【オリックス】美技で流れを変える守備職人・安達了一

10年目を迎えた安達了一
10年目を迎えた安達了一

 プロ野球の春季キャンプは最終盤を迎えている。各球団で対外試合が増えてきて、アピールが必要な若手だけでなく、主力やベテラン組が実戦に名を連ねる段階に入ってきた。

 チーム生え抜きで10年目を迎えた安達了一内野手(33)は宮崎キャンプをB組で始動。新人らとの全体練習では背中で模範を示しつつ、午後からは個人練習で淡々と自らのメニューをこなしている。「順調には来ていますよ」と和らいだ表情に仕上がりの良さがにじんだ。

 内野の要、遊撃のレギュラー。記者が初めてオリックス担当になった昨シーズン、楽しみにしていたのが安達の守備だった。ファインプレーのような派手なプレーだけでなく、グラブさばき、球の持ち替えの速さ、送球の正確さ、捕球から走者へのタッチのスピード…。あらゆる面でレベルが高く、これぞプロという技術の高さで魅せてくれた。試合前練習では、ノールックでの背面トスを披露するなど遊び心も。「意識的にはしてますね。(ファンに)見られてるっていうのはあるので。ただ楽しんでもらうのもあるけど、試合でも使いたいなとは思ってるんですよ。なかなか、そういう打球がこないんですけどね」。今季観戦に訪れるファンには、ぜひ試合開始前からスタンバイして注目してもらいたい。

 2011年のドラフト1位で入団。上武大3年時に最高出塁率をマークするなどしてMVPとベストナインを受賞し、4年時には3冠王。東芝時代は広角に長打も打てる三拍子そろった社会人ナンバーワン内野手として高い評価を得て、プロの扉を開いた。しかし、甘くはなかったと振り返る。

 「プロに入ってからはあまり打てなくて、これは厳しいなと思いましたね」。1年目から50試合に出場したが、打率1割5分9厘で0本塁打。2年目から2018年までは6年連続で100試合以上出場を果たしたが、この間の最高打率は16年の打率2割7分3厘。2割台前半が続き、壁に当たっていた。

 ある時、発想を切り替えた。「守備をしっかりやろうと。守備は、やればうまくなると言われていたので。守備だけはしっかりやっていこうと決めて、そこからずっと続けました」。練習前の早出特守から全体練習終了後にまた特守。何時間もボールを追い続けた。「時間のある時には、とにかく守備練習を多くしましたね。それも基本練習ばかり。種類はいろいろとあるんですけど。いまも自主トレとかでやってますけど、とにかく基本ですね」

 苦い思い出がある。2016年6月28日の楽天戦(那覇)。二遊間を組んだ西野と2人で5失策を記録した。試合には勝ったが、今でも忘れられない屈辱のゲームだ。「すごく恥をかいて。それ以前にも、もちろんエラーはあったんですが。あの試合は特にね。そういうところから、やっぱり守備は大事だなと思いました」

 アマ時代の栄光にすがらず、守備を突き詰める断を下したのは「プロで生き残るためには、これしかないなって自分の中で思ったので」。さっぱりとしたトーンで言い切る。その選択が、限りなく前向きなものだったからだ。

 「1つのエラーで試合の流れが変わる。逆に好守でも変えられる。もちろん、打つことでも変えられるけど、毎回自分に打席が回ってくるわけじゃないし、打撃は10本中3本打って好打者とされる。守備は10割を目指せる。同じ流れを変えるとして確率的なことを考えたら、自分は守備の方をちゃんとやっておかないといけないなと思ったので。打つのは難しいですよ」。謙虚な言い回しだが、こだわってきたものへの誇りが垣間見えた。

 そんな名手は難病と向き合い、闘いながらプロ生活を送っている。16年1月に国が指定する難病「潰瘍性大腸炎」と診断された。安部晋三前首相が07年の第1次政権で辞任を余儀なくされた原因不明の病として知られ、いまだ完治への治療法はないとされる。その影響もあって17、18年シーズンは大きく成績を落としたが、昨季は球団の判断で主に木、土曜の試合を欠場する“週休2日制”で78試合に出場。ひとつの「形」ができたとはいえ、ジレンマがあるのも事実だ。

 「やっぱり規定打席に達してこそ、レギュラーというのはありますよね。でも、自分は体調のこともあるので。まあそれを言っても仕方がないので、いまできることをやるだけかなとは思ってます。でもやっぱり、体調が良かったら全試合出たい。出たいのは、やまやまなんですけどね」。もどかしい思いをのみ込み、消化して、今の立ち位置で全力を尽くしている。「無理をすると、やっぱり自分でも怖い。やりたくても、体調のことを考えたらそうもできないので。やりすぎてゼロになるのなら、80くらいをキープした方がと考えるというか」。同学年のT―岡田と並び、日本人野手最年長となったベテランは、チームの勝利のために最善の判断を続けている。

 チームを背負い、引っ張る立場にもなった33歳の名手に、野球少年へのアドバイスをもらった。守備を上達させるには―。「やっぱり基本ですよね。自分は少年時代は結構、壁当てをやっていましたよ。1人でもできるし。適当に投げて、自分の投げやすい態勢で取って、ということを意識しながら。すぐに握り替えして、何度も。応用では当てる場所を替えれば、跳ね返ってくるところも変わるし。壁の前でワンバウンドさせれば、高いボールにもなる」。ひたすら壁当てを続けていた安達少年は、いまや球界指折りのショートストップに成長した。打撃での貢献ももちろん期待しているが、持ち前の美技で勝利へと風向きを変えるシーンが、今季も何度も見られるはずだ。

(記者コラム=オリックス担当・宮崎 尚行)

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