宝塚宙組・和希そら「夢千鳥」で魅せた“一瞬の尊さ”

竹久夢二(和希そら、左から3人目)に他万喜(天彩峰里、同2人目)、彦乃(山吹ひばり、右)、お葉(水音志保、左)が寄り添うプロローグの一場面
竹久夢二(和希そら、左から3人目)に他万喜(天彩峰里、同2人目)、彦乃(山吹ひばり、右)、お葉(水音志保、左)が寄り添うプロローグの一場面

 宝塚歌劇宙組の和希(かずき)そらが、兵庫・宝塚バウホール公演「夢千鳥」(作・演出、栗田優香)で約3年ぶり2度目のバウ主演を務めた。大正浪漫を代表する人気画家・竹久夢二と、彼が愛した女性3人との愛憎劇。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発令のため、先月22日の開幕から4日間(計6公演)の上演のみで無念の中止となったが、入団12年目のスターが鮮烈な余韻を残した。(ペン&カメラ・筒井 政也)

 センスの塊・和希が、短期間ながら、鮮やかな花を咲かせた。初日のカーテンコールで主役は、開幕前に散った「花のみち」の桜を話題に挙げ、「美しい瞬間は、一瞬だからこそ尊いのだと思います」と話したが、わずか4日間のみとなったセンター作は、くしくも、その言葉を証明するように濃く深い内容だった。

 沢田研二主演、鈴木清順監督で1991年に映画にもなった夢二の物語。美人画の“創作の女神(ミューズ)”でもある元妻・他万喜(たまき=天彩峰里)、弟子の彦乃(山吹ひばり)、新しいモデル・お葉(水音志保)との三者三様の絡みを描く。「大衆画家」という低評価の劣等感と闘う男の、一種の成長記でもある。

 夢二が他万喜に刃物まで手にするほどの暴力をふるい、彼女が震えるさまに美を見出すなど、同時代を生きた谷崎潤一郎の文学とも通じるような耽美的な世界観が醸し出された。壮絶な夫婦げんかが愛のタンゴへと昇華する演出は熱がこもり、見ごたえがあった。

 彦乃に対しては少年のような無邪気さを、お葉相手には男の情けなさや女々しさを、いずれも細やかに表現。18年8月のバウ初主演作「ハッスル メイツ!」は和希が潜在的パワーを“発する”ショーだったが、今作は対照的に“引き付ける”力で、約3年の成長をアピール。ジュリーに負けない色気も存分に発揮した。

 3人の娘役の力演も見事。時に天彩は、肝の据わり具合や目力のすごみに8年目の充実ぶりを感じさせた。

 一方、夢二を主人公にした作品でメガホンを取る映画監督も和希が二役で演じ、パラレルワールド的な人間模様で、大正時代とリンク。「実は夢二は、3人の誰も愛していなかったのでは」という推測を俯瞰(ふかん)で見る視点で、難しい構成だが、意外なほどスッキリとしていて、バウ演出デビュー・栗田氏の手腕が光った。

 和希は「本作品のテーマは『愛とは何か』。宝塚の王道のラブストーリーとは一味違いますが、家族、夫婦、恋人への愛や、愛ゆえの嫉妬や束縛、執着…。様々な愛の形が散りばめられています。愛とは何かを考えるきっかけになれば」。同時に、様々な生徒の個性も楽しめた。本公演での男役2番手で第97期首席の留依蒔世(るい・まきせ)は定評のある歌声をソロで披露し、宙組のポテンシャルを証明した。フィナーレもボリュームがあり、バウでは異例のラインダンスのロケットも。これもファンへの愛だろう。

 今作が転機になりそうな生徒が多く、今月8日に無観客収録の配信が行われたことが何より。千秋楽(5月3日)までの完走は阻まれたが、その悔しさは確実に未来への推進力となる。

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