【楽天】就任1年目・石井一久監督の“言葉のマジック”がもたらす影響力

楽天・石井一久GM兼監督
楽天・石井一久GM兼監督

 2月の沖縄・金武町キャンプ期間中。球場周辺を散歩していた石井一久監督(47)とばったり出くわし、雑談を交わす機会があった(もちろん、マスクは着用)。ほとんどがたわいもない話だったが、記者が「監督のコメント、いつも楽しみにしています」と言うと、「今年はいろいろと混ぜていこうと思っているので」との返事が。マスク越しにニヤリと笑っているのがわかった。

 時を少し遡った1月31日。8年ぶりに楽天に復帰した田中将が都内で入団会見を行った。右腕への思いを問われた石井監督は、「田中選手は特別な選手ではありますが、特別扱いはしないと決めています」と話しつつ、「まだ僕の方が勝っているのでマサヒロと偉そうに言っている。(田中将が)超えたら『ねえねえ、田中君』と言うようにしたい」と右腕の方をチラリ。日米通算勝利は田中将が177で、ヤクルトやドジャースなどで活躍した指揮官は182。この数字を踏まえて、ユーモアあふれるコメントで会場の笑いを誘った。

 キャンプで田中将が初のブルペン入りをした感想では「一番感じたのは(マウンドからホームベースまでの)18・44メートルの空気感。例えるなら闘牛士。闘牛士だと牛に向かう部分で、打者と対峙(たいじ)する時の独特な緊張感を練習の時から持ち合わせている特別な投手」と独特の言い回しで評した。

 記者は紙面の見出しになるような、インパクトの強いコメントを期待しがちだ。石井監督も報道陣の思惑が手に取るようにわかっているのだろう。就任1年目ながら、引退後も解説者や評論家として活動し、メディアとの関わり方を熟知しているからこそ、こちら側がワクワクするようなフレーズが飛び出す。

 試合前後の監督会見を仕切る村上修二広報は「石井監督の言葉には、オリジナリティーがあります。言葉のチョイス、クスッと笑わせる一言や、例え話も独特でメディアが使いやすいコメントを意識されていると思います。コメントにブレがないですし、一貫性がありますね」と証言。コロナ禍で取材活動が制限されている記者たちからも「助かるなあ」という声をよく聞く。

 “アメとムチ”を巧みに使い分けていると感じることも多々ある。4月1日のロッテ戦(ZOZO)では2回途中10失点でKOされた滝中に対して試合後、「十分に調整して、その間をしっかり与えている。先発として、最低限の踏ん張りを見せてほしいなと。後ろで守っている野手、ブルペンで毎日待機してくれるピッチャーにも、あの回を投げきれなかったのは失礼だなと思います」と、厳しい言葉を投げ掛けた。

 一方で、“投げっぱなし”にはしない。翌日の球場では自ら滝中の元へ歩み寄って、10分以上も話し込んだ。「制球に気をつけるだけでなくボールに気持ちを込めて投げることが大前提。精神論だけど」と珍しく「精神論」を説いた。効果はてきめんだった。

 未来のある右腕を信じて送り出した8日の西武戦(メットライフ)では、7回1安打無失点。見違える投球を披露した滝中に「攻めて気持ちの乗ったボールを投げてくれた」と惜しげもなく賛辞を送った。

 滝中だけではなく、2年連続で5勝に終わった則本昂には「今年駄目だったら、良い方向には進まない。そこは彼も十分承知の上でしっかりやってくれていると思う。このまま終わる投手じゃない」と奮起を求め、昨季から主将を務める茂木には「今年成績を出せれば、選手としての『格』が上がる。バチバチに期待しています。一流のステータスをつかむかどうか、彼にとっても大事なシーズンになる。そのプレッシャーをはねのけてくれる選手」と、あえてプレッシャーを与えている。指揮官の一言、一言に選手たちも「やってやろう!」と心を熱くしているはずだ。

 7日には石井政権初の単独首位に浮上したが「まだ船で言えば(千葉県の)浦安から習志野くらい(海路で約5キロ)までしかいってないので、まだまだだと思います」と例えて、シーズン序盤だということを強調した。“戦艦・石井”の「目的地」が気になり、後日、船の行き先を問うと、「え、今聞いておもしろいですか? だから目的地は言わないですけど」と、いたずらに笑った。

 周囲の心をワシづかみにする石井監督の“言葉のマジック”。チームにもたらす化学反応や石井節の数々を紙面を通して伝えていきたい。(記者コラム・長井 毅)

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