大林宣彦監督の「最後のミューズ」吉田玲が監督の故郷で考えたこと

大林宣彦監督の”尾道三部作”の一つ、「転校生」の舞台となった御袖天満宮を訪れた吉田玲
大林宣彦監督の”尾道三部作”の一つ、「転校生」の舞台となった御袖天満宮を訪れた吉田玲

 「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の「尾道三部作」などで知られる映画監督の大林宣彦監督が亡くなってから、10日で1年を迎える。大林監督といえば、作品を通じて出演女優の新たな魅力を引き出してきたことで知られるが、遺作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」でヒロインに抜てきしたのが、新人の吉田玲(19)。2月末、「最後のミューズ(女神)」の姿は大林監督の故郷である広島・尾道にあった。

 「大林監督追悼」として開催された尾道映画祭で、吉田は開会式のセレモニーやトークイベントなどに”女優代表”として出席。新型コロナウイルスのため、他のゲストがリモートで参加する中、会場で孤軍奮闘した。「海辺―」で共演した女優・常盤貴子からは中継の向こう側から「玲ちゃんに会場は任せた」と声を掛けられ、緊張しながらも大役を務め上げた。

 「尾道は撮影で訪れた2018年以来でしたが、『やって来た』というよりも『ただいま』という気持ちでした。当時のスタッフさんたちも温かく迎えてくれたのもうれしかった」と振り返った吉田。周囲の支えが力になったのはもちろんだが、撮影中に臨機応変な対応を鍛えられたことも生きていたのではないだろうか。

 大林監督は自ら脚本を書き、映画の完成形を頭の中に描いていたことから、その場の状況で内容の追加や変更をすることでも知られた。「私は他の現場を知らなかったので、大林監督のやり方が『セオリー』だと思っていたんです。セリフや歌う時の振り付け、フォーメーションまで変わっても『そういうものなのかな』と。それが普通じゃないことは、他のキャストの方から聞いて初めて知りました」。他の撮影現場での”非常識”を大林組で常識として、新人でありながら走り切った吉田は、女優としての大きな武器を手に入れた。

 吉田にとって、大林監督は「すごく愛にあふれた方だった」という。「毎日、撮影に入る時は握手から始まって、終わる時には必ずハグをしてくれました。その時のやさしさの感触は、今でも私の中に残っています」。尾道を訪れて空気を感じることで、その思いを改めてかみしめた。

 昨年の高校卒業後、当初はすぐに東京に出て女優業にまい進する予定だったが、新型コロナの影響などで現在も故郷の山口県で生活し、上京のチャンスを模索している。「今でも、『本当に選ばれたのが私で良かったのかな…』と思うこともあるけれど、とにかくこれから頑張らないとダメ。それだけは間違いないですから」。「映像の魔術師」と称された大林監督の目は間違い無いはず。今後の女優としての活躍が、その「答え」となっていくはずだ。(高柳 哲人)

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