マラソン元日本記録保持者・藤田敦史さん、地元で聖火ランナー「もう一度、福島に目を向けて」

聖火リレーへの思いを語った駒大・藤田敦史ヘッドコーチ
聖火リレーへの思いを語った駒大・藤田敦史ヘッドコーチ

 男子マラソン元日本記録保持者の藤田敦史さん(44)=駒大ヘッドコーチ=は、福島・東村(現白河市)出身で、27日に聖火ランナーとして地元を駆ける。東日本大震災から10年という節目の年に担う大役。福島への恩返しとともに、指導する学生やまな娘へ現役時代と変わらない熱い走りを届ける。(取材・構成=太田 涼)

 名ランナーが聖火を手に、地元・福島の風を切って走る。2000年福岡国際マラソンでの日本新樹立(当時)や2度の世界陸上出場など輝かしい経歴の裏で、五輪とは縁のなかった藤田さん。現在は、今年の箱根駅伝で劇的な逆転優勝を果たした母校・駒大でヘッドコーチを務めている。

 「指導者という立場である以上、自分の思いだけなら参加しなかったでしょう。ずっと支えてくださっている地元・白河市からのオファーや、妻(裕子さん)からも『二度とないこと』と背中を押してもらって、決断しました」

 19年12月に長女・あかりちゃんが誕生。生まれたばかりのまな娘に父の雄姿を―。しかし、昨年3月に五輪の1年延期が決定。聖火リレーも先延ばしとなった。

 「仕方ない、というか複雑でした。地元が喜んでいないなら、やるべきではない。育てていただいた以上、恩返ししたいですから。だから、東日本大震災から10年という節目の年にできるというのは不思議。もう一度、福島に目を向けてほしい。世界中にそんなメッセージを届けられるような走りをしたいと思います」

 福島出身で共に“ダブルあつし”と呼ばれた08年北京五輪マラソン代表の佐藤敦之さん(42)らの協力もあり、震災直後には千葉県内でチャリティークリニックを開催。白河市でも15年からランニング教室を行っている。

 「福島の中でも、被害状況って全然違う。県の中でもそうなのだから、日本や世界で見たら、やはり温度差みたいなものもあると思うんです。まだ闘っている人がいる。風化させないために、自分にできることをするつもりです」

 マラソンという孤高の競技だからこそ、周囲の応援が身に染みた。現役を退いて、改めて実感している。

 「現役時代は白河市長をはじめ、多くの地元の方が応援に来てくれました。自分のためだけじゃ走れないんです。娘の名前(あかり)も『誰かのために、自分が光って柔らかく照らしてほしい』という思いを込めました。名づけた以上、自分もそんな背中を見せられる父でありたいです」

 ◆駒大後輩で五輪マラソン出場の中村へ「流れ絶やさず」

 現在は指導者の藤田さんは、学生たちに向けて「人間、1人では何もできない。支えられてこその人生であることに気づいてほしい。そんな感謝の気持ちを感じてもらえたら」と熱い思いを明かした。駒大は箱根駅伝で13年ぶりに優勝し、今夏は中村匠吾(28)=富士通=がOB初の五輪マラソン選手として出場。「ものすごくいい流れが来ている。それを絶やさずにつなぐことも自分の役目」。聖火ランナーとして、後輩へ見えないタスキを渡す。

 ◆藤田 敦史(ふじた・あつし)1976年11月6日、福島・東村(現白河市)生まれ。44歳。清陵情報高から駒大に進み、4年連続で箱根駅伝に出場。99年に富士通へ入社。2000年の福岡国際マラソンを2時間6分51秒で制し、当時の日本新記録を樹立。世界陸上は99年セビリア大会6位、01年エドモントン大会12位。13年に引退し、15年4月から母校・駒大でコーチ就任。

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