【プチ鹿島の本音】「人生はマラソン」つらかったら逃げてもいい 

スポーツ報知
プチ鹿島

 「人生はマラソン」。苦難を乗り越えゴールに向けて走る。今までこの比喩に違和感はなかった。

 しかし元マラソンランナー原裕美子さんが書いた「私が欲しかったもの」(双葉社)を読みはじめたら、このたとえに疑問を抱き始めたのだ。原さんは名古屋国際マラソン(2005年)などで優勝したトップランナーでしたが、そのあと万引きを繰り返して逮捕されていた。

 実は彼女は窃盗症と摂食障害という「病気」だった。きっかけは過酷な減量から逃れるための“食べ吐き”です。たくさん食べてすぐに吐くことで体重管理が楽になった。しかし体によいわけがない。筋力も落ち、けがもしやすくなった。悪循環です。

 最初の万引きは食べ吐き用の大量の食料を確保するためだった。これが次第に止められなくなってゆく。読んでいて恐ろしくなりました。ストイックさが裏目に出ていたように感じました。

 原さんは「これまでの人生において、誰かに助けを求めるという選択肢が私の中にはありませんでした」、「自分がこんなに弱いのは努力が足りないからだ」と考えていたそうです。まさに孤独のランナー。しかし事件後、過去を知っていても温かく接してくれた人たちの「声援」に感謝した。

 ハッとしました。そう、人生がマラソンだと言うなら途中でやめてもいいのだ。つらかったら逃げてもいい。それも一つの「戦法」です。大事なのはレースをやめた人に周囲や社会が声をかけて支えることができるか。そんな選択肢も加えられるとしたら、やっぱり人生はマラソンなのかもしれない。そう思い直した。声援によってまた走り出す人だっているだろう。原さんはいま「病」を治したいと思っている人のためにも書いたという。

 ウサギだった人がカメの大切さも示した本でした。(時事芸人)

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