業界唯一の社会人チームJPアセット証券 投げても走っても証券マンたちが“株上げる”

プロ入りを目指すエース左腕・金田泰成投手
プロ入りを目指すエース左腕・金田泰成投手

 社会人野球のJPアセット証券(東京)は証券業界で唯一の企業チームとして2019年に創部し、昨年から公式戦に参戦。全部員が「証券外務員一種」の資格を持ち、勝利を目指す野球と変わらぬ情熱で株式投資の営業マンとして活動している。「仕事100% 野球100%」をモットーに、完全燃焼の日々を送る選手の姿に迫った。(浜木 俊介)

 グラウンドで白球を追い、出社すれば株価情報を追い続ける。JPアセット証券の選手は、いつも“瞬間の勝負”と向き合っている。

 業務内容は証券投資の勧誘。新型コロナウイルスの影響もあって、現在は電話でのセールスが中心だ。全社員53人のうち、野球部員は27人。営業の戦力として会社に貢献することが求められている。

  • 営業成績が優秀な金田は同期でただひとり「主任」の肩書を持つ
  • 営業成績が優秀な金田は同期でただひとり「主任」の肩書を持つ

 昨年度入社のエース左腕・金田泰成投手(23=上武大)は営業成績が優秀で、同期でただ一人「主任」の肩書を持つ。「お薦めした銘柄の株価が上がった時は、めちゃくちゃうれしいです。練習の合間にも、みな株価を確認しています。気になって仕方がないんです」

 かつて近鉄、広島、ヤクルトでプレーした野林大樹監督(51)は話す。「仕事も野球もやる。それが方針です。野球だけだと会社はマイナス。皆で稼ぐんだよ、と。大手の企業チームとは違う形のモデルになれば、と思っています」

 入社が決まると、まず証券外務員一種の資格を得るための、ぶ厚い問題集を手渡される。合格率は約60%。金田がパスしたのは2回目だったという。今年度の新入部員は、12人のうち10人が既に資格を取得した。「たいしたものです」と野林監督は意識の高さに目を細める。

 東京都は、都市対抗野球で優勝経験を持つJR東日本、NTT東日本をはじめ、セガサミー、鷺宮製作所、東京ガス、明治安田生命と強豪の企業チームがそろう。昨年の都市対抗野球東京都代表決定戦では、クラブチームを破って2次予選に進出したものの、1回戦はNTT東日本に0―10(8回コールド)、敗者復活戦も2―3で鷺宮製作所に敗れた。06年以降、都市対抗野球への出場を独占している前出の「6強」の壁は厚く、春秋の企業大会でも勝利することはできなかった。

 ゼロからチームをつくり、ほとんどの部員が25歳以下。大学野球のスターがいるわけでもない。野林監督は、仕事で得た自信を野球につなげることが「6強」を倒す道だと考えている。「営業は難しい。保険と違い、株はやらなくていいものですから。そこを必死になって契約を取ってくる。150キロのボールを打つのと一緒で、難しいことができているわけです。『俺たちは違うんだ』という自負が、彼らの支えになると思っています。野球部員を含む社員全員が『同じ釜の飯を食う』という仲間意識があります」

  • 主将の大内は武器の俊足を生かしてチームを引っ張る
  • 主将の大内は武器の俊足を生かしてチームを引っ張る

 予選で涙をのんだ昨年の都市対抗野球だが、上武大で金田と同期だった大内信之介内野手(23)が活躍を認められ、セガサミーの補強選手として本大会に出場。50メートル5秒8の俊足を武器に2番・二塁で4強入りに貢献し、優秀選手にも選ばれた。

 上武大ではレギュラーでなく、4年の春シーズンが終了した時点で社会人チームからの声かけは皆無だった。「正直、軟式やクラブチーム。あるいは、野球をやめて一般企業への就職も考えていました」と大内は振り返る。それでも、野林監督と同期の上武大・谷口英規監督(51)が新興チームの力になれる人材として推薦し、今ではプロのスカウトからも注目される存在になっている。

  • 採用してくれた会社やお客様にも感謝する大内信之介内野手
  • 採用してくれた会社やお客様にも感謝する大内信之介内野手

 大内は「大手に行く力がなかった自分を採用してくれた会社に対しても、応援してもらっているお客様にも感謝しています。今年はキャプテンになりましたし、自分が率先して足を使うチームをつくっていきたい」と新シーズンへの意気込みを語った。

 都市対抗野球での大内の活躍に強い刺激を受けたのが金田だ。「当然うれしかったのですが、悔しさの方が大きかったです。自分がチームを勝たせることができなかったのも、補強選手に選ばれなかったのも、大事な一球をしっかり投げきれなかったから。誰もが認める絶対的存在になって、秋にはNPBに行けるように…」。こちらも大手企業チームとは縁がなかったものの、谷口、野林両監督に素質、人間性を評価されたことで夢がつながった一人だ。

 21日に開幕する予定だった東京都企業春季大会は、雨で中止になった。初戦の相手はセガサミー。仕事と野球の両立を求めるなかで、プロ入りを目指す選手もいる。社会人野球に新風を吹き込むJPアセット証券の進化が楽しみだ。

 ◆金田 泰成(かねた・たいせい)1997年4月30日、群馬県生まれ。23歳。前橋工から上武大。170センチ、75キロ。左投左打。最速145キロ。

 ◆大内 信之介(おおうち・しんのすけ)1997年10月30日、静岡県生まれ。23歳。東大阪大柏原高から上武大。168センチ、68キロ。右投左打。50メートル走5秒8。

 ◆野林 大樹(のばやし・ひろき)1969年9月9日、東京都生まれ。51歳。内野手として日大三高から87年ドラフト2位で近鉄に入団。広島、近鉄、ヤクルトと移籍し、98年の引退までに59試合に出場し10安打。その後は成蹊大、駿河台大で監督。2019年7月にJPアセット証券の監督に就任。

 ◆JPアセット証券 2008年10月に設立。本社は東京・中央区。野球部は19年に創部し、企業チームとして日本野球連盟に登録。選手を会社の戦力として受け入れ、企業チームの新しいモデルとなることを目標にしている。プロ入りできる選手を育成する一方、金融マンとしてのセカンドキャリアの道を開いてもらおうと、全員に証券外務員一種の資格を持つことを義務づけている。社会貢献を含め顧客や地域、企業人、野球人に応援してもらえるよう努力している。

プロ入りを目指すエース左腕・金田泰成投手
営業成績が優秀な金田は同期でただひとり「主任」の肩書を持つ
主将の大内は武器の俊足を生かしてチームを引っ張る
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