なぜ織田記念陸上は“出る”のか…スタジアムの地形から考える風向きの妙

18年大会より
18年大会より

 陸上の織田記念国際(29日、エディオンスタジアム広島)で、2つの日本新記録を目の当たりにした。

 男子110メートル障害では、金井大旺(ミズノ)が13秒16。16年リオ五輪なら銀メダル相当の快記録で会場を沸かせれば、“ママさんハードラー”寺田明日香(ジャパンクリエイト)が自身の日本記録を0秒01短縮する12秒96をマーク。愛娘の果緒ちゃんを抱っこしながら涙する姿が印象的だった。

 2つの記録に共通するのが、公認上限の2メートルに迫る好条件の追い風が吹いたこと。金井は1・7メートルを受け「風に乗って走れた」と語り、寺田も1・6メートルの追い風に恵まれた。そう、毎年4月末に行われる織田記念国際は、風の条件が整いやすいからこそ、好記録が期待される。13年大会では、男子100メートルで桐生祥秀が当時日本歴代2位の10秒01をマークしたことも記憶に新しい。では、なぜ織田記念は風に恵まれることが多いのか―。それは、スタジアムの“向き”に一因があると考えられる。

 会場のエディオンスタジアム広島は、広島市の中心部から北西に山を1つ越えた先、安佐南区に位置する。ホームストレートは、概ね南西から北東方向に向かって走る形で作られている。ここがポイントだ。春には、南寄りの風が吹きやすいが、選手にとってこれは追い風になる。温暖な南風を背に受けて走るという絶好の条件が整いやすいから、織田記念国際はタイムが“出る”期待が高まるのだ。

 さて、その意味で今年は大いに気をもんだ。試合当日の午前中は、前線の影響で冷たい雨が降り、風も向かい風となる北寄りだった。ところが、14時過ぎから天候が急速に回復。それにともない、風向きも一気に真逆になった。気象庁によれば、決勝が行われた15時台の広島市の風向きは南西。まさに、理想的な追い風となる条件がギリギリで整い、快記録をアシストしてくれたのだった。試合を報じる原稿には、思わず「天が味方した」と書いた。

 もちろん、好記録、好パフォーマンスは、選手達の血のにじむような日々の努力のたまものだ。歯科医になるために、東京五輪を節目に引退する金井は「最後ということで、よりトレーニング1つ1つに重みを感じていて、練習の質も上がっている実感はある」。寺田も、育児と競技を両立しながら鍛錬を積んできた。1日の中で、めまぐるしく天候が変化した今年の織田記念。最後に好条件でのレースが叶った理由を探すならば、それはきっと選手の努力を神様がしっかり見ていた、ということなのだろう。(陸上担当・細野 友司)

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