【札幌】3・11生まれMF深井一希「多くの人に支えられて今の僕がいる」…東日本大震災から丸10年の特別な日に 

決定機でシュートの行方を見つめる札幌MF深井
決定機でシュートの行方を見つめる札幌MF深井

◆明治安田生命J1リーグ 第3節 広島2―1札幌(10日・エディオンスタジアム広島)

 0―2の前半35分、この日最大と言える決定機を逃すと、J1北海道コンサドーレ札幌MF深井一希(26)はボールの行方を確認し、天を仰いだ。右サイドからエリア内に侵入したMF金子拓郎(23)の低いクロスに、体を投げ出しながら左足を合わせたが、GK大迫の好セーブに阻まれた。「僕の決定機を含め、そういう所を突き詰めていけたら、結果は違ったかもしれない」。今季リーグ初先発で、J通算150試合出場。最終的に1―2で敗れた試合に、深井は悔しさをにじませた。

 特別な日に、サッカー選手としての生き様を表現したかった。試合翌日の3月11日が自身26度目のバースデー。ただ祝福されるだけだったはずの誕生日は11年、自分だけのものではなくなった。当時札幌下部組織に所属し、札幌拓北高に通っていた深井は、授業中に大震災が起こった。プロとなり、繰り返されてきた同じ質問。「人間として、サッカー選手として、宿命なのかな」。若かりし日にそうこぼしていた言葉は、年を追うごとに、いつしか強い自覚、モチベーションへと変わっていった。

 自身は13年にトップ昇格。今や背番号8を背負い、MF宮沢裕樹(31)の不在時にはキャプテンマークも巻くほど不可欠な存在となった。それでも、全てが順風満帆だったわけではない。13年終盤に左膝前十字じん帯断裂の重傷を負い、14年には復帰から1か月余りで右膝前十字じん帯を断裂した。その他にも、数え切れぬほどの大けが、手術を経験し、そのたび乗り越えてきた。現役続行を諦めかけたときには、いつも周りに励まし、勇気づけてくれる人たちがいた。「あれだけ大けがをしてきても、こうしてサッカーができている。多くの人に支えられて、今の僕がいる」。広島戦後に答えてくれたその言葉は、人一倍重いものだ。

 サッカーと震災を同じレベルで語ることは決してできないだろう。それでも、誰より痛みを知る人間ゆえの言葉と姿は、記者はもちろん、観ている人たちにも響くはずだ。昨年末には入籍し、守るべき存在も増えた。「3月11日に多くの人が犠牲になった。やりたかったこと、やり残したこともあったはず。だからこそ、その日に生まれた僕は、亡くなってしまった方々の分まで、生きて。これからも色んな困難は起こるはず。一人の人間として、サッカー選手として、困っている人や仲間がいたら、助けられる存在でありたい」。後半途中に退くまで、この日も縦横無尽に走り、熱い思いを表現し続けた。そんな人思い、チーム思いの背番号8がいる限り、札幌の未来も明るいはずだ。(川上 大志)

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