NHK大河「麒麟がくる」架空キャラ批判を一蹴した「本能寺の変」の新解釈

「麒麟がくる」で明智光秀を演じた長谷川博己
「麒麟がくる」で明智光秀を演じた長谷川博己

 俳優の長谷川博己主演のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」が7日の放送で大団円を迎えた。「謀反人の象徴」とされてきた明智光秀を「一貫して平和な世を希求した誠実な智将」として映し出し、そのイメージを一新した。

 光秀自身だけではなく、「本能寺の変」の“真相”についても、過去の戦国ドラマとは一線を画した切り口で描かれた。原因については、これまで「怨恨説」「朝廷黒幕説」「四国の長宗我部問題説」「野心説」など諸説唱えられてきたが、本作では織田信長による「天皇の譲位」「家臣への対応」などを遠因としながら「将軍殺害指令」を決め手とした。

 物語を振り返れば、将軍・足利義輝は“麒麟がくる”平和な世を求め、光秀に大きな影響を与えた。信長とのストーリーと平行するように将軍・義輝、義昭との関わりを丁寧に描いたことで、最終回に説得力をもたせた。さらに後の天下人となる豊臣秀吉が細川藤孝からの手紙によって事前に光秀の謀反の可能性を知っていたとする説を採用したことで、戦国ミステリーの色合いを一層深めたように見えた。

 また、光秀は有能な武将である傍ら、心優しき家庭人としても描かれた。序盤から母・牧や正室・熈子、娘たちと穏やかに暮らす姿も印象的だった。光秀は幼い頃に父を亡くし、女手ひとつで育てられたという設定で、牧役には大物演歌歌手・石川さゆりを起用。牧については、非業の死を遂げたとの伝説が残っている。光秀が「丹波攻め」で苦戦した際、丹波の八上城の城主・波多野秀治の生け捕りと引き換えに牧が人質に。だが信長は秀治の命の保証を反故にして処刑。これに対して、秀治の家臣らが激怒し牧を松の木にはりつけにして処刑したというものだ。

 1996年放送の大河ドラマ「秀吉」では故・野際陽子さん演じる光秀の母がはりつけられ惨殺されたシーンが話題となったが、本作に同様の場面はなくナレーションも入らなかった。牧は中盤で故郷・美濃に戻ってから登場することはなかった。これも本能寺の変が定番の「怨恨説」によるものでないことを強調する形となった。

 一方、若かりし頃の光秀の歴史的資料が乏しいこともあってか、本作ではオリジナルキャラクターの活躍ぶりも際立った。中でも京の市井に生きる門脇麦扮する戦災孤児の駒、堺正章扮する名医の望月東庵、尾野真千子扮する旅芸人一座の女座長の伊呂波太夫らが印象深い。東庵は正親町天皇と将棋で対局できるほどの間柄で、伊呂波太夫は摂家である近衛家とのパイプを生かし光秀を後押し、駒は最終的に町中で出会った義昭と近しい関係にまでになった。

 だがこうした演出に対してネット上では批判の声も上がった。当初、ヒロインとみられた光秀の従妹で信長の正室・帰蝶や熈子より多く登場し事実上のヒロインとなった駒をはじめ、戦国時代最大のクーデターとされる事変に影響を及ぼすまでの存在となった“スーパー町人”に対するものが多かった。

 本作ではコロナ感染拡大防止対策の一環もあってか、戦国時代劇としてはエキストラを多く要する合戦シーンが少なかった。大河ファンが期待した長篠の戦いや丹波攻略などが“スルー”される形となったことも重なり、架空キャラに対する風当たりは厳しくなった。心ないコメントも見受けられた。

 そうした中で迎えた最終回。智将が憑依したような長谷川と、狂気と純粋さを持ち合わせた信長を演じた染谷将太の迫真の“競演”が多くの視聴者の心をとらえた。平均世帯視聴率は18・4%を記録。昨年1月19日の初回19・1%に次ぐ数字にまで回復した。

 同ドラマ公式ツイッター上では「長谷川博己光秀、最高でした」「最初から最後まで見た初めての大河でした」「私の中の明智光秀像を完全に覆してくれました」などといった称賛の声が相次ぎ、“架空キャラ不要論”は沈静化した。

 初回放送は当初帰蝶役だった沢尻エリカが薬物事件で降板したため2週間延期。加えてコロナ禍において約2か月の中断を余儀なくされるなど難題を乗り越え、有終の美を飾った。

 ラストシーンでは光秀が山崎の戦いで秀吉に敗れた後、生き延びたかのような斬新な演出が施された。僧侶「南光坊天海」として徳川の幕政に関わったとの説を想起させるサプライズ。ファンタジーという見方もあるだろうが、非日常を強いられる現代において、人々に希望を抱かせる結末となった。

(記者コラム 江畑 康二郎)

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