俳優・武田真治(48)が、東京・渋谷の東急シアターオーブで上演されるミュージカル「オリバー!」(9月下旬~11月上旬)で、俳優・市村正親(72)とダブルキャスト主演を務めることが11日、分かった。お互いに師弟関係を公言する2人は、このほど初めてツーショット取材に応じ、2007年のミュージカル「スウィーニー・トッド」で初共演してから今に至る関係性や、今回の作品にかける思いを語った。(増田 寛)
念願がついにかなった。オーディションで今回の主演を勝ち取った武田は「間違いなく、自分の俳優人生の新たなチャレンジで、人生の分岐点になる作品。今から身震いしてます」。師匠の市村とは再演も含めミュージカルでは8度共演してきたが、ダブルキャストで肩を並べるのは初めてとなる。
市村は弟子との“競演”に「真治は俺にはできない役作りをするから、見る楽しみが増えた。俺に似たような俳優さんがやってお客さんが見るなら、俺の舞台を見てればいい。でも真治なら、見るのが楽しみだと思える」と稽古を待ち望む。
英作家チャールズ・ディケンズの古典小説「オリバー・ツイスト」が原作。19世紀の英国を舞台に、孤児院(児童養護施設)を追放されロンドンに行き着いた少年オリバーと、子供だけのスリ集団を束ねる老人フェイギンの交流を描く。悪党でありながら憎めない性格の主人公フェイギンを、「俺は超ポジティブだけど、真治はミステリアス」(市村)という正反対の2人が演じる。
2人が出会ったのは、06年「スウィーニー―」の稽古場だった。当時は「めちゃ×2イケてるッ!」(フジ系)などでバラエティータレントとして活躍していた武田だが、本来進みたかった演技の道に迷いが生じ「芸能界の仕事を続けるのはどうなんだろうと悩み、本当に精神的につらかった」。
悩める武田の光となったのが、市村の演劇への姿勢だった。「人間性、舞台への情熱、全部に魅せられた。人生の先輩でこれほどイキイキしてる人はいない。魅力的な人になりたい、人間としてこうありたいと思った。本当に僕の師匠です」
武田の熱意をしっかり受け止めた市村も「まさに舎弟。でも俺にないものを持ってるから、刺激にもなる。筋肉キャラやサックス、オシャレとかね。俺にない感性がある。うらやましい時もあるよ」と目を細める。
武田にとって今回が役者人生の集大成でもあり、師匠への恩返しの場でもある。「市村さんと同じ役をやったら力の差が浮き彫りになると思う。でも、絶対に、絶対に、弟子の僕がやるべきだと思い続けてきた役。この作品で恩返ししたいです」。弟子の挑戦を受け、市村は「再来年、俳優生活50周年を迎える。48年で蓄えたものを全てぶつけます」と闘志を燃やしていた。
◆市村 正親(いちむら・まさちか)1949年1月28日、埼玉県川越市生まれ。72歳。西村晃さんの付き人を経て、劇団四季のミュージカル「イエス・キリスト=スーパースター」のオーディションに合格し、73年に四季入団。89年NHK紅白歌合戦に出場。90年に四季を退団。2005年12月に女優の篠原涼子と結婚し、2男をもうける。
◆武田 真治(たけだ・しんじ)1972年12月18日、北海道生まれ。48歳。89年の第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞。90年に俳優デビューし、92年に「七人のおたく」で映画デビュー。2011年、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」に大野治長役で大河初出演。20年7月に歯科衛生士でモデルの静まなみと結婚。