能代工バスケットボール部の全国制覇58回と、もう一つの栄光

スポーツ報知
5月7日、能代科技の初陣(白ユニホーム)

 栄光とは単なる記録なのかー。秋田・能代工は今春、能代西と統合して能代科学技術高校(能代科技)に校名が変わった。先日、校名変更後初となるバスケットボール部の公式戦を取材し、このような問いが生まれた。

 同部は2015年ウインターカップ(WC)3位、19年のインターハイ8強、WC優勝20回を含めた全国制覇は58回。日本人初のNBAプレーヤー・田臥勇太も輩出した。他を圧倒する功績の数々で史上最強の名をほしいままにしてきた。

 5月7日、能代科技として行われた県北総体での初公式戦。選手たちは伝統の丸刈り頭ではなく、いわゆるスポーツ刈りも混ざり、今春から指揮を執る小松元監督は、初の能代工バスケ部OBでない指揮官として、コートにいた。新ユニホームは間に合わず「能代工高」のままだったが、新時代の幕開けとともに、一つの歴史が幕を下ろしたのだと、試合前から実感した。

 しかし、いざ試合が始まると、能代工の「もう一つの栄光」を感じずにはいられなかった。ルーズボールにスライディングしてでも飛び込む、リバウンドに何度でも飛びつくなど、泥臭さは健在。小松監督に話を聞くと、前監督で初の高校3冠を達成した小野秀二氏と選手らが積み上げたスタイルを「変えるつもりも変える必要もない。練習メニューも一切変えていない」と言う。思い出したのは、昨年末のWC直前、小野氏を取材した時の言葉だ。

 小野氏は「来年、校名が変わり、ユニフォームの胸の文字が変わっても、バスケットを観たら『あれが能代工のバスケットだね』と全国のバスケットファンに言ってもらえるように」と話し、能代工として最後のWCに臨もうとしていた。選手、監督の両方で日本代表を経験するなど数々の功績を残した小野氏の「僕のフィロソフィーは、加藤(廣志)先生(元監督)のフィロソフィー。我々のバスケットは留学生のいる全国でも通用する」の言葉も力強かった。

 バスケットスタイル。きっとこれも能代工が記録の他に残した、一つの栄光の形だと思う。選手間だけでなくバスケットファンの間でも、「能代工のバスケット」で何を指すか理解できるのは、それを何十年も徹底して磨き上げ、コートで体現し続けたからだ。筆者の地元でもある能代では、幅広い世代の市民が「能代工のバスケット」のイメージをつかんでいる印象だ。私たちの記憶に残り次の世代に語られていくのは、記録よりむしろこういった言語化しづらいことの方かもしれない。(東北支局・小山内 彩希)

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