◆高校野球春季静岡県大会第2日▽2回戦 三島南9-2島田工=7回コールド=(25日・愛鷹)
2回戦8試合が行われ、今夏のシード権が与えられる8強が出そろった。センバツ後初の公式戦を迎えた三島南(推薦)は島田工(中部5位)に大勝。通算24発の大砲・前田銀治中堅手(3年)が6球団のスカウトの前で2安打1打点をマークし、4番・小堂湧貴三塁手(3年)は先制と勝ち越しの2打点を挙げた。
やや硬かった表情は、試合後、安堵(あんど)に変わっていた。三島南・前田は「どこも『甲子園に行ったチームを倒そう』としてくる。甲子園の時より緊張しました」。ネット裏には地元ファンが集結。さらに6球団ものスカウトが訪れ、熱視線を送ってきた。極限のプレッシャーをはねのけ、2安打1打点。5年ぶりのシードを呼び込んだ。
センバツでは2安打し、マウンドでは143キロをマーク。スカウトの目に留まり、自身もプロを意識するきっかけとなった。正捕手の深瀬涼ら複数の主力に故障が出る苦しいチーム事情もあり、この日は稲木恵介監督(41)の「いい打者を一打席でも多く」との発案で、「人生初」の2番にぶっつけで座った。相手右腕は80キロ台の遅球を多投し遊撃を左中間に置く外野4人の変則シフトを敷いてきたが、惑わされず3回に中前打、7回にも左前にはじき返し大量点につなげた。
「(緩い球に対し)アゴを上げず、低い打球を意識した。集中できた」。中堅手としてもランニングキャッチなど好守を連発。ソフトバンク・山本スカウトは「体も大きいしプレーも積極的で面白い」と181センチ、94キロの大砲を評価し、DeNA・中川スカウトも「脚力や力強さ。いい素材を持っている」とうなずいた。
試合前日(24日)、全体ラインに「挑戦者として臨もう」と記した稲木監督は「『センバツ校がノーシード』と書かれるのは嫌だった」と本音も。「受けることなく一生懸命やった」とナインを褒めた。春は66年の4強が最高。前田は「この先も挑戦者として勝って行きます」と誓った。(武藤瑞基)
〇…4番・小堂の勝負強さが光った。初回、左翼に先制犠飛を打ち上げ、3回には膝元の変化球を左前に運ぶ勝ち越しタイムリー。「チームが勢いに乗るきっかけを作れた」。センバツ1回戦は朝食も喉を通らないほど緊張しながら適時打をマーク。帰静後小学5年時に死去した父・俊樹さんの墓前に「甲子園はすごくいい所だった」と報告したという。主砲は「目標は東海出場です」と宣言した。
〇…深瀬涼に代わって公式戦で初めて捕手を務めた近藤耀聖(3年)が奮起した。初回2死二塁で好送球で二盗を阻止し、飛球をダイビングキャッチするシーンも。後輩のエース・植松麟之介投手(2年)を落ち着いてリードし2失点にまとめた。「練習してきた成果を出せて良かった」。バットでも二塁打を含む2安打をマーク。稲木監督は「大きな収穫です」と拍手していた。
◆三島南のセンバツVTR 21世紀枠で初出場し、1回戦で昨秋中国4強の鳥取城北と対戦。2回に先制するも5回に失策が絡んで逆転され、2―6で敗れた。前田は3番・中堅で先発し、6回に右翼フェンス直撃の三塁打。8回にも左前に運んでチーム唯一のマルチ。9回にはマウンドに上がり3失点したが、自己最速の143キロを記録。
◆21年夏の静岡県シード校◇
校名 シード権
桐陽 7年ぶり
三島南 5年ぶり
加藤学園 2年ぶり
静岡 3年ぶり
藤枝明誠 4年ぶり
磐田東 4年ぶり
掛川西 3年ぶり
浜松工 2年ぶり
【注】20年は新型コロナウイルスの影響で代替大会となり、シードはなし