19歳で引退に追い込まれた英国人DFの告白「8歳からのヘディング練習がなければ」

 8歳からプロクラブのユースでトレーニングを始め、今季からリーグ1(英3部リーグ)所属のピータブラの1軍に昇格していた19歳英国人DFボビー・コッピングがBBCのインタビューに応じ、昨年7月に突如としてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、即引退に追い込まれた経緯について語った。

 いつものヘディング練習を終えた直後のことだったという。コッピングは何の前触れもなく発作に襲われ、視力を失うと、右半身がしびれて動かなくなって、4日間の入院を強いられたという。退院時に”一度だけの偶発的な症状であってほしい”と願ったのは当然だったが、復帰戦で発作が再発。この時点で専門医の診察を受け、「トラウマ・トリガーリング・エピソーズ』=PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。

 「あっという間の出来事で、それが本当に恐ろしかった。最高のプレーができていて、絶好調でした。ところがヘいつものようにヘディングをして、僕の選手生命が終わりました」

 昨季はプレミアに所属していた名門ノーウィッチのユースに8歳で加入して以来、去年の7月まで全く問題がなかった。ところが今では昨年の7月に発症した発作に日常的に襲われるという。

 「記憶障害があります。僕の若さでこうした問題があるのは本当に怖い。時間が経過して良化してくれることを望んでいます。また今では車に乗れません。乗った途端にひどい吐き気と頭痛に襲われます」

 さらに発作止めの薬は「(服用すると)完全にノックアウトされてしまい、全く動けなくなる」というほど強く、副作用も心配だ。

 こうした状況に追い込まれ、引退直後は部屋のカーテンを閉め切って2週間も閉じこもり、「サッカーが全ての人生だった。これからどうすればいいのか」と、ただただ不安な思いに支配されて過ごしたという。

 そんなコッピングにピータブラが救いの手を差し伸べた。クラブのスタッフとして採用。またダレン・ファーガソン監督はウインブルドン戦の勝利を”ボビーに捧げる”と語り、プロ選手としてスタートしたばかりだった19歳でサッカーを奪われた若者をサポートした。

 また、コッピングにはイングランド代表主将のハリー・ケインから激励の言葉とともにサイン入りのユニフォームが届いたという。チェルシー所属のイングランド代表DFリース・ジェームスからも「新型コロナが終息したらロンドンで一緒に食事をしよう」とメッセージが届いた。

 こうした励ましを受け、コッピングは「今では人を助けたい」と語るまで回復した。

 「脳は人間の生涯を通じて重要だが、それに比べたらサッカーは人生のほんの一部。もちろんはっきりとしたことは言えないが、8歳からヘディングを始めなかったら、こうした症状は避けられたのではないか考えたら、(自分が被害者になったことで)助けになると思う」

 最近ではサッカーの試合中に起こる頭部の怪我やヘディングと認知症の関係が指摘されており、今季からは脳しんとうでの交代が認められるようになった。

 そしてこのボビー・コッピングの体験談が契機となり、今後の英国の少年サッカーのあり方に一つの大きな変革をもたらす可能性も出てきている。

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