競泳人生に「悔いなしです」…清水咲子に花束を

女子200m平泳ぎ決勝で5位に終わった清水咲子はスタンドに手を振って応える
女子200m平泳ぎ決勝で5位に終わった清水咲子はスタンドに手を振って応える

◆競泳 日本選手権兼東京五輪代表選考会 最終日(10日、東京アクアティクスセンター)

 寄り道が好きじゃない。「私は普段からせっかちでパッパパッパと行動する。無駄なくいきたいタイプなんです。スーパーに行ってもあらかじめ決めたコーナー以外は見ない。家から駅までの時間が“●分”ってあったら“●分”以内に行きたい。最初の予定に入っていないと、寄り道もしない。それって寄り道じゃないですよね…アハハ」

 リオ五輪の400メートル個人メドレー代表・清水咲子(28)=ミキハウス=が、この日本選手権を区切りに、第一線を退く。“ラストレース”となった8日の200メートル平泳ぎ決勝は5位。「悔いなしです。この経験を今後の人生に活かすことが何倍も大事だと思ってます」。晴れやかに言った。

 トレードマークの笑顔が曇ったのは19年。日本選手権などで結果が出ず、世界水泳の代表から漏れた。「努力が実らないところまで来ちゃったんだ…もう終わりなのかな」。泳いでも泳いでも「水が当たってこない」と、もがいた。

 その夏。米アリゾナ州フェニックスに単身向かった。現地の中高生に混じって泳ぐ時間は悪くなかった。世界水泳に向けて高地合宿していた代表選手たちが、会いに来てくれた。それでも、晴れ間は見えなかった。

 「これだ、っていうしっくりくるものは、見つからなかった。私、何してるんだろうって。病んでましたね。絶対戻りたくない」

 救いの手を差し伸べてくれたのは、日本代表の平井伯昌ヘッドコーチだった。その冬のナショナル合宿に呼ばれたのだ。「ひとかきずつ、何かを感じながら泳ぎなさい。“間”が大事なんだよ」。「せっかちでパッパパッパ」な生活リズムを、「もっとゆっくりやってみたら?」と提案された。

 例えば食事。「私はビュッフェで並んでも冒険しない。これ何だろ? おいしいかな?っていうのをしなかった。他のみんなはするんです。料理を取るにも座るにも、時間がかかる。そういうのをちょっと見てみろ、と言われたんです」

 スタート、水のキャッチ、ターンの動作。速ければ速いほどいいように思えるが、焦るあまり、水や壁がくれるはずの力を「60%くらい」しかもらえていなかった。必要なのは、ほんのわずかな「間」だった。それをつくり出すため、陸の上から感覚を微調整したのだ。「1週間くらいすると、3、4か月悩んでいたのがちょっとずつよくなった」。400個メのタイムは、約1か月で4秒近くも戻った。

 昨秋、ブダペストで行われた国際リーグ(ISL)では、まさに獅子奮迅の働き。大会後、東京五輪までの限られた時間を平井コーチに委ねようと決めた。「やり残したことがないように考えたとき、行動するなら今だと思った」。一本道を愚直に歩んできた彼女が珍しく選んだ、分かれ道だった。

 日本選手権初日の400メートル個人メドレー。両親がくれたLINEを胸に泳いだ。「今日頑張ることもすごく大事。だけど、今日まで頑張ってきた私をすごく褒めてあげたい、と」。最後の最後に、17歳の谷川亜華葉に差し切られての3位。0秒21差で、東京五輪の夢は指先からこぼれ落ちた。

 「支えてくれた人たちに、どんな形でも感謝を伝えたかった。今日という日は本当、精一杯。若い子たちもすごく頑張っているし、私が退く一つの理由になった」

 涙があふれ、それでも笑顔を作り、目線を上げた。ライバルであり、最後の数か月はチームメートとして過ごした大橋悠依への思いを問われた。

 「私が今日まで来られたのは、彼女がいてくれたおかげ。できることなら彼女に大きな花束を贈りたい」

 「サッコさんが…」「サッコさんに…」。何度、仲間の口からその愛称を聞いたことか。去りゆく“サッコさん”にも花束を。彼女はプールサイドにある陽だまりのような存在だった。(太田 倫)

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