◆春季高校野球千葉県大会▽2回戦 日体大柏7×―0富里=8回コールド=(25日・柏の葉公園野球場)
キューバ人を父に持つ日体大柏の大型捕手、コッシーオ・アダム主将(3年)が、攻守にスケールの大きさを披露した。富里戦に「3番・捕手」で出場し、1打数無安打ながら敬遠を含む3四球を選んだ。187センチ、74キロの体をしなやかに使うプレーぶりに、ネット裏で視察した4球団のスカウトからは、高い将来性を評価する声が聞かれた。
スラリと伸びた長い手足を、もてあますことなく使いこなした。アダムはメジャーリーガーのように中腰で構え、3投手を巧みにリード。相手が盗塁を仕掛けてこなかったが、しなやかな腕の振りから繰り出される二塁送球は最速で1秒89をマークする。ベンチ入りは昨夏からとあって高校通算本塁打はまだ3本だが、細身の体には無限の可能性が詰まっている。
捕手転向を自ら志願した。高校入学時は内野手で、同校の伊藤太一監督(33)は大型遊撃手として育てようと思っていたという。だが1年の冬、「キャッチャーをやらせてください」と監督に直訴。「ショートで期待してるんだけど」という指揮官の言葉にも「考えて野球をやるのが好きなんです。キャッチャーとして試合を支配したいんです」。決して翻意することはなかった。
背番号12で初めてベンチ入りを果たした昨夏の代替大会では、二塁手として2試合、捕手として1試合先発出場。新チームとなった昨秋からは、満を持して捕手に専念すると同時に、主将に就任。もともとは優しい性格だが、ケンカ覚悟でチームメートに厳しい言葉を投げかける強さが身につき、たくましくチームをまとめ上げている。
モリーナ(カージナルス)、ペレス(ロイヤルズ)、グランダル(ホワイトソックス)―。独特の構えは、自らメジャーリーガーを研究して身につけた。「足の長いキャッチャーは、みんな構えが高かった。実際にやってみると、ブロッキングもスローイングもスムーズにいい形を作れるので、それを参考にしています」。中でも、自身と同じルーツを持つキューバ出身のグランダルがお気に入りだ。
中腰で構える捕手は、高校野球はもちろん、日本球界全体を見てもほとんどいない。それでも、伊藤監督ら同校の指導陣は個性を重視し、特に口出しはしていない。アダムも「自分のやりやすいようにやりなさいって言ってくれるんです」と感謝している。
生まれも育ちも東京・港区の高級住宅地、白金。学業成績も優秀なインテリ捕手は、日体大への進学を希望している。初めてプレーを目にした楽天・沖原スカウトは「肩も足もあって、バッティングも柔らかい。体ができてくればこれからもっとよくなっていく」と将来性を評価した。アダムも「大学を経てプロに行きたい。頭を使って試合を支配する、強肩強打のキャッチャーを目指してます」と目を輝かせた。