)

 52歳で自らアナウンス室からの異動を選んだ境さんは、フジ入社までもユニークな人生を歩んできた。

 中学3年まで習った日本舞踊・花柳流の名取として花柳龍彦という芸名を持ち、神奈川・湘南高卒業後には時代劇俳優を志し、俳優養成スクールにも通った。

 「でも、役者は才能的に無理なんじゃないかと思って、2年遅れて早稲田大に進学しました」

 大学では放送研究会に入会。2年上に笠井信輔さん、1年上に青嶋達也さんと後にフジのアナウンサーになる先輩がいた。

 「真剣にアナウンサーを目指し“アナウンサー命”という先輩が身近なところに2人いたので、サークルから会社へ、そのまま上がっていった感じです」

 ただ、就活の時期が来てもアナウンサー志望ではなかった。

 「広告代理店で働くかテレビ局でイベントをやりたいと思っていました。アナウンサーを志望したわけでなく、フジテレビでも事業部志望でした。アナ試験が5月にあって、秋の一般職の面接の練習のつもりで受けてみたら最終カメラテストまで進んで。イベントに携わることはアナウンサーという立場でもできるなと思い『アナウンサーをやってみたくなりました』と正直に伝えたところ、懐の深い採用で入社させてくれました。バブル後期でご祝儀採用もあったのかな。フジ1社しか受けていません」

 82年から93年まで12年連続で視聴率「三冠王」を続ける黄金時代の入社だった。

 「ステーションのパワーが高く、番組の枠に力がある時代でしたね。例えば番組の視聴率が20%あったら、自分の実力以上に出ているだけで知名度が上がっちゃう。1回出た時の伝播力が3%と20%じゃ全然、違うから。いい時代に入れてもらって、アナウンサーの歩みとしては順調だったと思います」

 入社2年目には平日昼前の生活情報番組「奥さまお手をどうぞ!」の男性アシスタントとしてレギュラーになったのを皮切りに。“イケイケ時代”のフジで、なんでもやった。

 「『3時よ来い』という番組で犬の着ぐるみを着て住宅のリポートをするとか、今ではアナウンサーにやらせるのはちょっとと思われるようなこともやっていました。27年間のアナウンサー人生を半分に分けると前半が情報番組、後半が報道番組。週末のニュースを7年半、平日のお昼や夕方のニュースも含めて14年近く報道番組を担当しました」

 昼の「FNNスピーク」、夕方の「FNNスーパーニュース」キャスターなどを歴任。後者では“フジの顔“安藤優子さんと組んだ。

 「当代随一の女性キャスター・安藤さんを中心に回る番組なので、安藤さんとのバランスが局アナに求められるところ。局アナはタレントさんやフリーのキャスターと張り合う存在ではないと染みついていましたし、安藤さんはキャスターの世界で圧倒的な存在だった。安藤さんがどのように進行するのかを特等席で見られて非常に勉強になりました」

 そして、52歳で迎えた初の異動で用意されたのが、内部監査という仕事だった。

 「内部監査って一般的なイメージとしては金銭的な不正をしている人を調査して暴き出すってイメージがあると思うのですが、うんと平たく言うと、会社の健康診断をする部署。人間の体で言うと、ここの血流が滞っているな、とか機能不全を起こしているな、と言うところを調べて、社長の所にこういう診断結果ですという報告書を持って行く。治療するかしないかは社長が判断する。ITリスクマネージメントや人材育成、SNS対策がきちんとできているか等、テレビ局として押さえておくべきテーマを社長に提案し、具体的なご意向を受け、実践に移していくコンサルティング的な要素もある仕事です」

 アナウンサー時代とは180度違った仕事を苦労しながら、こなしてきた。

 「最初はアナウンス室しか知らない人間に務まるのかと思いました。でも、部署単位で考えると、どうしても仕事は内向きになる。外から見るからこそ分かる改善点も出てきます。監査が入ることで、各部署が課題に向き合うきっかけを作ることも出来ます。アナウンサーとして培った“聞く力”が社内でヒアリングをする際に役立っていますが、監査の仕事の場合、その部署にとって嫌なことも指摘しなければいけない。番組に出演している時は視聴者に対して感じ良くしゃべるということを心がけていましたが、それだけでは監査の仕事は成立しないところがあって。アナウンサー時代とは異なる精神的な辛さはありますね」

 新たな仕事に挑んで6月で6年目に入る。

 「会社の全体像や、こういう人が活躍して成り立っていたのだと、知らないことだらけでした。それでも社長は私の報告に真摯に耳を傾けてくれますし、社員の生きた声をダイレクトにトップに伝える役割というのもやりがいがあります」

 フジ一筋の会社員生活も32年目に入った。

 「地味な大学生だったので、なんて楽しい人ばかりの会社なんだろうと思っていました。アナウンサーじゃない人もみんな話がうまいし、楽しい。基本的にエンターテインメント会社で何か人と違うことをやって楽しませようというマインドがあって、そこがすごく好きで長くいられたのかな」

 黄金期を知るだけに視聴率低迷など、フジの現状には歯がゆい思いもある。

 「最高にいい時代に入社していますから、入れてくれただけで感謝しています。いい時も悪い時も人生そのものなので、もう1回、元気を取り戻したいなって。テレビと言えばフジテレビという時代があって、勝ち続けてきた歴史の中でいったん見直していくという時期に入った。新しい風を入れていくっていうのは勝ち続けてきた会社ゆえに難しいだろうなとは思いますが、自分たちを客観的に見ることも必要なのだと思います」

 今年4月、57歳の役職離脱を迎えた。あと3年で定年の節目も来る。

 「役職定年というのは60を過ぎた時、どう生きていくか考えなさいという3年間だと考えています。60過ぎて、どうしようかという明確なビジョンは立っていないので、この3年間は1年刻みでどう生きるのが自分らしいのかを考えようと思っていますし、そういう年になったのだなと思います」

 定年が近づいてきた今だから見えてきたものがある。

 「今はアナウンサー時代に見えなかった会社の全体像が少しずつ見えて来ましたし、監査の仕事を通して何か役に立てればと思っています。フジテレビという会社をより理解して定年を迎えることで、本当の意味でフジテレビを卒業することになるのだと思います」

 お茶の間でおなじみだった、とびきりの笑顔を見せた元ベテランアナは淡々と、一歩先の人生を見据えていた。(次回6月5日配信分は阿部知代さんが登場)

 ◆境 鶴丸(さかい・つるまる) 1964年4月5日、神奈川・鎌倉市生まれ。57歳。89年、早大政経学部卒業後、フジテレビ入社。アナウンサーとして情報番組で活躍後、「FNNスピーク」、「FNNスーパーニュース」など多くのニュース番組でキャスターを歴任。アナウンス室副部長などを務めた後、2016年6月、自らアナウンス室からの異動を希望し、総務局内部監査部へ。現在、同部勤務6年目。特技は日本舞踊で花柳流名取・花柳龍彦の芸名も。大学入学前に時代劇俳優を目指していた経歴も持つ。

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