【五輪の倫】互角の勝敗分けるのは…競泳一発勝負、渡辺一平と佐藤翔馬の差

男子200メートル平泳ぎ決勝、表彰に臨む(左から)2位の武良竜也、優勝の佐藤翔馬、3位の渡辺一平
男子200メートル平泳ぎ決勝、表彰に臨む(左から)2位の武良竜也、優勝の佐藤翔馬、3位の渡辺一平
3位に終わりがっくりの渡辺一平(右)(左奧から)五輪内定の武良竜也、佐藤翔馬
3位に終わりがっくりの渡辺一平(右)(左奧から)五輪内定の武良竜也、佐藤翔馬

 スポーツ報知でコラムを執筆するカヌーの羽根田卓也は、心技体が互角のとき、勝敗を分けるのはもはや「説明の出来ない領域」であるという。

 ある時は運かもしれないし、ちょっとした風の気まぐれかもしれない。そして「説明の出来ない」何ものかの中にはいわゆる「勢い」も含まれている。

 4月に行われた競泳の日本選手権。五輪代表選考会を兼ねた一発勝負には、天国と地獄が同居していた。それをまざまざと見せられた思いになったのが、男子200メートル平泳ぎであった。

 今年に入り2分6秒台を連発して絶好調の佐藤翔馬と、日本記録保持者の渡辺一平の一騎打ちの構図だった。最注目レースを制したのは日本記録を更新した佐藤。「タイムに見当もつかない」ほど、完璧に仕上げたはずの渡辺は3位に沈み、五輪代表の座を逃した。「何が間違っていたのか」。佐藤と、2位の武良の場内インタビューが始まっても、水から上がれなかった。

 2人のタイム差は1秒90。渡辺が本来の力を出し切っていたなら…。勝敗の行方は分からずとも、これほどの差はつかなかったろう。佐藤の勢いが一種の圧となり、相手を封じ込めたのか。あるいは、渡辺の五輪にかける思いの強さが、自らの重しになっていたのか。

 「ベラミスの剣」という逸話がある。古代ギリシャにベラミスとマルスという実力互角の闘いの神がいた。あるとき一計を案じたマルスが、ベラミスの剣をほんの少しだけ重いものにすりかえた。結果としてマルスは、その剣を手に戦ったベラミスを倒す…。実はこれはある漫画の作中に出てくる“創作”である。だが、互角の力が競う時、微細な狂いが優劣を分けるというのは、勝負の真理を鋭く突いている。

 あのレースにおける「ベラミスの剣」とはいったい何だったのか。いつかは、自分なりの答えを探し当てなくてはいけない。競技者の厳しい宿命である。

 ◆太田 倫(おおた・りん)1977年、青森県生まれ。43歳。横浜市大から2000年入社。紙面レイアウト担当などを経て、2008年からプロ野球、18年から五輪担当となり、主に水泳競技、スケートボード、空手などを担当。

男子200メートル平泳ぎ決勝、表彰に臨む(左から)2位の武良竜也、優勝の佐藤翔馬、3位の渡辺一平
3位に終わりがっくりの渡辺一平(右)(左奧から)五輪内定の武良竜也、佐藤翔馬
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