【箱根への道】田村丈哉、箱根からランニング系ユーチューバー「たむじょー」になってみた

自身が初めて掲載された紙面を手に、決めポーズを見せるたむじょー(カメラ・太田 涼)
自身が初めて掲載された紙面を手に、決めポーズを見せるたむじょー(カメラ・太田 涼)

 箱根から世界へ―。1997年度生まれの同世代とは一線を画す分野で活躍するのが、ランニング系ユーチューバー「たむじょー」こと田村丈哉(23)だ。帝京大時代には憧れの箱根路を駆け抜け、実業団からスカウトの声がかかったほどの実力。持ち前の走力だけでなく、“笑いのセンス”や親しみやすい人柄が話題を呼び、第一線から引退した直後の昨年3月20日に開設した公式チャンネルは1年足らずで登録者数5万人を突破する人気ぶり。大躍進したこの1年の裏側と、今後追いかける夢に迫った。(取材・構成 太田 涼)

 箱根路を経験した「たむじょー」がこの1年、未知の世界に挑んだ。マラソン大会のゲストだけでなく、動画でも大活躍。ランニング系ユーチューバーの公式チャンネルは登録者数5万人を突破した。激動の日々を、どう感じたのだろうか。

 「やっていける自信はありましたが、ここまで反響があるとは思っていなくて。普通なら絶対会えなかった五輪選手の新谷(仁美)さん(積水化学)や瀬古(利彦)さん、増田(明美)さん。コラボできるなんていう発想がなかったので…最初はびびっていましたね」

 昨年3月20日からユーチューブでの活動を始めて3か月ほどはアルバイトと掛け持ちしていたが、今では同世代の大卒1年目ほどの収入を得られるようになった。ブレイクしたひとつのきっかけは昨春、同世代の中距離選手・田母神一喜(阿見AC)から「主催大会を一緒に盛り上げよう」と連絡をもらったことだった。

 「そこから、横田(真人)コーチ(TWOLAPS)とつながりもできて。それ以降、『合宿来いよ』とか『大会出ようぜ』って言ってもらえて、動画も配信できました。出会いがどんどんつながっていった感じで、感謝しかないですね」

 「たむじょー」の名前が世間に注目されたのは、実はユーチューブではなくインスタライブだったという。昨年のゴールデンウィークに、のちに東京五輪男子1万メートル日本代表となった同世代の大エース・相沢晃(旭化成)らとコラボしたことがきっかけになった。

 「すごいメンバーと話をする機会だったので、相方である撮影者とも話して『これは一世一代のチャンス』と。『こいつ何者?』というところから『たむじょーってなんかすごいんじゃね?』ってなって。終わってみたらフォロワーは1日1000人単位で増えてびっくりしました」

 大学時代に蓄えていたネタ帳には「エジプトで走る」などとも。だが、コロナ禍で断念せざるを得ない企画も多かった。

 「できないことよりも、やれることをやろう、と。もちろん、やりたい企画があってもできないことの方が多かったですけど、『たむじょー』を知ってもらうための期間にしようと思いました。家にいる時間が長くなり、ユーチューブを見てもらう機会も増えたので、なんとかチャンスだととらえてやってきましたね」

 1日1本、必ず動画をアップしているたむじょー。箱根を目指した経験から、継続することの大切さを学び、習慣化しているという。企画内容も多くの動画が「クスッ」と笑えるものだが、思い入れのあるものはどれなのだろうか。

 「一番は800メートルで横田コーチと真剣勝負したことですね。1分51秒60で走りましたが、0・09秒差で負けました。あれはもう、作ってもどうしてもできない動画。視聴者の方に緊張感だけじゃなく、本当の速さを伝えられた。『たむじょーの見方が変わった』と言ってくれる人が多かったですね。やばいやつなんだ、と思わせることができました」

 ランニング系ユーチューバーとしても、すでにトップクラスの地位を確立したが、これからをどう見据えているのか。決めぜりふと共に締めくくってくれた。

 「うまくいきすぎているな、とは思っていて。その反面、できていない企画もあるので、伸びしろはいっぱいあると思っています。母校・帝京大にもお邪魔したいし、海外にも行きたい。10年後には、競技場で漫才もしたい。でも、今はまず目の前のことに全力で取り組んで、たくさんの人に『ありがとう~ありがとう~』を伝えたいですね」

 ◆19年本紙特集が「僕のスタートなんです」

 【編集後記】 初めて「たむじょー」を取材したのは、2019年12月。箱根前の帝京大合同取材会だった。アンケートで多くの選手が希望進路を「実業団」や「公務員」などと記入する中、1人だけ「ユーチューバー」と書く変人(?)がいた。どうしても気になって取材して、“新聞紙面デビュー”となる記事を執筆した。

 たむじょーはとにかく面白くて、それでいて自然体。4年最後の箱根路は1区に登録されながら出番はなかったが、悔しさを心の内に秘めつつ、笑顔でチームを鼓舞する姿が印象的だった。その後も何度か一緒にランニングもして、交流は続いていた。

 かしこまった取材は久々だったが、当時の新聞記事を額に入れて、大事そうに持ってきてくれた。「これが僕のスタートなんです」と笑う姿が、うれしくも誇らしくもあった。たむじょーを世に放ってしまった責任を感じつつ、いつも動画を見てくださる皆さまには「ありがとう~ありがとう~」と私も頭を下げたい。(涼)

 〇…たむじょーは28日のびわ湖毎日マラソン(滋賀・皇子山陸上競技場発着)で、初マラソンにも挑戦する。左腓骨(ひこつ)筋けんしょう炎というけがを抱えながらの出走となるが「だいぶ痛みも治まったので、なんとか走れたら」と意欲。動画では質の高い練習をこなしているだけに、無事に走り切れば好記録も期待できそうだ。

 ◆田村 丈哉(たむら・じょうや)1997年4月2日、千葉・柏市生まれ。23歳。小学1年からゴルフを6年間続けたが「集中力が持たず」いたずらばかりしたため断念。小学4年時に見た箱根駅伝に憧れ陸上競技を始めた。千葉・市船橋高では3000メートル障害中心に取り組み、2年時の県新人で優勝。2016年に帝京大に進み、箱根は2年時に8区11位。自己記録は5000メートル13分58秒25、1万メートル28分48秒91。

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