東京五輪の前にパリ五輪の男子マラソン代表を占う 日本新の鈴木健吾、福岡国際優勝の吉田祐也が有力か 相沢晃も期待大

2月28日のびわ湖毎日マラソンで日本新記録をたたき出した鈴木健吾
2月28日のびわ湖毎日マラソンで日本新記録をたたき出した鈴木健吾
2時間4分56秒の日本新記録のタイム表示板を前に笑顔を見せる鈴木健吾
2時間4分56秒の日本新記録のタイム表示板を前に笑顔を見せる鈴木健吾

 びわ湖毎日マラソン(2月28日)が好記録ラッシュでわいた。鈴木健吾(25)=富士通=が2時間4分56秒の日本新記録で優勝。大迫傑(29)=ナイキ=が持っていた2時間5分29秒の従来の日本記録を33秒も更新した。

 マラソン2度目の土方英和(23)=ホンダ=は2時間6分26秒の日本歴代5位の好記録で2位。細谷恭平(25)=黒崎播磨=が日本歴代6位の2時間6分35秒で3位に続いた。

 プロランナーの川内優輝(33)=あいおいニッセイ同和損保=は2時間7分27秒で10位。2013年にソウル国際でマークした2時間8分14秒の自己ベストを8年ぶりに更新した。

 マラソン初挑戦の作田将希(24)=JR東日本=が2時間7分42秒で14位と健闘。藤原正和(当時中大、現中大監督)が2003年大会で記録した2時間8分12秒の初マラソン日本最高を更新した。2時間7分54秒で15位の足羽純実(26)=ホンダ=、2時間8分10秒で18位の山下一貴(23)=三菱重工=も従来の初マラソン日本最高を上回った。

 伝統のびわ湖毎日マラソンは今回が最後。絶好の気象条件に恵まれ、42人がサブテン(2時間10分切り)を果たした。そのうち40人が日本選手。日本男子マラソン界は大きな盛り上がりを見せた。

 前置きが長くなったが、ここで、東京五輪が行われる前に、2024年パリ五輪男子マラソン日本代表の争いを占いたい。パリ五輪は2024年7月26日から8月11日に開催。男子マラソンは最終日の開催が予定されている。

 8月のパリの平均最高気温は約27度、平均最低気温は約15度。東京(平均最高気温約31度、平均最低気温約23度)に比べると格段に低く、東京五輪のマラソン・競歩が行われる札幌(平均最高気温約26度、平均最低気温約19度)に近い。猛暑の戦いとなる可能性は低いが、それでも冬マラソンとは異なり、それなりの暑熱の対応力と対策は必要。選考レースの詳細はまだ決まっていないが、東京五輪と同様に、予選に当たるMGCシリーズと、代表選手を決定するMGCの2段階方式が取られる見込みだ。パリ五輪の気象条件に近い条件の時期のマラソンで、どれだけ力を発揮できるか。それは重要な要素になる。

 マラソンランナーのすごさは身を持って知っているつもりだ。鈴木健吾の日本記録は1キロ2分57秒65ペース(これは恐ろしいほどのスピードで、多くの読者の皆さまが中高生時代に経験した1500メートル持久走に換算すると4分26秒5になります)。私は中学から大学まで長距離走に取り組み、10年間、ほぼ毎日、練習を積んだが、1万メートルの生涯ベストは30分13秒(1キロ3分1秒3ペース)だった…。1キロ3分を切るペースで42・195キロを走り続けるランナーは“化け物”だ。そこに至る練習も過酷という言葉では言い表せない。彼らに最大限の敬意を表した上で、独断で大胆に「印」をつけさせていただく。

 ◎鈴木健吾(25)=富士通= アフリカ出身選手以外としては初めて2時間5分の壁を破った力は世界レベル。ラスト5キロ14分20秒台は圧巻。19年9月のMGCでも7位と一定の成績を残しており、冬マラソン以外でも力を発揮できるはず。母校・神奈川大の大後栄治監督いわく「神奈川大で見てきた約700人の選手の中で一番才能があり、一番努力ができる選手」。年齢的にも、まだ成長が期待できる。

 ○吉田祐也(23)=GMOインターネットグループ= 昨年12月の福岡国際マラソン優勝の実績は重い。母校・青学大の原晋監督いわく「青学大史上、最も練習をした選手。暑さにも強い」。大学卒業を区切りに競技の第一線を退く予定だったが、卒業を直前に翻意し、競技続行。内定辞退を受け入れた会社、競技続行を受け入れた現所属への感謝の思いは強く、競技に対し、確固たる覚悟を持つ。

 ▲相沢晃(23)=旭化成= 日本長距離界の“至宝”。1万メートルの日本記録保持者で東京五輪代表。パリ五輪にはマラソンで挑戦する意向を持つ。潜在能力は日本人トップクラス。東京五輪後、マラソン初挑戦が注目される。

 ▲服部勇馬(27)=トヨタ自動車= 東洋大時代からマラソンに取り組み、東京五輪代表の座をつかみ取った。常に謙虚で向上心を忘れない。マラソンランナーの鑑。2大会連続代表に向けて抜かりはない。

 ▲大迫傑(29)=ナイキ= オンリーワンにしてナンバーワン。マラソンの日本記録保持者の座は鈴木健吾に譲ったが、現在も3000メートルと5000メートルの日本記録保持者。スピードとスタミナを兼ね備え、日本長距離界のキングであることに変わりはない。

 △中村匠吾(28)=富士通= MGC優勝で証明した勝負強さは天下一品。2段、3段構えのスパートを仕掛けられるスタミナとスピードを持つ。3年後、まだまだ老け込む年齢ではない。

 △井上大仁(28)=三菱重工= 薄底のシューズで2時間6分台を記録した実績が光る。積極性は随一。レース展開がはまれば驚異的な記録、成績を残す可能性は十分にある。

 △土方英和(23)=ホンダ= マラソン2戦で好走。初挑戦で2時間9分30秒。2度目のマラソンでさらに大きく成長した。

 △細谷恭平(25)=黒崎窯業= びわ湖毎日では常に1キロ3分ペースでレースを進めた。ワンランク上がれば日本代表クラス。

 △村山紘太(28)=GMOインターネットグループ= 3月1日に旭化成から移籍。マラソン転向と日本記録更新に意欲を示す。1万メートル前日本記録保持者のスピードランナー。未知数の潜在能力を秘める。

 △小椋裕介(27)=ヤクルト= ハーフマラソン日本記録保持者。マラソンでも着実に経験を積み、成長している。

 △塩尻和也(24)=富士通= 16年リオ五輪に3000メートル障害で出場。マラソン未経験ながらロード適性あり。最近はやや勢いがないが、復調、そして、成長を期待。

 △市田孝(28)=旭化成= 2月にハーフマラソンで日本歴代4位の好記録。飛躍する可能性あり。

 △伊藤達彦(22)=ホンダ= ガッツと粘り強さは天下一品。マラソンでもライバル相沢晃と魂のデットヒートが期待される。

 △川瀬翔矢(22)=皇学館大= ハーフマラソン日本人学生歴代4位。今春から強豪ホンダに進む。大化けする可能性あり。

 △田沢廉(20)=駒大= 1万メートル日本人学生歴代4位。東京五輪は1万メートルで代表の可能性を秘める。マラソンに進出すれば期待大。

 △岸本大紀(20)=青学大= 前回の箱根駅伝2区で日本人1年生最高タイムをマーク。青学大・原監督曰く「潜在能力は計り知れない」。

 △林奎介(24)=GMOインターネットグループ= 2018年箱根駅伝MVP。数少ない「非ナイキ厚底シューズ派」。伸びしろは残っている。

 「大胆に占いたい」と前述しながらも18人の名前を挙げてしまった。他にも気になる選手もいる。読者の皆さんから「あの選手が入っていない」というツッコミもあるだろう。「誰がパリ五輪の男子マラソン代表になるか」という話題が盛り上がれば、それは日本男子マラソン界が充実している証であると思う。

 3年後のパリ五輪(東京と同様にコロナ禍の終息が大前提だが)。やはり、ケニア、エチオピアをはじめとした東アフリカ勢が中心となることは間違いない。東アフリカ勢の背中は、まだまだ遠い。しかし、高岡寿成さんが2002年に出した日本記録を16年破ることができず、サブテンランナーが希(まれ)だった一時の低迷期は確実に脱した。

 群雄割拠。多士済々。日本代表争いを勝ち抜いた3選手が、花の都パリで快走することを今から心待ちにしている。(記者コラム・竹内 達朗)

2月28日のびわ湖毎日マラソンで日本新記録をたたき出した鈴木健吾
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