新日を救う「強いヤツがベルトを巻けばいいだけ」というオカダ・カズチカの言葉…2冠統一で混乱の最強団体が進むべき未来

4日の「旗揚げ記念日」大会のリングでNJC初戦の相手・鷹木信悟相手に躍動。完全復活を誓ったオカダ・カズチカ(右=カメラ・清水 武)
4日の「旗揚げ記念日」大会のリングでNJC初戦の相手・鷹木信悟相手に躍動。完全復活を誓ったオカダ・カズチカ(右=カメラ・清水 武)
4日の2冠戦でエル・デスペラードに快勝。初代IWGP世界ヘビー級王者となった飯伏幸太
4日の2冠戦でエル・デスペラードに快勝。初代IWGP世界ヘビー級王者となった飯伏幸太

 6日に49年目の旗揚げ記念日を迎えた新日本プロレスを包む空気が今、確かに変わりつつある。

 セコンドの凶器を持っての介入に金的攻撃、大事な場面でのレフェリーの失神などダーティーで理不尽な戦いの横行に加え、ファンの声を置き去りにした形で進んだIWGPヘビー級王座とIWGPインターコンチネンタル(IC)王座の統一問題。一部の試合内容と新タイトル誕生の過程に不満の声が広がっていた日本最大、最強の団体が今、変化の兆しを見せ始めた。

 1972年3月6日に創始者のアントニオ猪木氏(78)が東京・大田区体育館(当時)で旗揚げ大会を開いてから49年目の今月4日、東京・日本武道館で行われた「旗揚げ記念日」大会。メインイベントでIWGPジュニア王者のエル・デスペラード(37)とIWGPヘビー、ICの2冠を賭けて激突。階級を超えた20分36秒の激闘の末、快勝した2冠王・飯伏幸太(38)がリング上で叫んだ。

 「絶対にこのベルトを統一して、その先に行きます。本当に、本当に、僕はこのベルトを一つにして、もっとすごい世界一のベルトにしたいと思います」―。

 この勝利で新設のIWGP世界ヘビー級初代王者に認定された飯伏。1日、オンラインで行われた会見で菅林直樹会長が「IWGPヘビー王座とIC王座を統一したIWGP世界ヘビー級王座を新設。ベルトも新調致します」と明言。2つのタイトルを統一、両王座の歴史を継承した最強タイトルの新設を発表してから4日目のことだった。

 2月28日の大阪城ホール大会で内藤哲也(38)を破り、IC王座3度目の防衛に成功した飯伏がかねてから希望していた2つのベルトを統一しての新王座を制定した今回の流れ。しかし、この動きに一部のファンからは不満の声が漏れた。

 IWGPヘビーは1987年6月に猪木氏が初代王者となって以来、34年間に渡って新日最強の証とされてきた。ICは11年5月、IWGPヘビーへの登竜門として創設されたベルトで中邑真輔(41)=現WWE=ら歴代王者の活躍により、その価値を高めてきた。

 昨年1月5日の東京ドーム大会で内藤が初めて2つのベルトの同時戴冠に成功。2冠王となってからは両王座をかけての激闘が展開されてきたが、大阪大会では2冠統一に反対する内藤が統一を目指す飯伏へのアンチテーゼとして、IC王座のみに挑戦も敗北。その行方が注目されてきた。

 ヘビー級の選手が巻けるシングルのベルトが4種類存在してきた新日では、海外色の濃いIWGP USヘビー級を除くと、IWGPヘビー、IC、NEVER無差別級の順番で価値があるとされてきた。

 猪木氏、藤波辰爾(67)、長州力(69)、武藤敬司(58)、蝶野正洋(57)、故・橋本真也氏ら名だたるスターたちが最強の証明として、その腰に巻いてきたIWGPヘビーのベルト。現在のスーパースターたち、オカダ・カズチカ(33)、棚橋弘至(44)、内藤も口をそろえて「プロレス界のベルトの頂点はIWGPヘビー級王座」と、その存在を大切にしてきた。

 しかし、飯伏が1・5東京ドーム大会での2冠初防衛後、「この二つのベルト、やっと重さが分かりました。ベルトの重さじゃなくて、価値の重さ。最高のベルト・ICのベルトと最強のベルト・IWGPヘビー級のベルト、僕は、これを一つにしたいと思います」と初めて明言。「僕は自分なりにそれぞれ(のベルトへの)思いが本当にある。これを統一した時に本当の夢がかなうんじゃないかと。統一した時にもっと、上のベルトになって、もっと、プロレスを広めていけたらと思います」と話したのだ。

 神と崇めてきた中邑が二番手のベルトではなく反骨精神の象徴として唯一無二の存在に育て上げたICは思い入れのあるベルト。「最強」のIWGPヘビー級と「最高」のICを一つにすること。すべては飯伏が常々、口にする「プロレスを広め、世界一の競技にしたい」という夢の実現のためだった。

 しかし、今回のIWGP世界ヘビー級王座誕生を速報した「スポーツ報知」の記事にはファンからの悲鳴に近い声が集まった。

 「34年間のIWGPヘビーの歴史を軽んじていないか」―

 「中邑らが大切にしてきたICの事実上(吸収されて)の消滅をDDT出身で1・4で2冠王になったばかりの飯伏の要望だけで決めてしまっていいのか」―

 「IWGPヘビーの創始者・猪木さんや12回の防衛記録を持つオカダの意見は聞かないのか」―

 果てには「IWGPはInternational Wrestling Grand Prixの略。タイトルに世界と付けると、言葉がダブるのではないか」という意見まで出た。

 しかし、「旗揚げ記念日」大会の大舞台での飯伏の快勝。そして明かした2冠統一への熱い決意をコロナ禍で声を出しての応援を禁じられた3026人の観客は大きな拍手で迎えた。

 ファンの“声”こそがすべてだ。武道館を一色に染めた拍手の響き。それは飯伏の命がけのファイトをしっかりと見届けた上で新たな王者、新日の顔として認めるものだった。

 ファン離れの恐れまであったダーティーファイト問題にも一つの答えが出た。

 声を挙げたのは、昨年1月5日の東京ドーム大会で内藤に敗れ、IWGP王座から陥落して以来、1年間に渡って、ベルトから遠ざかってきたオカダだった。

 2月27日の大阪城ホール大会。セコンド介入、金的攻撃の象徴的存在だったヒールユニット「バレットクラブ」のEVIL(33)を撃破した「レインメーカー」は、リング上で叫んだ。

 「すごい個人的なことを言わせてもらうと、スッキリしました。こういう状況の中、バレットクラブのクソみたいな戦いを皆さんにお見せしてしまって本当に申し訳ありません。でも、今日の戦いで皆さんもスッキリしていただけんじゃないかなと思います」と話すと、「でもさ。まだ、スッキリしてないのは分かっているんです。そろそろ行っていいよね? IWGPの戦いに行っていいよね?」と観客に問いかけた。

 「つまらない戦いが始まってしまったのは誰の責任? (去年、EVILに負けた)俺の責任でしょ。しっかり、ニュージャパンカップ(NJC)に優勝して、IWGPヘビーのベルトを獲って、また、新日本プロレスを盛り上げていきたいと思います」と絶叫したオカダ。

 バックステージでも「1対1のお客さんに伝わる戦いをして、マイクで締める。これがレスラーの一番の快感じゃないかと思います」と汗まみれの顔で振り返ると、「今までたくさん乱入とかされている僕が『クソつまらないな』と思っているんだから、お客さんにも相当なもの(ストレス)が伝わっていると思ったんで…。皆さんにスッキリしてもらう戦いがお見せできたと思う。こういう元気のない世の中だからこそ、しっかりとスカッとするような戦いを見せなきゃダメだなと思っていたんで、それができて良かったです」と笑顔で続けた。

 さらに「2冠戦、つまらないでしょ。誰も口に出さないのかな? IWGPがあるからこそ、誰も言えないんでしょ。何も統一だとかとか、そんなことじゃなく、強いヤツがベルトを巻けばいいんですよ。そんな単純なことなのに、違うことで戦って、それってプロレスなのって。普通に強い人がリング上で好き放題やればいいんじゃないのって僕はそう思います」と、持論を展開した。

 そして、新型コロナ禍の中の大会開催について、「ただでさえ不満がたまるような状況でプロレスでも不満がたまるようなことをしていてもしようがない。強い人がチャンピオンなんですよ。ファンの人も胸を張って明日も頑張ろうと思える試合をしていきたいと思います」と言い切ったオカダ。その言葉こそがプロレスというスポーツであり、エンターテインメントでもある唯一無二の存在の全てを語っていると私は思う。

 「強いヤツがベルトを巻き、チャンピオンなんだ」、「ファンが胸を張って明日も頑張ろうと思える試合を見せる」という言葉に象徴される、とても、とてもシンプルな戦いこそが、コロナ禍の今、新日が見せるべきものだろう。

 49年目の旗揚げ記念日大会で飯伏が初代IWGP世界ヘビー王者になったことについて、オカダは言った。

 「ただのプロレスが好きな33歳のおっさんから言わせてもらうと、神だ、神だと思っていた人間がとんだ邪神でしたね」と、飯伏の独善的にも見える姿勢をバッサリ斬ると、返す刀で「IWGP世界ヘビー級、クソだせえよ」とまで言い切った。

 そんなオカダが狙うのは、30選手が参加して開催中の春の最強シングル決定トーナメント「NJC」優勝と、その先に待つ4月4日、東京・両国国技館での飯伏の新王座への挑戦だ。

 新日は5月15日に横浜スタジアム、5月29日に東京ドームでそれぞれ大規模大会を開催することを発表。それぞれ「WRESTLE GRAND SLAM in YOKOHAMA STADIUM」、「WRESTLE GRAND SLAM in TOKYO DOME」として行われる両大会。3週間のスパンの間に団体初進出となる横浜スタジアムと今年3度目となる東京ドームの二大スタジアムで連続開催されるという新日にとって、非常に挑戦的な大会となる。

 もちろん、その中心にはIWGP世界ヘビー級王者・飯伏がいて、完全復活を狙うオカダがいる。今は古傷の右ひざの負傷で精彩を欠く内藤も、NEVER無差別級王者として復活気配の棚橋だっている。何よりもファンの気持ちを優先するスーパースターたちがリング上で相まみえる時、新日の新時代の幕が開く―。私は、そう確信している。(記者コラム・中村 健吾)

4日の「旗揚げ記念日」大会のリングでNJC初戦の相手・鷹木信悟相手に躍動。完全復活を誓ったオカダ・カズチカ(右=カメラ・清水 武)
4日の2冠戦でエル・デスペラードに快勝。初代IWGP世界ヘビー級王者となった飯伏幸太
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