今季横浜Mには大阪・興国高からGK田川知樹、DF平井駿助、MF樺山諒乃介、MF南拓都と4人のルーキーが加入。異例とも言える補強だが、その活躍に期待がかかる。2月11日~20日まで行われた2次キャンプ中取材に応じ、迫るシーズンへの抱負を語った。前編はGK田川知樹とMF南拓都の対談。(取材・構成=小口 瑞乃)
南はスピードを武器に持つサイドアタッカー。中学まではGKやDFのポジション経験もあり、守備意識も高い。石垣キャンプの沖縄SV戦で実戦デビューを果たすと得点を決めた。田川は両足ともにテクニックやキックの精度が高く、ビルドアップにも自信。攻撃サッカーを掲げるチームでのさらなる成長を誓う。
―高校入学時から3年間をともにした仲間である2人。まずはお互いの紹介を
田川(以下、田)「南は真面目で、サッカーに対する気持ちが強い。本当にすごいと思ったのは、高校まで家が遠かったのに朝早く起きて電車で通って朝練に参加してたこと」
南「実家が三重だったので、片道2時間くらい……。大変だったけど、慣れてしまえば」
田「いや、なかなか考えられない」
南「田川はホンマに、フィールドプレーヤーが11人いるって思えるくらい足元の技術がうまい。これまで出会ったことのないキーパーに出会ってしまった! みたいな感情を持ったことが第一印象だった。サッカー以外でも、メリハリがある」
―1月の新体制会見では好きなおにぎりの具を問われ、「おいなり」とユーモアあふれる回答をした田川選手
田「かなりレアな呼び方なので、変わったやつでいいなと。(チームメートからも)おいなりくんとか呼ばれたりする」
南「石垣キャンプで夜ご飯のときにいなり寿司が出てきて、みんなに『取れよ』って言われてた(笑い)」
田「取るしかないって思って。おいしく3つ取りました」
―チームにもなじんできている様子。当初と印象が変わった選手もいるのでは
南「仲川選手は最初ちょっとこわかった…(笑い)あまり話したことはなかったけど、でも自分から質問とかしたら答えてくれるし、第一印象とは違った。ギャップを感じる。ポジションも同じで勉強になることが多い」
―「プロ」として臨んだキャンプ。例年であれば1月末に合宿形式で行われる新人研修も、今年はオンラインで実施されている。チームメートとサッカーに打ち込める環境は
南「練習からプレースピードも速くて、慣れていかないといけないって身に染みて感じている。高校生でもないし、練習生でもないし、しっかりプロとしてアピールしたい。球際をもっと激しくいく必要性を感じていて、高校や今までの練習に比べて一番真摯に取り組んでいけてる」
田「昨年の2次キャンプも行ったけど、プロとしてキャンプに参加して、ここからスタメンに頑張って入るために練習していく気持ちがより強くなった。練習に対しての姿勢は一番変わった。一つのシュートに対しても、簡単に決めさせたくない気持ちで臨んでる」
―4人の先輩GK、松永成立GKコーチ、榎本哲也GKアシスタントコーチから日々受ける熱血指導での刺激は
田「4人とも特徴は違う。どのプレーもしっかり目に焼き付けるようにしてる。2人のコーチもまったく同じことを言うわけではないので、自分に合ったほうを選ぼうと考えながらできる。僕はシゲ(松永GKコーチ)さんと出会って、サッカーに対する姿勢やGKのあり方をすごく学んだ。前までもしっかりやってたつもりだったけど、シゲさんに会って全然まだまだだったんだなと」
―同じポジションを争う選手だけでなく、対じする選手にも高校時代とは違った気迫やこわさがある
南「衝撃を受けたのはチアゴ。自分の中で抜けたって思っても、絶対足が伸びてきて、体を入れられて奪われてしまうことがわかった。一番衝撃的だった。戦えるようにもっと頑張りたい」
田「たしかに、ブラジル人選手の力強さは感じる。シュート練習に入っていてすごいと思うのは(オナイウ)アドくん。どんな態勢からでもしっかりコースをついてくる」
―今後さらに厳しい競争が待ち受ける中、スタメン奪取に向けて伸ばすところ
南「特徴のスピードは良い形にもっていけたら通用すると思ってる。マリノスの速いサッカーは『止めて蹴る』をしっかりしないと試合に出られないし、練習でも通用しない。『止めて蹴る』や、他の先輩から盗んだことをどんどん試していきたい」
田「GKとして最後ゴールを決めさせないところ。特徴はビルドアップや背後の飛び出しだけど、それよりもゴールを守る部分を高めていきたい。攻撃に参加するのも大事だけどGKというポジションをしてるので、まずはゴールを決めさせないことが大前提」
―26日にシーズンが開幕。王者・川崎との戦いに向けチームの士気も高まっている。最後に意気込みを
田「開幕戦に関わるのは初めてなので、不思議な感覚。チームの勝利が何より大事だと思うので、小さなことでも勝利に貢献できたらと思ってる」
南「2次キャンプに入ってから、『もうすぐか』って感覚に急になった。一番はマリノスの勝利のためにできる限りのことを全力でやる。なおかつ試合に出て、自分の結果としてゴールやアシストを残して、勝利に貢献したい」
◆田川 知樹(たがわ・ともき)2002年9月18日、大阪・大阪市生まれ。18歳。引っ越しがきっかけで小2からサッカーを始め、大阪市ジュネッスFCを経て興国高。欠かさず持ち歩くアイテムは化粧水。憧れの選手は朴一圭(鳥栖)。180センチ、74キロ。家族は両親と兄、弟。
◆南 拓都(みなみ・たくと)2002年5月9日、三重・名張市生まれ。18歳。兄の影響で4歳からサッカーを始め、FC FAMILIA U―12、U―15を経て興国高。最近読んだ本は有栖川有栖の推理小説。50メートルは5秒9。175センチ、66キロ。家族は両親と兄。