【五輪の倫】渡辺一平VS佐藤翔馬 水の覇権争いが熱い

渡辺一平(右)と佐藤翔馬
渡辺一平(右)と佐藤翔馬

 ライバルがいる競技人生って結構、幸福だろうと思う。そいつのことをどうやって倒してやろうか、と思っていれば、モチベーションはキープ可能。孤高の存在であれば、敵は自分の内面にしか持ち得なくなる。ライバルは、勝手にでも外につくっておくに限る。

 かのラオウも「思えば、おれには強敵(とも)と呼べる男はトキしかいなかった」と、ライバルだらけのケンシロウにちょっとした嫉妬心をのぞかせていた。好敵手の存在がいかに成長につながるか。その真理を、身をもって知ったということなのだろう。

 日本を代表するライバルといえば、競泳の萩野と瀬戸。同い年で、幼少の頃からの競い合い、東京五輪への道のりに蹉跌(さてつ)があったことまで一緒だ。これだけ完璧で健全な関係は、他の競技を見渡してもなかなかない。

 2人に次ぐ新たなライバル関係としてヒートアップしてきたのが、200メートル平泳ぎの渡辺一平と佐藤翔馬である。

 対照的であればあるほど、戦いはまた味わい深い。193センチの一平に177センチの翔馬。早大を出た一平、慶応ボーイの翔馬。長いストロークが武器の一平に、小気味よいテンポの翔馬。風光明媚(めいび)な大分で伸び伸び育まれた一平に、東京・港区出身の翔馬…と劇画のように何もかも対照を成している。

 持ちタイムでは元世界記録保持者の一平がまだ上とはいえ、翔馬も泳ぐ度にその座を脅かす。昨年12月の日本選手権で一平が貫禄勝ちすれば、2月のジャパンオープンでは翔馬がやり返した。「2位での代表権なんて欲しくない」と一平がプライドをのぞかせれば、「4月の選考会でも7月の五輪でもいいタイムで優勝したい」と翔馬も爽やかに強気だ。熱を高めるには、言葉や哲学の激突は不可欠。こちらも大いに期待したいところなのである。

 ライバルという言葉のルーツは、小川の水を巡る争いから来ている。水の覇権を巡る戦いは、昔も今も熱い。

 ◆太田 倫(おおた・りん)1977年、青森県生まれ。43歳。横浜市大から2000年入社。紙面レイアウト担当などを経て、08年からプロ野球、18年から五輪担当となり、主に水泳競技、スケートボード、空手などを担当。

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