◆JERAセ・リーグ DeNA2-3阪神(9日・横浜)
全身赤土で汚れたユニホームとは対照的に、佐藤輝の表情は晴れやかだった。右手にピンクのサポーター、左手にはピンクのリストバンド。連続試合安打は6で止まったが、母の日は「足」で勝利に貢献した。
1点を追う5回。先頭で四球を選ぶと、続くサンズの左中間への当たりで一塁から激走。最後はヘッドスライディングで間一髪、同点のホームイン。「無我夢中で走りました」。直後、近大の先輩・糸井の2号決勝2ランが飛び出した。
全力プレーが母・晶子さん(48)への“恩返し”だ。1回目の緊急事態宣言が発出された昨年の今頃は、近大野球部の活動が休止となり、ほとんどの時間を実家で過ごした。母の日には弟2人と折り紙で手作りした花、料理本をプレゼント。日頃から「いつもありがとう」、「健康には気をつけて」と育ててくれた感謝を示してきた。
物おじしない新人4番打者は、母にとって心優しい孝行息子。「今年は試合も忙しいし、頑張る姿を見られるだけで十分です」と、テレビ観戦などで成長した姿を見るのが何よりの楽しみ。「高校3年生の時ですかね。『母の日だから』って部活終わりにお花屋さんに行ったみたいで『お金何円持ってるから花束にしてくださいって頼んだ』と。知らなかったので、うれしかったですね」と、思い出話に笑みを浮かべた。
チームはナイターで10勝10敗ながら、デーゲームでは無類の強さを発揮。開幕から1分け挟んで無傷の14連勝を飾った。貯金も今季最多の14。ヘッドスライディングのジェスチャーで背番号8をベンチに迎えた矢野監督は「輝の走塁は素晴らしかった」と賛辞。佐藤家自慢の長男は、まばゆいほどにたくましい。
(中村 晃大)