ブーメランとなって返ってきた大竹まことへの質問…芸歴50年の凄みと深みを感じた時間

「ゴールデンラジオ!」が15年目に突入する大竹まことは両手で「15」をつくって笑顔を見せた
「ゴールデンラジオ!」が15年目に突入する大竹まことは両手で「15」をつくって笑顔を見せた
リスナーからの贈り物を手に笑顔の大竹まこと
リスナーからの贈り物を手に笑顔の大竹まこと

 たった一つの問いかけで芸歴50年のベテランタレントのすごみと深みに触れてしまう―。そんな瞬間があった。

 20日、東京・浜松町の文化放送で行われた斉藤清人社長の定例会見。ゲストとして登場したのが、パーソナリティーを務める「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(月~金曜・午後1時)が今年5月7日で放送開始15年目を迎えるタレント・大竹まこと(71)だった。

 同局の顔的存在だった吉田照美さん(70)の「やる気MANMAN!」の後番組として2007年にスタートして以来の日々を「15年…。文化放送は(創立)70年ですか?私は足かけ18年近く、ここにお世話になっています。その間にはいろんなことがありました。開始4年たった時の東日本大震災とか。私事ですが、多少のスキャンダルも…」と振り返って笑わせた大竹。

 18年には腰椎分離症のため、スタジオに布団を敷いて放送するなどの苦難も乗り越えてきたことを振り返って、「腰痛に苦しみまして…。マイクの横に布団を敷いていただいて、地べたにはいつくばって、放送した時も4日間くらいありましたかね」と淡々と続けた。

 「小沢昭一さんが『なぜ、ラジオに出演するんですか?』と聞かれた時に『おあし(銭)のためです』とお答えになっていました。私もそう考えて、ここ何年かやってきましたけど、いろいろあって多少、考えが変わってきました。ラジオはこの先、どうなるのか分かりませんけど、今、聞いている方とラジオの関係は…」と言うと、唐突に「私は老いた猫を飼っていて、もうすぐ寿命なんですが、コロナになって、ずっとまとわりついて、私の首のところから入ろうとする。私の中に溶けようとしているんじゃないかと…」と飼い猫について話し始めた。

 そして、「番組をやっていると、視聴者の方は野良仕事の時、木にラジオをつけて聴いてくれていたり(医療従事者が)大変な手術の前後に聞いてくれていたりする。もはや、リスナーと近しい(距離)を通り越しているというか。そんな気がしてきて、泣くのも怒るのも笑うのもMCという立場じゃなくて、みんなと一緒に溶けるようにやったらどうなんだろうと何年か前から思ってます」と、心境を明かした。

 過去には女性タレントと本番中に取っ組み合いのケンカをしてキー局を20年近く出入り禁止になったり、アイドルの頭を自身の股間に押しつけたり、暴走タレントとして知られた大竹。この日もその持ち味通り、15年間で最も印象的だった、とても記事化不可能な下ネタを明かす場面もあったベテランの「溶けるように」というリスナーとの向き合い方に私は感銘を受けた。だから、手を挙げて質問していた。

 「腰椎分離症などさまざまな苦難を乗り越えてここまで続けられた原動力は?」―

 こちらを見てニコリと笑った大竹は「伊集院静さんの本の中にお父さんとお母さんの話が出てくるんですが、お父さんは家に物乞いが来ると『働かざる者食うべからず』と、どやしつけて懇々と説教されていたと。お母さんの方はお父さんの怒る間隙(かんげき)を縫って物乞いの人におにぎりを渡していたと。ある日、それでお父さんに烈火の如く怒られたという話なんです」とエピソードを披露した上で「私のラジオを聞いている方も高齢の方が多いと思うんですが、伊集院さんのお父様とお母様の教えはさすがだなと思って。働くのが私は苦ではありませんから、65歳以上になっても働けるなら働く。そして、お母様の教えであるように物乞いの方にも少しでも優しくできればという二つの思いがあります」と答えてくれた。

 枯淡の境地にも思えた淡々とした答えの中に、にじみ出る人への優しさとラジオへの愛を感じ取ったから、さらに聞いた。

 「コロナ禍でラジオ業界はイベントが次々と中止になるなど苦境にあります。この現状をラジオを愛する大竹さんはどう見ていますか?」―。

 この問いかけにトレードマークのメガネの奥の目をギラリと光らせた大竹は「ラジオだけじゃなく、テレビも、広く言えば、新聞も本も全部、それほど可能性のある方向には向かっていませんよね」ときっぱり。そう、言葉にこそしなかったが、その瞬間、私は「何、ひとごとのようにラジオのことを心配しているの?君のいる新聞業界はどうなの?」と聞かれた気がした。

 さらに「ああ、芸人さんも、舞台も(苦境は)そうですね。国はこれを大きく支える使命があるとは思うんですけど、ただ衰退していくものは衰退していくわけで…」と続けると、「私は局の人間でもないので任された仕事をやって、みんなに『つまらない。大竹、終われ』って言われたら終わるだけで、そこになんの問題もないんですけど、全体としては、ラジオは近しい関係のコミュニティーとしては残っていくと思う。それほど大きなうねりとはならないのは確かだけど、消えるかと言われると、それはないんじゃないかと思っています」と分析した。

 最後には「皆さんはメディアの方ですから、マスコミの今の状況、政治の状況は良くご理解していると思います。いろいろな所で、いろいろな声がちゃんとメディアを伝って庶民に届くようなメディアのあり方にしていけば…。それがとっても大事だと思って下されば、逆にラジオも本も残っていくのかなと思っています」と静かに続けた。

 おなじみの深みのある声で語られたラジオパーソナリティーならリスナー、新聞記者を生業(なりわい)とする私なら読者の、そんなさまざまな人の「いろいろな声」に、じっと耳を傾けることの大切さ。芸歴50年の超ベテランが教えてくれたのは、情報の受け手との「温かい距離感」だった。(記者コラム・中村 健吾)

「ゴールデンラジオ!」が15年目に突入する大竹まことは両手で「15」をつくって笑顔を見せた
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