障害歴代最多勝までM4 熊沢騎手のカッコ良すぎる一言

歴代1位の障害勝利254勝が目前に迫る熊沢重文騎手
歴代1位の障害勝利254勝が目前に迫る熊沢重文騎手

 昭和、平成、令和と戦い抜いてきた熊沢重文騎手(53)。現在、障害で歴代2位の251勝を挙げ、星野忍さんの254勝が目前に迫る。「記録が近づいていることを励みに頑張ってきた。とても光栄。ちょっとでも早く達成したい」と更新を目指し、デビュー36年目の大ベテランは奮闘を続けている。

 平地でも793勝を挙げており、通算1044勝のレジェンド。同期に横山典弘騎手、松永幹夫現調教師がいる。障害と平地の二刀流で知られるが、不屈の闘志で何度も大けがを乗り越えてきた。

 18年の春には左多発ろっ骨骨折、左鎖骨骨折から復帰。脾臓(ひぞう)が4つに割れたという、聞いただけで寒けがするようなケガでも、「この仕事をしていたら、ろっ骨なんてしょっちゅう折れるから骨折のうちに入らない。痛いと思えば痛い。そう思わなければ痛くない」と笑う。いや、壮絶な痛みだったと思う。それでも過酷なリハビリに絶え、また帰ってきた姿に多くの後輩ジョッキーが勇気づけられた。

 失礼ながら、「何歳まで現役を続けたいですか?」と質問。何年か前にも聞いたが、その時と答えは同じで、「分からない。まだ引退は全然、考えられない」。続けて「いけるところまで。乗れる限りは乗り続けたい」と返ってきた。

 障害レースを盛り上げるには、まだまだ熊沢騎手の存在が必要だ。「障害はマイナーなジャンルなので、僕が頑張って、若い子も頑張って。それで注目してもらえたらいいなと、いつも思っている」との言葉を聞いて、障害戦を応援してきた続けてきた私はうれしくなった。

 熊沢騎手といえば、ダイユウサクとのコンビを思い出すファンは多いと思う。91年の有馬記念で15頭立てのブービー人気、単勝137・9倍の人気薄を勝利に導き、今なお語り継がれる大波乱となった。単勝1・7倍のメジロマックイーンを振り切り、ゴールの瞬間は「あっ、勝っちゃったんだ…」と騎手自身も信じられない思いだったという。

 中山大障害と有馬記念の両方を制した騎手は伊藤竹男さん、加賀武見さんを含めて3人だけ。99年に障害でのグレード制が導入されて以降では、熊沢騎手は平地G1、障害G1の両方を勝った初めてのジョッキーになった(後に柴田大知も達成)。二刀流の大記録のはずだが、本人は「そんなのを目指すバカは今はいない。普通はそんなことを目指さないよ」とサラリと言ってのける。

 大きな危険と隣り合わせの障害で、その大変さを知っているからこそ出る言葉。歴史的な偉業を達成しているのに、自身を「バカ」と謙遜して言ってしまうところを、とてもカッコ良く感じた。周囲は誰もバカとは思わず、ただただスゴいと敬服している。熊沢騎手のように、平地と障害の両方のG1を勝つジョッキーがまた新たに出てくることを願う。(中央競馬担当・内尾 篤嗣)

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