羽生結弦が来季へ刻んだ4回転半12本のトライ 衝撃音が伝えた挑戦の尊さ…担当記者が見た

スポーツ報知
エキシビションへ向けた練習で4回転半のジャンプに挑戦した羽生結弦(代表撮影)

フィギュアスケートの国別対抗戦に出場した羽生結弦(26)=ANA=が17日、18日のエキシビションに向けた練習で4回転半ジャンプ(クワッドアクセル)に挑んだ。12度挑戦し、回転が抜けたものを除いて6度全て転倒したが、早くも来季へ再スタート。2019年12月のGPファイナルの公式練習以来、日本では初となる公の場でのトライを、高木恵記者が「見た」。

  悔しそうだけど、楽しそうでもあった。羽生の一挙手一投足に、4回転アクセルに懸ける強い思いがあふれていた。45分間の練習の終了間際。リンク外周を滑りながら叫んだ。「決めようよ!」。自らを鼓舞して跳んだ最後のトライは転倒。天を仰ぎ、右足を叩いた。試合直後の疲れた体での日本初公開に、観客からは大きな拍手が送られた。

 16日のフリー後に来季の目標に掲げた「4回転半がそろった完成された演技」へ、早くも踏み出した。リンクインと同時に気迫をみなぎらせた。3分でジャージーを脱ぎ捨て、すぐに鮮やかな4回転を決めた。開始10分、アクセルの軌道を確認し始めたあたりで、心拍数は一気に上がる。「やるのか」。会場に緊張感が張り詰めた。羽生は、練習でジャンプのイメージを膨らませる際に、回転と同じ数を氷上でクルクルと回る。4回転と半分を回った。この日の“練習メニュー”のアナウンスだった。

 恐怖心を振り切り、高く舞った。空中で思い切り体を回転させた。転倒時のドスンという衝撃音に、観客から悲鳴が上がった。体を打ち付けては、何度だって立ち上がった。両膝をつき、額を氷に当てて悔しさをあらわにした。平昌五輪で連覇を果たした直後に「唯一のモチベーション」と言い切った。「4回転アクセルのために生きている」と口にしたこともあった。空中で回転が抜けたものを除いて6度全て転倒だったが、夢の大技に挑む姿に喜怒哀楽が詰まっていた。

 9度試みて3度転倒だったトリノは、直線的な助走からだったが、この日は違った。フリー「天と地と」に組み込むことを完全に想定していた。冒頭の4回転ループを跳ぶ場所で、プログラムの動きを取り入れながら踏み切った。3月の世界選手権後に「『天と地と』に入れたいという気持ちがある。この子を完成させたい」と言った。「あと8分の1回転」とは、同大会後に語った人類初の大技までの距離。トライ数は既に1000を超えているという。それほどまでに高い壁を前にしても、羽生の志がぶれることはない。目指す完成形は、曲に溶け込ませたクワッドアクセルだ。(高木 恵)

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