◆第81回桜花賞・G1(4月11日、阪神競馬場・芝1600メートル)
母と娘が織りなすロマンを誰よりもかみ締めている。アカイトリノムスメを担当する国枝厩舎の福田好訓(よしのり)助手は、母アパパネも現役時代に任されていた。「うれしいですよ、もちろん。顔はきょうだいのなかで一番そっくりで人懐っこい」。史上3頭目の牝馬3冠に輝いた偉大な母の娘で挑む晴れ舞台へ、静かに喜びを表した。
2歳時に阪神JFを制してG1馬となった母は、完成度が高く力強いタイプだった。3歳春時点での成長度の差はあるが、背中越しに伝わってくる素質の高さは確かだ。「まだ全体的に緩いですが、いいバネをしている。すごく背中がいいです。この子の方は伸びしろがあると思う」と、母を知るからこその言葉は深い。
中学時代に競馬好きの友人がいたことがきっかけで、馬の世界に興味を持った。「オグリキャップのラストラン(90年有馬記念)が中学3年の時で、そこから始まっていますね」。JRA競馬学校厩務員課程を経て、97年7月から国枝厩舎一筋のホースマン。「馬に対して優しいし、女馬を扱うのに向いている」と、国枝調教師の信頼は厚い。
一般的に、牝馬の調教は気持ちのコントロールがカギになると言われる。「お母さんはどっしりしているイメージでしたが、娘の方がおてんば。このきょうだいは気が強い血統なので、へそを曲げたり、つらくならないように」と、桜花賞を当然のように1番人気で制した母を通して学んだ経験を娘に生かす。母が歩んだ牝馬3冠ロードを、その娘とともに追いかけていく。(坂本 達洋)
◆福田 好訓(ふくだ・よしのり)1975年6月9日、福島県生まれ。45歳。高校卒業後、牧場勤務などを経て、97年7月から国枝栄厩舎で厩務員、調教助手。