平野レミ「スキンシップより味覚でつながる家族の絆『ベロシップ』が大事」…著書「家族の味」再重版

家族の味
家族の味

 独創的なレシピと明るいトークでおなじみの料理愛好家・平野レミさんのエッセー「家族の味」(ポプラ社、1540円)が、発売から約2か月で再重版(3刷)となるなど話題を呼んでいる。同書は29品のオリジナルレシピを、2019年に亡くなった夫でイラストレーターの和田誠さん(享年83)が描いた温かいイラストとともに紹介。レミさんが大切にしている「ベロシップ」の正体など“家族愛”にあふれた一冊となっている。(奥津 友希乃)

 今やエプロン姿が印象的なレミさんだが、20代前半にシャンソン歌手としてキャリアをスタートさせた。夫の和田さんの友人に振る舞っていた料理が評判となったことを縁に、NHK番組「きょうの料理」に出演した。

 「歌手としてテレビに出てはいたけれど、料理番組に出たのは初めてだった。いつものやり方でトマトを手でぐちゃっとつぶしたの。そしたらNHKの人に『下品だと抗議が来たのでやめてくれ』って言われて。だけど、気取ることができないから『私のやり方でしかできません』って言ったの」

 後日、豪快な調理方法や手軽なレシピが反響を呼び、料理の仕事が舞い込むように。相棒だったマイクをフライパンに持ち替え、“料理愛好家”として約40年、数々のアイデアレシピを世に送り出してきた。

 「私は料理学校に通ったことがなくて、ただ料理が好きで好きで、好きが高じてこうなっちゃったの! 肩書を『料理研究家』って紹介されたこともあったけど、私は研究はしていないと思った。それで和田さんに相談したら『愛好家じゃないの?』って。それからずっと、そう名乗っているの」

 和田さんとは1972年に出会い、わずか10日で“超スピード婚”。結婚式はせず、和田さんのアパートで、同書にもレシピ掲載されているレミさんの母直伝の「母のステーキ」を作り二人で食卓を囲んだ。牛肉を1枚ずつ、丁寧に焼き上げるこだわりの逸品。「新婚初日はステーキでしょう。めでたいんだもの、きんぴらゴボウじゃないわよね(笑い)。和田さんが『♪チャチャチャチャーン』って「結婚行進曲」のレコードをかけてくれて乾杯して、二人だけの結婚式をしたの」

 「死ぬまでにあと何千回レミのご飯が食べられるかな」―。ステーキを食べた後、和田さんがつぶやいた言葉にレミさんは愛情たっぷりの手料理で応え続けた。

 「この人、食べることに命を懸けているんだなと思って『よし! じゃあ和田さんのためにお料理がんばっちゃおう』って。一緒にいた47年間、一度もまずいと言われたことなかった。何でもおいしいって食べてくれたもんだから、ここまで一生懸命お料理をやるようになっちゃったのね。でも今こうしてお仕事があるのも、和田さんのおかげね」

 最愛の夫との別れから1年半たった今も喪失感は大きいという。

 「大好きな人と結婚しない方がいいわね。後がものすっごくつらいから、地獄よ。毎日、毎日、毎日夫のことを思っているんだから。苦しくて、さみしくて、悲しくて、いやになっちゃう」

 長男(ロックバンド「TRICERATOPS」のボーカル・和田唱)の妻で女優の上野樹里と、次男の妻で食育インストラクターの和田明日香さんらとキッチンに立ち、食卓を囲む時間が家族のぬくもりを感じるひとときだ。レミさんの祖父の代から100年続く「牛トマ」(牛肉とトマトの炒め物)は5代にわたり受け継がれている。

 「(上野)樹里ちゃんやあーちゃん(明日香さん)と孫が作った『牛トマ』を食べると、両方同じ味がするの。『家族だな』ってホッとするし、とっても落ち着く。うれしいことね」

 「家族」が「味」でつながることを“ベロシップ”とレミさん流に表現する。

 「スキンシップより、家族の絆っていうのがベロ(舌)、つまり味覚でつながる『ベロシップ』の方が絆ががっちりしてるように思うの。『おいしい』っていう幸せを心と体で一緒に感じる。これが私はすごく大事なことだと思う」

 コロナ禍で“おうち時間”が増える中、料理が苦手な人にも挑戦してほしいとの願いを込め、基本的な食材の切り方や分量の解説も掲載。一冊を通しておいしい料理を作るための最高の調味料は“愛”と“楽しむ”ことだと教えてくれる。

 「楽しいのよね、お料理って。自分で考えたものを作って食べられるんだもん。食べさせてあげる人のことを思って作るとやりがいもあるし、失敗も挑戦も全部が上達につながっちゃうから。頑張らなくてもいい、気軽に楽しむことが大切ね!」

 ◆掲載されている主なレシピ

 ▼「豚眠菜園」(とんみんさいえん)…ゆで豚を特製たれで絡めキャベツの上に乗せると、豚が畑で眠っているように見えたことから和田さんが命名。

 ▼「台満餃子」(たいまんぎょうざ)…餃子のタネを包まずに皮の上に乗せた料理。包む手間を省いた「怠慢」さを中華料理風に和田さんが命名。

 ▼「特急トリュフ」…材料をレンジでチンして固めて伸ばすだけで手軽に素早くできるチョコレート菓子。

 ◆平野 レミ(ひらの・れみ)東京都生まれ。料理愛好家、シャンソン歌手。フライパン鍋「レミパン」などキッチン用品を開発するなどマルチに活躍。著書に「平野レミのお勝手ごはん」など。祖父は米国人で、父は仏文学者の平野威馬雄。イラストレーターの和田誠さんと72年に結婚。長男はTRICERATOPSのボーカル・唱、次男はクリエイティブディレクターの率さん。

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