コロナ禍の観客を満足させた飯伏幸太とSANADAの至高の戦い…乱入、反則横行で迷走の新日の未来がそこに

11日の広島大会で2冠防衛を果たし、花道で笑顔を見せた飯伏幸太(新日本プロレス提供)
11日の広島大会で2冠防衛を果たし、花道で笑顔を見せた飯伏幸太(新日本プロレス提供)
SANADAに必殺のカミゴェを叩き込んだ飯伏幸太(新日本プロレス提供)
SANADAに必殺のカミゴェを叩き込んだ飯伏幸太(新日本プロレス提供)

 試合をぶち壊す凶器を手にしてのセコンド役の乱入劇に背後からの急所攻撃。さらには神聖なはずのレフェリーのジャッジミス―。日本最大のプロレス団体・新日本プロレスの試合内容に今、ファンからの批判が集まっている。

 新たな火だねとなったのが、11日、広島・広島サンプラザホールに2007人の観客を集めて行われた「THE NEW BEGINNING in HIROSHIMA」大会でのオカダ・カズチカ(33)とEVIL(33)の“泥仕合”だった。

 試合はオカダが矢野通(42)、EVILがディック東郷(51)と組んでのタッグマッチとしてスタートも序盤から場外乱闘に。EVILがオカダを鉄柵にたたきつけ、パイプいすで攻撃したところで場外カウント20が数えられ、わずか1分27秒、両者リングアウトで試合は終了。しかし、その場で激しくののしり合ったオカダとEVIL両者の承諾のもと、突然のカード変更。そのまま、スペシャルシングルマッチの実施が決定し、矢野と東郷は退場。完全に1対1で両雄が対峙した。

 しかし、オカダの必殺・マネークリップが決まり、観客の完全決着への期待が高まったところで東郷がスポイラーズチョーカーを持って乱入。オカダの首を後ろから絞め上げたところでレフェリーが試合を止め、わすか5分41秒、EVILの反則負けとなった。

 その瞬間、場内に渦巻いたのは、コロナ禍のため、声援が禁じられた観客からの床を踏み鳴らしての猛抗議。この試合を速報した「スポーツ報知」のネット記事にも「乱入、乱闘の連発や不透明決着はいい加減にして!」、「金的に凶器攻撃。昭和のプロレスか?」、「新日はこういう試合内容に抗議し続けるファンの声を聞かないのか?」―。コメント欄は、ほぼプロレスファンからの怨嗟(えんさ)の声であふれた。

 長引くコロナ禍の中、観客数を制限。各会場で消毒を徹底し、これまで一人の感染者も出していない業界最大手の新日だが、このところの試合内容は確かにおかしい。昨年8月の神宮球場大会で内藤哲也(38)に敗れるまでIWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠王だったEVILの試合には毎回、東郷が凶器を持って介入。EVIL自身もレフェリーの目を盗んでの金的攻撃を繰り返した。

 ファンのストレスもたまる中、荒れる新日を象徴する前代未聞の“事件”も起こった。

 今月3日の東京・後楽園ホール大会で解説者として実況席にいたにも関わらず、乱闘に参加。ジェイ・ホワイト(28)に暴行を加えた後藤洋央紀(41)に団体から厳重注意処分が下されたのだ。

 後藤は実況解説を担当していた同日の第2試合、オカダ、矢野、石井智宏(45)組とジェイ、EVIL、高橋裕二郎(40)組の6人タッグ戦の試合終了後、自らの意思で解説席を離れて乱闘に参加。遺恨を深めていたジェイに攻撃を加えた。

 ジェイの「コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインとして、(レスラー同士以外及び観客席での)場外乱闘は禁止されているのに、今回、後藤は実況解説席からフェンスを乗り越えて攻撃してきた。ガイドラインはどうなったんだ?」という厳重抗議を受けた新日は後藤の行動を行き過ぎた行為と認定、厳重注意処分を下した。

 昨年1月5日、東京ドーム大会での内藤の2冠獲得後のセレモニーを台無しにしたKENTA(38)、最近ではNEVER無差別級王座を奪取し、決めゼリフの「愛してま~す!」と絶叫しようとした棚橋弘至(44)を背後から襲撃したグレート―O―カーン(29)など、乱入、凶器攻撃はプロレスに付きものとも言えるが、コロナ禍の中、観客にまで危険が及ぶ後藤のリング外からの乱入に団体側からの鉄槌(てっつい)が下った形となった。

 正直に言おう。新日を取材し続けている私も、こんなご時世だからこそ、すっきりして家路につきたいファンのカタルシスの瞬間を奪う乱入劇にはうんざりしている。試合と関係ないセコンド役やマネジャー役の介入には、もはや見飽きた感も強い。決して安くはないチケットを購入し、固唾を飲んで試合を見守る観客を失望させるのだけはやめて欲しいとさえ思う。

 ただし、さすがは日本一の人気と観客動員を誇る新日だけに光明もたっぷりある。中でも今後、歩むべき道筋が見えたのが、11日のメインイベントで行われた王者・飯伏幸太(38)とSANADA(33)のIWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠戦だった。

 ともに究極まで鍛え上げたボディーと並外れた身体能力を誇る2人はクリーンでハイレベルな戦いを27分51秒間に渡って展開。最後はSANADAのオコーナーブリッジをかわした飯伏が延髄へのハイキック、顔面へのひざ蹴りからの必殺技・カミゴェで3カウントを奪ったが、その瞬間、声を出しての応援を禁じられた2007人の観客からあふれ出たのは、心からの大拍手だった。

 そして、両肩に2つのベルトをかけた飯伏はリング上で叫んだ。「いつも言うとおり、僕は逃げない、あきらめない、裏切らないから、絶対に。こうやって、どんどん、チャンピオンとして、僕は成長していきます。この二つのベルトの象徴になりたい。そして、この二つのベルトを一つにしたい。それが僕の願望です。誰でもいい。挑戦、待ってます」―。

 そう、こんな戦いこそがプロレスというスポーツであり、エンターテインメントでもある唯一無二の存在が持つカタルシスであり、魅力。日々、用意されるマッチメイクの中にただ一つでもこんな宝石のような試合があればいい。飯伏やSANADAのような介入や凶器攻撃など頭の片隅にもなく、ただ命がけでクリーンに戦い続ける文字通りかっこいいレスラーさえいれば、新日は、プロレスは大丈夫だ。

 広島の夜、声援を我慢して、懸命に手を振る観客に手を振りながら花道を退場していく「ゴールデン☆スター」飯伏の輝くばかりの笑顔を見た瞬間、私は、すべての答えはここにあると確信した。(記者コラム・中村 健吾)

11日の広島大会で2冠防衛を果たし、花道で笑顔を見せた飯伏幸太(新日本プロレス提供)
SANADAに必殺のカミゴェを叩き込んだ飯伏幸太(新日本プロレス提供)
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