上田まりえの降板は決して経費削減策ではなかった…心に響いた文化放送社長の「まだまだ期待」発言

3月で文化放送「なな→きゅう」パーソナリティーを降板する上田まりえ
3月で文化放送「なな→きゅう」パーソナリティーを降板する上田まりえ
昨年7月の「なな→きゅう」パーソナリティー就任1周年会見で「番組がヤバいとなったら脱ぎます、私」と語っていた上田まりえ
昨年7月の「なな→きゅう」パーソナリティー就任1周年会見で「番組がヤバいとなったら脱ぎます、私」と語っていた上田まりえ

 1か月前の生放送でのフリーアナウンサー・上田まりえ(34)の涙ながらの発言がずっと気になっていた。だから、16日にオンラインで行われた文化放送・斉藤清人社長(56)の定例会見で思わず聞いてしまった。

 「上田まりえさんの番組降板は急だったような気がするのですが」―。

 同局では3月29日から平日朝の生ワイドを大幅に改編。2019年4月にスタートした朝の帯番組「なな→きゅう」(月~金曜・午前7時)が、わずか2年で終了。寺島尚正アナウンサー(62)がパーソナリティーを務める「おはよう寺ちゃん 活動中」(月~金曜・午前5時)を現在の2時間から4時間に拡大して放送することが決まった。

 今回の改編で番組スタート時から「なな→きゅう」の月~木曜パーソナリティーとして朝の顔を務めてきた上田も降板。上田自身が1月18日の番組で涙ながらに3月26日での番組終了を報告したことが大きなニュースとなった。

 その日のエンディングで上田は「お伝えしなければならないことがあります。今年の3月をもって番組が終了することとなりました」と話し始めると、「初めて口に、声に出したことでようやく実感したなという感じなんですけど。(昨年の)11月12日の番組の終わりに偉い方から『ちょっと、来て下さい』と呼ばれまして、『番組が終わることになりました』と伝えられました。黙っていたこの2か月、本当にしんどかった。今日は絶対、泣かないと決めていたんですけど。本当に急だったんです」と、涙声で経緯を説明した。

 「本当は番組が3時間に延びるかもみたいな話もあったんです。そうしたら、突然、やっぱりやめますという話になって。本当に急だった」とポツリ。「絶対にリスナーのみなさんに自分の口からお伝えしたいと思いました。スタッフ、出演者のみなさんに対して私の力不足で申し訳ないというのと、産休中の(金曜パーソナリティー)鈴木(あきえ)さんに対して、本当にごめんなさい」と涙声で続けた。

 その上で「番組が本当に危なくなったら脱ぎます!」と宣言していたことについて触れ、「(脱ぐ準備は常に)できていたんですけど、脱ぐ間もないくらい本当に急だった」と話した。

 最後には「番組が終わる時は自分の芸能活動を終える時だと思っていました。本当にやめようと思って、就職活動もしていたのですが、いろいろな方、信頼している方に相談して、ひとまず、(芸能活動)継続することは決めました」と一時は芸能界引退も考えていたことを明かした上で「終わるものに付き合うって結構、しんどいと思うんですけど、私もスタッフのみなさんも終わることを目指して続けていません。もっと、より楽しい番組というスタンスは変わらないです」と懸命に続けていた。

 今でもそのまま再現できるほど、その時の悲痛な声の響きを覚えていた私は思わずオンライン画面の向こうの斉藤社長に聞いていた。

 「上田さんは先月の生放送で泣きながら番組の終了を報告しました。番組開始から1年あまり。早過ぎる降板にも思えますが」―

 画面上に小さくワイプ映像のように映った私の顔をじっと見た斉藤社長は長年、ディレクターとして番組制作に携わってきた経験を踏まえて、まずこう言った。

 「私も30年以上、制作に携わってきました。非常に同性にも好かれる魅力的なパーソナリティーであると制作者としても感じております」―。

 そう上田への評価を口にした上で「この4月改編で『なな→きゅう』は終わります。上田まりえさんの新番組を今回は立ち上げることができなかったんですが、文化放送としましては、上田まりえさんと言うパーソナリティーにはまだまだ期待をしている。新しい場所で、新しい番組を担っていただきたいという思いはございます」と今後、上田を起用しての新番組の検討に入ることを初めて明かした。

 続けて、「では、なぜ、『おはよう寺ちゃん』を拡大するのか。私の制作者としての持論は月~金の昼間、生活者が聞いている時間帯、朝の5時から夕方の6時までは同じ人間がリスナーに語りかけるというものです。月曜、なんとなく会社に行きたくないなという気分から金曜の休日前のうきうきした感覚まで、リスナーと共有するのが大事と確信しております」と話した斉藤社長。

 「繰り返しますが、『なな→きゅう』や上田まりえさんが良くないと言うことではありませんし、上田さんには新しい場面で、あの魅力的なパーソナリティーを発揮していただきたいと思っております」と丁寧に答えてくれただけに、もう一つ質問を重ねた。

 新型コロナ禍で同局も広告収入は激減。出演料がかさむフリーアナやタレントでなく、局アナで経費削減という考えもチラリとよぎったのではないか。そう感じたから、そのまま聞いた。

 「帯で同じ人間がというお話があったが、上田さんも月~木曜まで番組をやられていたわけで、ギャランティーの問題で経費削減をしなければいけないという側面はなかったのか」―。

 今回もこちらをじっと見た斉藤社長は「結論から言いますと、番組の制作費で経費を削減しようという考えは、私にはありません」ときっぱりと答えた。

 「もちろん今、厳しい状況であるのは確かです。それは私が現場のディレクター時代、昭和の頃の制作費…。私の先輩は『飲めや食えや制作費』なんてことを言っていましたが、それこそなんでも使えていた時代とは違います」と率直に話した上で「『なな→きゅう』を終わらせて、出演者のギャランティーを抑えてというような姿勢で番組を作っても、それはあくまで文化放送の都合であって、ラジオを聞いている方には関係ない。厳しい状況ではあるけれども、私は制作費を削減することを第一の目的として今回の改編をしたことはありませんし、今後もそこを絞っての改編をするつもりはありません」と真っ正面から答えてくれた。

 その言葉を聞いた時、私が思ったのは、「これで『なな→きゅう』に賭けてきた上田の思いも報われるな」ということだった。そう、それほど、上田は「なな→きゅう」に前のめりに取り組んできた。

 昨年7月21日、この時は記者を招いて同局内で行われた上口宏社長(当時、現会長)の定例会見。ゲストとして登場したのが、「なな→きゅう」の放送1周年を迎えた上田だった。

 「うそ偽りなくすべてが『なな→きゅう』のため。1年でも長く番組を続けたい、頑張ろうと、改めて気合が入りました」と話すと、「一人ひとりのリスナーさんの気持ちに寄り添えるようにと、この1年、いつも考えていました」と続けた。

 19年、同番組のパーソナリティーに就任した時、上田は人生最大の激動期を迎えていた。

 自律神経障害によるTOKYO MX「5時に夢中!」のアシスタント降板。松竹芸能を退社しての自身の会社「ドゥ・ストレート」(「ど直球」の意味)設立。さらに17年に結婚した竹内大助氏が同年2月に慶大野球部の助監督に就任。社会人野球・トヨタ自動車で活躍していた竹内氏が愛知県から上京したことで結婚3年目にしての同居生活がスタートと、公私ともに日常生活が激変する中でのラジオパーソナリティー生活のスタートだった。

 1周年会見での写真撮影の際には大きくスリットの開いたロングワンピースからのぞく美脚まで披露。「グラビアの仕事はお断りしていたんですけど、プロデューサーには『なな→きゅう』がヤバい、ピンチとなったら、私、脱ぎますと言っています」と堂々と宣言していた。その番組への愛情の強さに私は「ああ、この人は『なな→きゅう』という番組と、その共演者やスタッフに救われたんだな」と思ったものだった。

 そう、一生懸命、感情だってむき出しに一つの番組に取り組む人が報われる温かいラジオ番組であり、文化放送であって欲しい―。上田の涙声での放送を聞いた時、私はそんなことを思った。だからこそ、斉藤社長の「今後も上田さんと仕事」という温かい言葉が本当にうれしかった。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆上田まりえ(うえだ・まりえ) 1986年9月29日、鳥取県境港市生まれ。34歳。専修大文学部卒業後、09年に日本テレビにアナウンサーとして入社。14年には「とっとりふるさと大使」に就任。16年2月、同局を退社し、フリーアナウンサーとして松竹芸能入り。TOKYO MX「5時に夢中!」の月~木曜アシスタントとして人気者に。19年3月、松竹芸能を退社し、自身の会社「ドゥ・ストレート」設立。アスリートのマネジメント業務なども手掛ける。同年3月には早大大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。夫は現在、慶大野球部助監督の竹内大助氏。血液型A。

3月で文化放送「なな→きゅう」パーソナリティーを降板する上田まりえ
昨年7月の「なな→きゅう」パーソナリティー就任1周年会見で「番組がヤバいとなったら脱ぎます、私」と語っていた上田まりえ
すべての写真を見る 2枚

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請