「あの頃、夢と大山康晴全集をリュックサックに詰めて」-山根ことみ女流二段インタビュー(上)

スポーツ報知
春の日差しの下で穏やかな表情を見せた山根ことみ女流二段(カメラ・矢口 亨)

 将棋の山根ことみ女流二段(23)が里見香奈女流王位(29)=女流名人、清麗、倉敷藤花=に挑戦する第32期女流王位戦五番勝負が4月27日に開幕する。

 初めてのタイトル戦で第一人者に挑む新鋭に聞いた。(聞き手・北野 新太/カメラ・矢口 亨)

 ―五番勝負開幕まで一か月を切りました。

 「ドキドキしますけど、他の対局が毎週のようにあるので一局ごとにしっかり準備して臨んでいます。一局を大切にすることがタイトル戦の準備にもつながっていくんじゃないかな、という思いもあります。里見さんの対策も大切ですけど、(持ち時間各)4時間の将棋は初めてなので体力をつけておかなきゃと思って毎日筋トレをしています。ヨガ教室にも入会してみました(笑)」

 ―現在の女流七大タイトルは里見女流四冠と西山朋佳女流三冠=女王、女流王座、女流王将=の2人が独占しています。他にもトップグループを形成しているのは、過去10年くらいにわたって活躍している人が多い。若手が割って入っていくのは並大抵のことじゃないです。

 「挑戦する方も含めて同じメンバーが続いていたので、私が入ることは正直、私自身が想像していなかったです。でも、だからこそ新しい風を吹かすことができたらと思います」

 ―実力者の伊藤沙恵女流三段と戦った挑戦者決定戦は192手の激闘でした。二転三転の展開だった終盤の指し手には、勝つことへの情熱が今までにはないくらい明確に現れていたようにも感じました。

 「緊張せずにいつも通り臨めましたけど、中盤あたりから自信が無くてずっと(形勢は)悪いと思っていたので、どこで逆転したのかは分からないです。いつもなら心が折れてしまうところもあったんですけど、何とか粘ろうと思った気持ちが良かったのかなと思います」

 ―里見女流王位はどのような存在でしょうか。過去2戦2敗です。

 「一言で言うと…すごく強い人(笑)。過去2局も自分の力は全然及ばなかったんです。まず、どのくらい自分が成長しているか、どれくらい差を縮めているかを示したいです。とても強い方で、大きな壁ですけど、いつかは乗り越えないとタイトルはずっと取れないので」

 ―「タイトルを取る」と明確に口に出せる若手は少ないと思います。ある種の覚悟がないと言えない。

 「棋士の務めって、いろいろあると思うんです。もちろん普及面はとても大切で私も一生懸命やっていきたいと思っていますけど、どうしても話すのが苦手で(番組出演時などは)緊張で胃が痛くなるくらいなので、自分がもっとやるべきことは将棋であり対局なんだ、と最近改めて思うようになったからなのかもしれないです」

 ―今期は挑戦権獲得のみならず、女流棋士歴代3位タイの公式戦17連勝を記録したり、飛躍の一年になりました(42戦31勝11敗、勝率・738。全女流棋士で対局数1位、勝数1位、勝率3位、連勝数1位)。理由をどのように見ているのでしょうか。

 「私は詰将棋しかせず、一冊の定跡本を読み切らないような状態で女流棋士になっちゃったんです。他の人はもっと基礎があるのに…。でも、だからこそ何色にも染まれる伸びしろはあるんじゃないかなと思って。あまりに未完成なので、やるべきことにひとつずつ取り組んでいます。まだ将棋の0・00001%も分かっていないと思うので。周りには、どうしたら強くなれるのかが分からなくなって壁に当たっている方もいらっしゃると思うんですけど、私の場合はやるべきことは見えています。やらなくちゃいけないことがたくさんあることは、きっと良いことですよね。17連勝もできたのはなんでかよく分からないですけど…」

 ―研究において新しく取り組んだことなどもあるのでしょうか。

 「コロナ禍になって時間ができて、頭の中だけで何十手も読み進める訓練をしたのがよかったのかもしれないです。20~30手先まで考えるイメージでしょうか」

 ―さすがは詰将棋の達人として恐れられる人。

 「いえいえいえいえ! 全然です! でも詰将棋も手数が多ければ難しいということではないんです。100手以上の作品は法則性が生まれてくることが多いので、本当に難しいのは30~50手くらいのものだったりします」

 ―ずっと振り飛車党でしたけど、近年は居飛車で雁木(がんぎ)を連採したり、芸域を広げている。

 「未知なるものに挑戦して、乗り越えたら強くなると思えるのは楽しいです。ひとつひとつクリアしていけるような。他の女流棋士の皆さんにとっては基本であるようなことでも、私には新しい道だったりするので」

 ―五番勝負では和装をお考えなのでしょうか。

 「悩んだんですけど、まだ着付けができなくて、すぐに覚えられる自信もないので今回はやめようかなと思っています。慣れていない舞台で慣れないことをするよりも、せめて慣れた状態で戦いたいなと」

山根ことみインタビュー(下)に続く

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