刑事ドラマ「古畑任三郎」などで人気を博した俳優の田村正和(たむら・まさかず=本名同じ)さんが4月3日午後4時20分、心不全のため東京港区の病院で死去したことが18日、分かった。77歳。葬儀・告別式は親族で行った。喪主は妻・和枝(かずえ)さん。昭和の時代劇スター阪東妻三郎さんの三男として生まれ、映画デビュー。1980年代以降は「うちの子にかぎって…」「ニューヨーク恋物語」などのドラマに出演。94年から放送されたフジテレビ系連ドラ「古畑任三郎」シリーズではコミカルな演技が好評で当たり役となった。
端正なマスクの二枚目スターとして映画で活躍しながら、ドラマでは時にはコミカルに、時にはニヒルに…。コメディーからシリアスドラマまで幅広く役を演じた名優が逝った。
マネジャーによると、田村さんは近年「十分やり切った。自然にフェードアウトしたい」と話し、2018年以降は出演作がなかった。3か月に1度のペースで電話で話し「声は元気そうでした」。今年2月には元気な様子で「コロナが落ち着いたら食事をしよう」と話していたが、その直後に風邪をこじらせて検査入院。コロナ禍のため、妻の和枝さんもお見舞いなど面会が制限されていた。死去したことは関係者にも最近まで伏せられており、マネジャーが訃報を受けたのも先週末だった。「リハビリを一生懸命していると聞いていましたので、僕自身も信じられないです。ただただ驚いています」と話した。
田村さんは昭和を代表する映画スター・阪東妻三郎さんの三男として、高校時代から注目された。60年に長兄・高廣さんの主演映画「旗本愚連隊」の撮影現場を見学した際にスカウトされ、同作品でデビューした。NHK大河ドラマ「花の生涯」(63年)以降、5年連続で大河に出演。父親譲りの端正なマスクで二枚目スターとして確固たる地位を築くと、80年代からは活躍の場をドラマに移した。
84年のTBS系「うちの子にかぎって…」で優柔不断で頼りない小学校教師を演じると、同局系「パパはニュースキャスター」などコメディードラマで活躍。フジテレビ系「ニューヨーク恋物語」ではクールな主人公を演じ、トレンディードラマでも確固たる居場所を得た。94年にスタートしたフジテレビ系「古畑任三郎」では、眉間に人さし指をあてて「う~ん」とうなる姿が、多くのタレントなどにモノマネされるなど、社会現象にもなった。
97年に心臓の手術をしており、10年以降は仕事をセーブ。年に1~2本の時代劇ドラマなどに出演した。13年にはスポーツ報知のインタビューに「声がかすれて出ないんです。これ以上、滑舌が悪くなったらどうしようかと考えます」と自らの“引き際”について語っていた。最後の出演作は18年のフジテレビ系「眠狂四郎 The Final」だった。
私生活についてはほとんど語ることなく、プライベートはベールに包まれていた。俳優としての矜持(きょうじ)を守り抜いて、静かに天国へと旅立った。
◆田村 正和(たむら・まさかず)1943年8月1日、京都市生まれ。高校在学中から映画に出演し、61年の映画「永遠の人」で本格デビュー。代表作は時代劇「眠狂四郎」シリーズ(72年~)、ドラマ「うちの子にかぎって」(84年)、「パパはニュースキャスター」(87年)、「古畑任三郎」(94年)など。昭和の時代劇スター阪東妻三郎の三男。4人兄弟で長兄・高廣(2006年死去)と弟・亮も俳優。