「日本と対戦するセルビア代表の素顔」…喜熨斗勝史氏コラム「Coach’s EYE」

スポーツ報知
タジッチ(ロイター)

 こんにちは。久しぶりのコラムです。ご存じの方も多いと思いますが、セルビア代表のコーチに就任したため、コラムの更新が遅れましたこと、お詫び申し上げます。今回は、欧州・セルビア代表チームのコーチとして「Coach‘s Eye」を書かせていただきます。

▽W杯予選

 3月にセルビアに渡り、ストイコビッチ監督のもと、W杯予選を3試合戦ってきました。アイルランド(3〇2)とポルトガル(2△2)をホームのベオグラード・マラカナスタジアムで戦い、アウェーに移動してアゼルバイジャン(2〇1)。3試合で勝ち点7を獲れたのは大きな収穫です。ただ、残り5試合すべて勝たないと欧州予選は突破できないはずです(グループ2位はプレーオフ)。最終戦のポルトガルとの再戦まで、勝ち点を落とさずに可能性を追求していきます。応援よろしくお願いします。

▽選手とチーム

 さて、今回のセルビア代表ですが、自分としては、今まで見てきたチームの中では最強に近い、もしくは最強のチームだと思います。こんな素晴らしい機会を与えてくれた、ストイコビッチ監督には感謝の言葉しかありません。そこで今回は、チームと選手たちを紹介します。6月には日本代表と親善試合を戦うことも発表されています。楽しみにしていてください。

▽チームメンバー

 今回のW杯予選に、ストイコビッチ監督がチョイスした30人は、ほとんどがセルビア以外でプレーする選手たちです。右サイドバック要員のガイッチ(レッドスター)とペトコビッチ(TSC)以外、すべて欧州の主要なクラブでプレーする選手たちです。イタリアのセリエAに所属する選手が多いですが、リーグアン(フランス)、プレミアリーグ(イングランド)、ラ・リーガ(スペイン)、ブンデスリーガ(ドイツ)と5大リーグに所属する選手がほとんど。全員、所属チームではスタメンもしくはそれに準ずるレベルの選手たちなので、そのレベルの高さは、想像よりも高いと思って間違えありません。さらにオランダ、ポルトガル、ロシア、ギリシャそしてポーランドなどで首位を走るチームで活躍する選手が加わるので、名前は知らなくとも、皆さんがチャンピオンズリーグや欧州リーグを見る際には、かなりの確率でセルビア代表の選手たちがプレーしているはずです。今回の選手たちの平均年齢は26.5歳と標準的ですが、身長は186センチとかなりの大きさです。身長は高いですが、身体のバランスも良く、力強さと華麗さを兼ね備えたメンバーです。ストイコビッチ監督のチョイスだけあって、全員テクニックのレベルが高く、速いだけとか、デカいだけとか言う選手はいません。全員、英語を話せるし、若い選手でも大人のコミュニケーションが取れる「知的」という印象です。まさに、サッカー選手として成熟度が高い選手が集まりました。すべて、素晴らしい選手たちですが、今回その中でも、自分が強烈なインパクトを受けた選手を3人紹介します。

・DUSAN TADIC(タジッチ)=アヤックス=

 キャプテンを任された、タジッチはまさに親分。その存在感は絶大です。プレースタイルは、スピードとテクニックを生かして、相手DFを翻ろうするタイプ。ボールをさらしながらの切り返しは、ちょっとだけ、ストイコビッチ監督をほうふつとさせる感じがします。年齢を感じさせない、アジリティーとゲームを「読む」力に優れていて、相手の弱みに付け込むプレーは、ポルトガルの選手たちをもイライラさせました。オフ・ザ・ピッチでも選手たちをまとめあげ、リラックスタイムには自ら持ち込んだ「マフィア」というカードゲーム(日本の「人狼」)で、選手たちを盛り上げてくれます。所属のアヤックスでもキャプテンを務め、チームをリーグとカップの2冠に導きました。サウサンプトン時代に元名古屋の吉田麻也とプレーしていて、初練習後に「KINOSHIの話で盛り上がった」と裏話を教えてくれました。コーチ目線では「使って損はない」。そんな選手です。

・STEFAN MITROVIC(S.ミトロビッチ)=ストラスブルグ=

 身長189センチの長身と左右のキックを駆使し、安定したパフォーマンスでDFラインを支える副キャプテン。タジッチが攻めのリーダーなら、ミトロビッチが守りのリーダーです。CBですが、運動量が多く、オフ・ザ・ボールのポジショニングにも労を惜しまない司令塔。試合後にはGPSでのフィジカルパフォーマンスとテクニカルパフォーマンスのチェックを誰よりも早く要求してくるようなストイックな選手。ポルトガル戦では、あのC・ロナウドのシュートをスライディングで防ぎました。特筆すべきは、強敵・ポルトガルと90分以上戦った後に、全力でスプリントして戻り、スライディングでボールをかき出した、そのメンタリティーとフィジカルの強さですね。オフ・ザ・ピッチでは、食事中も若手の状況をチェックしたり、試合後にパフォーマンスについて、若手と話をしたりと副キャプテンとしての貫禄は十分。反面、機内ではカードゲームに興じ、大騒ぎするなど、おちゃめな面もある、愛される「軍曹」。彼も、川島永嗣と「KINOSHI談義」を楽しんでいるらしいです(笑い)。共に戦った、「アジアの壁」の元日本代表・井原正巳氏のようです。

・ALEKSANDAR MITROVIC(A.ミトロビッチ)=フルハム=

 残念ながら、プレミアリーグから降格が決まってしまったフルハム所属のストライカー。身長189センチだが、高いというよりは「デカい」選手。今回の予選では、3試合で5点をたたき出した、勝ち点7の立役者。今回のゴール集を探してもらえば分かるが、ヘディング、右足、左足と得点のための手段は選びません。点を狙うストライカーだが、前線からのDFも献身的。セルビア代表として64試合で41得点、フルハムでも119試合で52ゴールをあげる。見た目は怖いが、おちゃめでタジッチにいつもいじられている。ボールを渡せば、シュートしてくれる、頼もしいFWだ。

・若手選手たち

 このほかにも、セリエAで得点王争いをしているフィオレンティナのブラホビッチやフランクフルトのヨビッチとコスティッチ。最近、頭角を現してきたヴェローナのラゾビッチやイリッチ、さらにはラツィオのミリンコビッチ・サビッチなど、若手も十分な実力。

 こんな素晴らしい選手たちと真剣勝負を戦えることは、以前は夢にも見なかったことなので、とても驚くと同時にその責任の重さを痛感している毎日です。セルビアの国歌を片言で覚えかけたところで日本代表との試合が決まり、少し困惑してはいますが、ここでしっかりと結果を残すことで、日本のサッカーにも貢献できると信じて頑張ります。

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